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そうめんとひやむぎの違いは?手延べそうめんと機械麺の差は?そうめんの定義は?法律、規格、ガイドラインから素麺の基礎知識をわかりやすく図解してみた

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夏になるとそうめんを食べる機会が増えますよね。けど、時折、まずいそうめんに出くわしませんか? ぬめりがあったり、ドロドロだったり、コシが一切なくグズグズだったり……。安いのですが、まずいそうめんを買ってしまった時のショックと言ったら!

せっかくですから、おいしいそうめんを食べたいですよね。というわけで、100種以上のそうめんを食べてレビューしてきた筆者が、おいしいそうめんと出会うための基礎知識を2回に分けてご紹介していきたいと思います。

今回はまず、そうめん自体についてです。そうめんとかひやむぎとか手延べとか、いろいろありますが、法律、規格、ガイドラインを見ながら、わかりやすく解説してみます。

目次

そうめんの定義

そうめんに関わる法律・規格・ガイドライン

商品としてのそうめんには次のような法律・規格・ガイドラインがかかわってきます。

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色がついた部分の法律、規格、制度は強制

法律、食品表示基準は絶対に守らなければいけません(違反による罰則規定あり)。

JAS規格は任意です。JASに適合した商品を作りJASマークをつけなければいけない、というわけではありません。ガイドラインは全国乾麺協同組合連合会が自主的に策定しているもので、加盟者は守りますが、非加盟者に守る義務はありません。

JASは形骸化していますし、そもそもこんなものを取ろうなんて事業者はほとんどいません。実際上は食品表示基準、これだけです。ネット上を見てますと、「JASだとこう」「乾めん類品質表示基準だとこう」といった文言が見られますが、これらはもう古い情報です。信用しないでください。

※Japanese Agricultural Standard=JASなので「JAS規格」は重言ですが、一般的に広く通用しているのであえて「JAS規格」と記載しています

干しめんの中のそうめんの位置

では、具体的にそうめんはどのような立ち位置にいるのでしょうか。食品表示基準をもとに図解してみます。

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一番大きな枠は「めん類」。その中でいくつかのジャンルに分かれるのですが、以下、乾めん類のそうめんに焦点をあてます。

※少ないですが、生めん類のそうめんもあります。生めんのそうめんは生めん類の表示に関する公正競争規約(ざっくり言うと景品表示法の一部)で規定されているわけですが、生めんにおいてはうどん、ひらめん、ひやむぎ、そうめんに区別はありません。メーカーが適宜判断して呼び分けています

構造を簡単に説明しますと、手延べであろうがなかろうが、すべて干しめんです。その中で手延べのものは手延べ干しめんと定義されています。

なお、干しめんは「干しめん」「そうめん」と記載しなければいけません。手延べ干しめんは「手延べ干しめん」「手延べそうめん」と記載しなければいけません。逆に、手延べそうめんなのに「そうめん」と記載してはいけません。

さて、手延べではない干しめんの場合、基本的には太さの差です。そうめんとひやむぎどころか、うどんもきしめんも、手延べでなければすべて太さの違いしかありません。

手延べ干しめんの場合も基本的には太さの差ですが、そうめんとひやむぎは規格上同じです。1.7mm未満がそうめん/ひやむぎ。

ちなみに、なぜ手延べとそうでない場合で太さの基準が違うかというと、手延べではない干しめん≒機械麺(以下、機械麺)は均等に細かく切れるから、そうめんとひやむぎを太さで明確に分けられます。一方、手延べは繊細な作業で、すべてが均一な太さになるというわけでもありません。ですから、ひやむぎ/そうめんにおいては基準が緩やかになっています。

というわけで、ここまでをまとめてみます。

手延べではない場合、うどん、ひやむぎ、そうめん、きしめんの差は太さで、直径1.3mm未満がそうめん。手延べの場合、うどん、ひやむぎ/そうめん、きしめんの差は太さの差だけど、ひやむぎとそうめんには規格上の差はない(1.7mm未満)。

「手延べ」の定義

よりをかけて引き延ばすのが手延べ

次に「手延べ」についてです。ここも誤解されがち。「手延べ」の定義は食品表示基準にあります(ガイドラインもこれをそのまま採用。JAS規格は少し異なる)。

手延べ干しめん

干しめんのうち、食用植物油、でん粉又は小麦粉を塗付してよりをかけながら順次引き延ばしてめんとし、乾燥したものであって、製めんの工程において熟成が行われたものであり、かつ、小引き工程又は門干し工程においてめん線を引き延ばす行為を手作業により行ったものをいう。

