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caze(学芸大学)の名物ラザニアは濃厚でとろとろ、ふるふる。人気イタリア料理店には爽やかな風が吹き込む。

cazeのスペシャリテ・ラザニア

三軒茶屋から学芸大学へ移転してきた人気店

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学芸大学駅から徒歩5分。駒沢通り沿いにcaze(カゼ)というイタリアンがあります。

2009年、三軒茶屋でcaZe uzumakiとしてオープンし、2022年6月、建物の取り壊しに伴い一度閉店。2022年7月16日、店名をcazeと改め、学芸大学で再オープンしました。オーナーは細貝真吾さん。四谷のリストランテ スペッキオ (2019年に閉店)などで修行を積んだ方だそう。

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ここはシャッターが下りっぱなしで、少なくとも13年間は何もなかった物件です(何だったんだろう)。それが突然、テナント物件となり、飲食店になりました。

「よくこんな物件を抑えられましたね」

「もともとは住居か何かだったようなんですが、たまたま……。何軒も申し込みがあって、争奪戦だったみたいです(笑)」

と女性スタッフ談。

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シンプルで爽やかな店内にはカウンター5席、テーブル12席。女性スタッフの接客、話し方もなんだかとてもいい感じ。落ち着きます。

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今回はランチで来ました。メニューは週替わりパスタセットと名物ラザニアセット。ラザニアはcazeのスペシャリテです。ちょいと奮発してラザニアセット(1780円)をお願いしました(単品は1330円)。

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ちなみに、こちらは夜のメニュー。内容は日によって変わるそうなので、ご参考までに。

シンプルながらもいい塩梅な前菜・サラダ

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前菜5種。ナスのマリネ、ナスのカポナータ、自家製ロースハム(?)、とうもろこし、さばのマリネ。どれもいい塩梅。とんでもなく甘いとうもろこし、ギュッと旨味の詰まったさばが特に印象的でした。

余談ですが、私が一番好きな野菜はナス、一番好きな魚はさば。

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サラダとフォカッチャ。サラダはシャクっとした歯ごたえが気持ちいい。素材がいいので、シンプルなドレッシングで十分でした。

ただ、サラダにもナスととうもろこしが使われています。ナスはここまで3種。季節のものを存分に味わってほしくてあえてそうしているのか、ナスのいろいろな表情を見せたいという意図なのか、あるいはランチだから食材を効率的に使いたいのか。いずれにせよ、私は変化があってもよかったかなぁと思いました。たとえば、サラダはナスではなくブロッコリーにするとか……。

もちろんおいしかったですよ。そして、これがダメだと言うつもりもありません。

こんなの初めて!手のかかった濃厚なラザニア

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名物ラザニア。はがきをひと回り大きくしたくらいの器です。グツグツ、ジュワッ。見るからに熱そうなのですが、こういうのをかき込むのが好き。

フォークをひと挿し。

「!?」

な、なんだこれは。

caze名物のラザニア

ラザニアに挿し込むフォークには、ほとんど抵抗を感じません。とろっとろでふるっふる。ラザニア(板状のパスタ)は細かく切られていて、とても薄く柔らかい。柔らかいどころか、周囲のチーズと区別がつかないほど。こんなラザニアは初めて。

ふくよかで甘い肉、まったりとしたソース、コクのあるチーズ。トマトのほのかな酸味、ローストされたチーズの香ばしさがいいアクセント。手がかかってるなぁ。

なるほど確かに名物と称されているのもよくわかります。濃厚でとてもおいしいです。

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器はフォカッチャで拭き取り、ソースを1滴たりとも残しません。

ちょっと小さいなと思ったのですが、食べ終えるとおじさんにとってはちょうどいいお腹具合となりました。食べ盛りの若い子にはちょっと物足りないかも?

秘密スペースに吹き込む穏やかな風

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コーヒーをひと口飲んだところで、店舗脇の喫煙スペースへ。他のお客さんが吸いに行っていたのを見ていたので、喫煙スペースがあることはわかっていました。

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ソファーに座ってタバコに火をつけます。

いやぁ、気持ちいい。この日は最高気温が37℃でした。なのにここはまったく暑くありません。むしろ涼しいくらい。すぐ前の道は暑かったのに、門扉を隔てたこちら側は風が抜けていって爽やか。

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席に戻りました。

「そこ、気持ちいいですね」

「料理を持って出ようとする人もいます(笑) 三軒茶屋よりも学芸大学のほうが吸う方が少ないんですけどね」

「へぇ。そんな違いがあるんですか」

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そもそもが大きな街・三軒茶屋。次々と新しい飲食店ができ、街は常に大きく変容し続けています。そんな三軒茶屋で飲食店を開業するには強いパワーが必要だったことでしょう。それこそまさに渦巻く風のように。

それから13年。

「ダラダラやっていこうかと(笑)」

馴染みのお客さんに軽口をたたく店主。

そうね、確かに。

老舗と言われてもおかしくないほどにまでなった人気店は移転先を学芸大学に決めました(※1)。人が増えているとはいえ、三軒茶屋とは比べものにならないくらい小さな街です。きっと、ここで必要となるのは創業時に必要だった若さやパワーではないのでしょう。店名からuzumakiを外しました。

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「いっちょやってやるか!」と鼻息荒く肩を回すような渦巻く風は必要ない。肩の力を抜き、老舗の余裕をもって客を迎え入れる――喫煙スペースに吹き込む穏やかで爽やかな風は、そんなcazeのスタンスを表しているかのようでした。

ステラ vs caze ラザニア食べ比べ

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家賃が上がったせいか、客数(席数)が減ったせいか、あるいは昨今の物価高のためか、三軒茶屋時代に比べてランチのラザニアセットの値段がグッと高くなりました(1480円→1780円)。個人的には1500円以内に収めてほしいところではありますが、店には店の事情があるのでしょうし、仕方ないですかね。

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ラザニアと言えば、学芸大学の3大ランチ(※2)の一角、"学大で食べるべき20の料理"にも選ばれているステラを思い出します。前菜盛り合わせ+ラザニア+ドリンクのセットが1100円というえげつないランチセットです。

ステラのラザニアは弾力があって、きのこが香ります。同じラザニアでもこんなに違うものなんですね。両者を食べ比べてみても面白いと思いますよ。

cazeへの行き方

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学芸大学駅からcazeへの2ルートをご紹介します。

学芸大学在住の方、最短でたどり着きたい方は青ルートでどうぞ。サウナ ミナミの左脇の筋を進んでください。駒沢通りに出たら、すぐ右手にcazeがあります。

cazeへ行くため学芸大学に初めて来たという方には、少し遠回りになりますが、ピンクルートをお勧めします。というのも、途中には自家醸造しているクラフトビール店・FIVE TREES、おしゃれおでん飲み屋・ブルペン(旧ホームラン/中目黒)、若者に大人気のカフェ・Bublles Chillがあるからです。また、学大横丁には飲食店が軒を連ねています。

寄る/寄らないは別として、学芸大学の今の"風"を感じることができるはずです。前を通るだけでも楽しいですよ。

※1 三軒茶屋の大人気店・いざかや ほしぐみがオープンしたのも2009年。学芸大学で2009年にオープンした主な飲食店はロマンレコーズカフェチャランポランびぎ屋もり山さいとう屋。と並べてみると、どれほどの老舗かがわかりやすいかと。

※2 大黒屋讃岐饂飩 恩家ステラ(STELLA)が学大3大ランチ。筆者が勝手に認定。

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