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大黒屋(学芸大学)の麦とろ定食は贅沢!味も歴史もすべてが混然一体となっているこの一膳は老舗だからこそ作り出せるのです。

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学芸大学駅から徒歩6分。目黒通り沿いに大黒屋という定食屋/和食屋があります。

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イオンスタイル碑文谷の対面です。学大に住んでいれば誰しもが一度は耳にしたことがある有名・人気店。

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1956年、米屋・大黒商店として創業。1978年、店舗の一部が家庭料理の店となり、2000年には食事スペースが拡大。2012年にリニューアルして現在の営業形態となりました。

昼の部と夜の部があるのですが、私がうかがったのは昼の部。オープン直後でした。

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もともとは米屋。お米も販売しています。

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店内はカウンター席、テーブル席のほか、入口右手奥には個室もあるようです。ゆったり。

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メインは名物・麦とろ定食。麦とろではない普通の定食、単品料理もあります。

表にもメニューが貼り出されていたので、それを見て麦とろ紅鮭定食にしようとは思っていました。けど、店内のメニューには「具沢山のとん汁 ぷらす100円」とあるじゃないですか。これは悩みます。デフォの味噌汁も食べてみたいし、とん汁も惹かれるし……。

「麦とろ紅鮭定食をお願いします。とん汁にして下さい」

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私が入店した直後から続々とお客さんがやって来ました。ご年配、ママ友の団体、サラリーマン、カップルであっという間に満席。

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お。フリーWi-Fiだ。

「大変お待たせしました。ご飯は一杯おかわりできますので、おっしゃって下さい」

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いい景色。

毎晩、家族3、4人で食卓を囲むような家庭ならできるかもしれないけど、一人、二人暮らしで外食もそれなりにするような家ではなかなか作れないよなぁ。クオリティのことはさて置き、手間・コスト的にね。

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まずは鮭をひと口。あ。単なる塩鮭じゃない。改めてメニューを見返します。粕漬焼きと書かれていました。

鮭に甘味が加わり、とてもふくよか。ふっくらと盛られた大根おろしともいい調和。

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とん汁は豚の甘味、根菜の滋味がいいダシになっています。

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ほうれん草にはほのかな柑橘の香り。香の物も爽やか。

さりげなくも実に丁寧。シンプルに見えますが、手が込んでいることは食べればすぐにわかります。いい料理だなぁ。

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麦と白米を1:1で混ぜ合わせ炊き上げているというご飯は、どちらかというとしっかり目。とろろをかけることを想定した炊き具合にしているのかもしれません。私はこれくらが好き。そのままでもとてもおいしいご飯です。さすがは米屋。

鮭・ご飯、とん汁・ご飯、ほうれん草・ご飯、香の物・ご飯。時にほうれん草から鮭へ行き、そしてご飯。日本独特とも言われる、口の中で食べ物を混ぜ合わせる口内調味は、1+1を3にも4にもします。

ご飯一杯で食べ切ろうと思えば食べ切れました。けど、あえておかずのペースを緩めて、麦飯をおかわり。おかわり分にとろろをかけようと思ったから。

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のりを乗せる手が刹那に躊躇。それほどきれいなとろろご飯。優しくも奥深いダシが大和芋のとろろを伸ばしています。

ズルッととろろご飯をかき込み、香の物へ箸を延ばす。鮭を口へ入れると、とろろご飯がこれを追いかける――いつまでも続いてほしい幸せな素材の混合レース。

はぁ。なんておいしいんだろう。お腹もいっぱい。おかわりがなかったとしても十分な量でした。すごい定食だ。

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ふと見上げると、天井には梁、壁には振り子時計。おそらく昔の大黒屋で使われていたものでしょう。オシャレな店内に散りばめられた昭和の記憶。今と昔が混然一体となっています。

これは単にインテリアの話じゃないんだろうな。昭和・平成・令和と受け継がれてきた技・経験・想いを大事にしたいという気持ちの表れ。

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私たちは麦と白米が混ざった麦飯をとろろと混ぜ、とろろご飯と鮭を口内で混ぜ合わせる。店は先達の想いを自身に、料理に混ぜ込ませる。

この一膳にはいろいろなものが混ぜ込まれているんだなぁ。味も歴史も。だからおいしいんだ。

老舗にしかできない威風堂々たる麦とろ定食。60年という時が生み出す味わい。これこそが本当の贅沢。

※下部に大黒様についても書いています。もしよければ。

SHOP DATA

大黒様も混ぜこぜ

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画像転載元/大黒屋公式サイト

大黒屋の大黒はいわゆる大黒様に由来するのでしょう。公式サイトでも大黒様のイラストが使われています。

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大黒様の大元はヒンドゥー教のシヴァ神です。別名、マハーカーラ。マハーは大(or偉大な)、カーラは時or黒。だから大黒天。このマハーカーラはインド密教やチベット仏教に取り入れられ、中国から日本へと伝わりました。

この間、マハーカーラはさまざまに変容します。あれとこれが混ざったり、あるいはあれが抽出されて、これになったり。そして中国では財福の神とされ、これがそのまま日本にやって来ました。

さて。

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日本書紀や古事記には大国主神(おおくにぬしのかみ)が登場します。出雲大社でお馴染みですね。大国は「だいこく」とも読めます。ですから、大黒天の大黒と大国主の大国が混同されます。そして、いつの間にか両者が混ぜこぜになり(=習合)、豊穣の神、七福神の一柱、大黒様となりました。かなーり端折りましたがw

大黒様は袋を担いでますよね。これは大国主が持っていた、八十神(大国主の兄弟たち)の荷物を入れた袋がモチーフとなっています。因幡の白兎のあれです。

いろいろなものが混ぜ合わさって作り出された大黒様。その名を屋号として、いろいろなものを混ぜ合わせる大黒屋。

なんか面白くありません?w

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