出典:食品表示基準 別表第三(第二条関係)

小引き工程は「かけば工程(よりをかけ、交ささせつつめん線を平行稈にかけることをいう。)を経ためん線を引き延ばすこと」。門干し工程は「乾燥用ハタを使用してめん線を引き延ばしてめんとし、乾燥すること」。

わかりやすく、超ざっくりとした図にしてみます。

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  • 手延べそうめん:よりをかけながら細く延ばしていく
  • 機械麺:薄く延ばした生地を細く裁断する
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画像転載元/兵庫県手延素麵協同組合:揖保乃糸の特色

よりをかけながら順次引き延ばすというところがポイントで、これこそが手延べそうめんと機械麺の一番大きな差です。そして、細く延ばしていく手延べそうめん、細く裁断する機械麺、この製法の差がそうめん/手延べそうめんの質を分けます。もっと言えば、おいしさが格段に違ってきます。

機械麺はそうめん独特のコシ・歯切れがなかったり、場合によってはうどんぽかったりするのはこのためなんですね(これ以外にも要因はあるけど)。逆に、手延べそうめんのあの小気味いいコシ・歯切れは、よりをかけ、引き延ばしていくから生まれます。

手延べ=すべて手作業という意味じゃない!

三輪素麺の製造工程動画です。手延べそうめんがどう作られているのかがとてもよくわかります。

コメント欄に「手延べじゃないじゃん!機械使ってるじゃん!」というコメントがいっぱい寄せられてますが、この人たちは誤解しています。なぜなら、上述のように「手延べ」はよりをかけながら延ばすことで、小引き工程【又は】門干し工程において、手作業でめん線を引き延ばしていればいいからです。

なお、小引き以前の工程を含む全行程を手作業で作っているそうめんもあります。南関そうめんなどがそうですね。こういう素麺は生産量が極めて少なく、高級品です。

手延べじゃない素麺はすべて機械麺?

ちょっとややこしくなります。

では、「手延べそうめん」と表記されていないそうめんは、すべて裁断された機械麺でしょうか。実はそうとも限らない。というのも、手延べそうめんには製造工程だけではなく、原材料にも規定があるからです。

規格上、手延べそうめんと謳うには以下が必須です。

  • 小麦粉
  • 食塩
  • 食用植物油、でん粉又は小麦粉(打ち粉として)

詳細は省きますが、現実的に手延べでそうめんを作ろうとすると、これらが必要です。ただ、ごくごくまれにこういう場合もあります。

「この地方では食用植物油や打ち粉がなくとも、細いそうめんを作れる伝統技法がある」

こういう場合、製造工程が手延べに該当しても、食塩や食用植物油を使ってなければ、手延べそうめんと呼べません。

こだわりが強すぎる、伝統製法が独特、だから手延べと謳えない。というケースもなきにしもあらずというわけです。

まあでも、仮にそういうものがあったとしても、普通はまず目にしません。そこまでのものは少量生産で高額でしょうし。ですから、基本的には手延べではないそうめん=機械麺と考えて問題ないでしょう。

「手打ち」って何だ?

蛇足ですが、「手延べ」に似た「手打ち」という言葉をうどんやそばでよく見かけますよね。「手打ち」の定義はなんでしょう。

実は乾めん類の規格においては「手打ち」に関する規定はありません。ただ、全国乾麺協同組合連合会表示等のガイドラインではこう規定されています。

第5条 乾めん類及び手延べそうめん類に、次に掲げる文言を使用する場合は、当該各号に掲げる意味により使用するものとする。

(1)手のつく用語を表示できる基準は次のとおりとする。

1)「手打」「手打ち」とは、製めん全工程を手作業で行うもの及び、混練・熟成・延棒での圧延及び包丁でめん線状に裁断した後、乾燥したものであって、混練及び乾燥以外の工程を手作業で行ったものをいう。

2)「手打式」「手打ち式」「手打風」「手打ち風」等とは、製めんに際し、混練・熟成・めん帯の方向が交錯するような方法での圧延及び包丁又は手切りに近いうす刃の切刃でめん線状に裁断した後、乾燥したものであって、その工程の全部又は一部を機械作業により行うことをいう。

