太くてコシが強い手延半田めん
今回ご紹介するのは小野製麺有限会社の手延半田めん。
スーパー オオゼキで約350円でした。手延べそうめんとしてはちょっとお高め。
徳島県美馬郡つるぎ町の半田地区はそうめんの一大産地。半田手延べそうめん協同組合には小野製麺を含む20社の組合員が所属しています。
「半田そうめん」は半田手延べそうめん協同組合の登録商標です。この手延半田めんがなぜ手延半田そうめんではないのかというと、これは商標の問題というよりも自社製品へのこだわりからそうなっています。
約40年前(いつから40年前かは不明)、料理研究家の故・土井勝さん(土井善晴さんの父親)が小野製麺の商品を気に入り、「商品名を『半田めん』にしたほうがいい」とアドバイス。以来、他にたくさんある「半田そうめん」と差別化を図るという意味もあって、半田めんと名乗るようになりました。
なお、「太いから、半田そうめんはそうめんじゃなくてひやむぎだろう」といった声も散見するのですが、これは大きな誤りです。詳細は後ほど。
開封。小麦の甘い香りがとても強いです。
一般的な手延べそうめんと並べてみました。確かに太いです。
約5~6分でゆであがりますが、2~3本取り出し麺の固さを確かめてお好みのゆで加減にしてください。
とあるので、とりあえず5分茹でてみました。
ピカピカ。見ただけで麺の滑らかさが感じ取れます。
まずはそのまま。
プルンとはずむようなコシ。ツルっと滑るようなのど越し。小麦の風味も豊かです。
半田のそうめんに限らず、太いそうめんはうどんにも似たコシであることが多いのですが、この手延半田めんも同様です。極細うどんと並べてブラインドテストしたら、どちらがそうめんでどちらがうどんかはわからないかもしれません。
今回は冷や汁風にしてみました。太くてパンチのある麺ですから、濃厚なタレにもよく合います。
ひとつ面白かったのが量です。2束(1束100g×2束)食べられるかなぁ……と思って1束にしてみたんです。そうしたらまったくもって足りなかったので、追加でもう1束茹でました。
普通のそうめんだと200gは4束分。普通のそうめん4束はきついのですが、手延半田めんなら4束相当の2束がなぜか余裕で食べられました。それだけツルツルッと食べやすいということでしょうかね。
おいしいです。けど、実はひと口目で「あ、やってもうた」と思っていました。ゆで時間5分は絶対に長すぎた。
その日の夜、今度は2分から様子を見つつ茹でました。結果、私にとってベストは2分50秒。
これよこれ。プルンではなくブリッブリ。強烈な歯ごたえ。いやーうまい! 家系ラーメンを食べる際、麺かためで注文する方はぜひ3分前後で試してみてください。この食感はたまりません。
おいしさだけで言うなら★5です。けど、このコシはうどんやラーメンでも似たものがあります。私はそうめんでしか味わえない、そうめんならではのコシが好きなので★4。ただ、香川県出身で太いそうめんが好きな連れは「★5」と言ってました。こういうタイプが好きな方には断然おすすめです。
誤解が多いそうめんとひやむぎの差
「細いのはそうめん。太いのはひやむぎ」
これは不正確です。
手延べではない乾麺(=機械麺)の場合は1.3mm以上1.7mm未満がひやむぎ、1.3mm未満がそうめんです。そうめんとひやむぎは確かに太さの差ではあります。
けど、手延べの乾麺においては1.7mm未満がそうめん・ひやむぎで、太さの差はありません。メーカーが適宜呼び分けているというだけです。
さて、公式サイトの説明によると、小野製麺の手延半田めんは約1.4mm~1.6mmだそう。ですから、規格上、この手延半田めんはそうめんともひやむぎとも呼べますが、メーカーたる小野製麺が手延べそうめんと謳っているので、これは紛れもなく手延べそうめんです。
※公式サイトの説明にも誤りがあります。
国の定める基準ではひやむぎに分類されてしまう太さですが、三百年余続く伝統製法と技術の継承により、つるぎ町(旧半田町)で作られたもののみが半田そうめんと認められています。
国の定める基準においても、手延べ半田めんはそうめんです。もちろんひやむぎと呼んでもいいのですが。
手延べ干しめんと手延べそうめんの関係
商品パッケージには「手延べ素麺」と書かれていますが、食品表示には「名称 手延べ干しめん」とあります。これは矛盾していません。
大前提として、この商品は手延べ干しめんです。そして、
長径が一・七ミリメートル未満に成形したものにあっては「手延べひやむぎ」又は「手延べそうめん」と(中略)表示することができる。
食品表示基準 別表第四(第三条関係)より
手延べそうめんと表示することが"できる"というだけで、手延べそうめんと表示しなければいけないわけではありません。
ただ、手延べ干しめんよりも手延べそうめんのほうが言葉としては馴染みがあるため、多くの手延べそうめんは食品表示においても「手延べそうめん」と表示しています。
では、なぜ小野製麺が手延べそうめんではなく手延べ干しめんと表示しているのか。その理由はわかりません。けど、何かしらの理由があるのでしょう。法律・規格の問題ではなく、気持ちの問題として。おそらく。
半田そうめんの歴史
江戸時代、日本全国から伊勢神宮へ参詣する、いわゆるお伊勢参りが流行しました。詳細はウィキペディア(お蔭参り)をご覧頂くとして、このお伊勢参りが日本全国に大きな影響を与えます。
地方から伊勢神宮へ向かう参拝者たちは伊勢周辺あるいは奈良、京都、堺などで、最先端の技術や文化に触れます。そして「これをウチの村でも!」と習得し、村へ持ち帰りました。そのひとつがそうめん(の作り方)です。
堺~大和~伊勢と続く伊勢本街道。お伊勢参りで賑わった街道なのですが、まさにこの街道上にそうめん発祥の地・三輪(今の奈良県桜井市)がありました。三輪のそうめんを見た参拝者が「農閑期に作れるというこのそうめんをウチの村でも作ろう!」となり、特に中国・四国へとそうめんの製法が伝播しました。その典型例が小豆島であり淡路島、半田です(諸説あり)。
半田は吉野川沿いにあります。大きな川があったので、塩や小麦の輸送にも最適な場所でした。そして、当初は船頭たちが自分達用に簡易に作っていたので、細くする必要がなく、太めのそうめんとして伝承されてきました。
名称 | 手延半田めん |
原材料名 | 小麦粉(国内製造)、食塩、食用植物油 |
製造者 | 小野製麺有限会社 |
評価 | ★★★★☆ |