3)「手延べ」と表示できるものは、乾めん類品質表示基準第2条の手延べ干しめんに該当するものとする。

4)「手延べ式」「手延べ風」等手延べの文言は、乾めん類品質表示基準第5条(表示禁止事項)により使用できないものとする。絵・文言は、加工食品品質表示基準で禁止。

「手打ち」「手打ち風」はあくまでもガイドラインというわけです。もちろん、だからといってこれをないがしろにしていいわけでもありません。下手なことをすれば景品表示法違反になります。

※生めん類に関しては生めん類の表示に関する公正競争規約で「手打ち」「手打ち風」が規定されていて、上記ガイドラインはこれを援用してしる感じ

※乾めん類品質表示基準は廃止されました。現在は食品表示基準が同じ役割を担っています

ところで、面白いものを見つけました。

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手打風 そうめん!!!

「手打ち風そうめん」という言い方は初めて目にしました。これは面白い。何が面白いかって、規格・ガイドラインの間隙を突いた言い方だから。

詳細は後日、この「手打風 そうめん」のレビューとともに。

手延べそうめんを食べよう!

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パッケージ裏に「名称:手延べそうめん」と記載されていれば手延べそうめん

以上が形式的なそうめんの説明です。そうめんとは何か、手延べとそうでないそうめんの差は何かということがおわかり頂けたと思います。そして、作り方の差が質に現れる、手延べとそうでないものではまるで違うということも軽く説明させて頂きました。

その上で。

おいしい手延べそうめんを作るには職人技を要します。けど、そうめん職人は高齢化が進んでいると聞きます。少なくとも安泰と言えるような状況ではありません。

上の動画をいま一度ご覧下さい。手延べそうめんって作るの大変なんですよ。でも、それでも200円~300円、高級なものでも500円、600円程度で買うことができます。

筆者の経験からすると、手延べではない安いそうめんの多くはおいしくありません。100円、200円をプラスするだけで、100倍おいしいものが買えるんです。ひと夏に数百円。たったこれだけで手延べそうめんを、そうめん職人を支えられます。今後もずっとおいしい素麺が食べられるよう、そうめんを買う際はぜひ手延べそうめんを。

当ブログの素麺レビュー記事

次回はおいしい素麺の選び方、素麺をおいしく食べるコツをご紹介したいと思います。

付録:手延べそうめんの反対が機械麺ではない

この記事を含め、当ブログでは「手延べそうめん」「機械麺」と分けています。ただ、機械麺という言葉は便宜的な言葉でして、機械麺という言葉には注意が必要です。どういうことかと言いますと……。

「手」に対応するのが「機械」です。けど、「機械麺」という言葉には「延べ」に対応する言葉が入っていません。「延べ」に対して機械麺は「裁断」しますから、手延べそうめん以外のそうめんを正確に記すなら「裁断式機械麺」となります。

なぜ、わざわざこんなことを書いているかというと、先ほどもサラッと書きましたが、手延べそうめんとそれ以外のそうめんの差を手作りか機械製かの差だと勘違いしている人が多いからです。

確かに手か機械かという差もありますが、手延べそうめんでも機械は使われます(生地を練り合わせる機械や延ばしていく機械など)。そして、両者の本質的な差は延べているか裁断しているかにあります。

もしわかりづらければ、手打ちうどんを思い出してみてください。手打ちうどんは生地を薄くのばして裁断しています。ある意味、乾めんの機械製うどんも同じです。生地を薄くのばし裁断します。ですから、うどんにおいては手か機械かの差なので、「手打ちうどん」「機械麺」と呼び分けても論理的には整合性が取れています。

※言葉の話、論理的な話をしています。手打ちうどんと機械製うどんの"クオリティ"が同じと言っているわけではありません

では、手延べそうめん以外のそうめんを「裁断式機械麺(裁断式機械そうめん)」と呼ぶべきでしょうか。

裁断式機械麺と書いた場合、「じゃあ裁断式ではない機械麺があるの?」と思われかねません。また、そうめん初心者が多いであろう現状において、裁断式機械麺という言葉は冗長です。

以上のことから、大いに誤解を招きかねない言葉ですが、当ブログでは手延べそうめん以外のそうめんを「機械麺」と記していきます。

ただ、ここを読んでるような奇特な方は「手延べそうめんは単に手作りということではなく、よりをかけながら延べていく(細く麺状にしていく)、手間暇のかかったそうめんなんだな」「手延べそうめんと機械麺は手作りか機械かの差ではなく、手で延べているか機械で裁断しているかの差なんだな」と正確なことをお知りおきください。