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手打風そうめん(スナオシ)は素麺らしくないプリッとした弾力で、細いうどんのようでした~手打ち/手打ち風そうめんって何だろう

思わず二度見しましたよ。

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て、手打風そうめん!? 59円!(200g)

西小山、武蔵小山にあるディスカウントショップ・大黒屋にありました。もちろん買ってみます。

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製造者は株式会社麺のスナオシ(水戸市)。幹麺やカップ麺、即席麺などを製造している会社です。この手打風そうめんは"本格派乾麺シリーズ"の内のひとつで、他にも手打風うどん、手打風きしめんなどが出ています。

そうめんの長さに関する規格はないのですが、基本的には19cmです。おそらく伝統的にそうなのでしょう。ですが、時折、長いそうめんを見かけます。これには2パターンあります。

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長い麺が8の字状に曲げられている南関そうめん

ひとつは、1m、時に3m以上にもなる細い手延べそうめん。大門素麺(富山県砺波市の大門地区)、南関素麺(熊本県玉名郡南関町)、和泉素麺(愛知県安城市和泉町)などが有名です。伝統製法によりそうなっているようです。

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手延べひやむぎ・揖保乃糸と機械麺の讃岐そうめんは隣の手延べそうめん・揖保乃糸より長い

もうひとつは手延べではない機械麺。だいたい20cm~25cmくらいでしょうか。スーパーのそうめん売り場でも少し大きめのそうめんを見かけませんか? 想像ですが、他の商品(うどんやひやむぎなど)との兼ね合い(機械の流用)からそうなっているのかもしれません。うどんだったら19cmだと短いですからね。

いずれにせよ、経験的に長い機械麺のそうめんはだいたいまずいです。この手打風そうめんも長いタイプ。おのずと期待値は下がり、まずかった時のショックを和らげる自己防衛に入ります。

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封を開け香りをかぎます。あまりツンときません。熟成麺と表記されているのですが、ちゃんと本当に熟成させてるからでしょうかね。まずい素麺は"小麦粉の練り物"って感じのツンとする匂いがします。

まずいそうめんは、ポロポロと折れていることが多いです。麺が弱いから折れるのでしょう。

茹でます。麺を混ぜる箸先に伝わる鈍い重み。これもまずいそうめんの特徴。約3~4分と表記されていますが、2分30秒ほどで上げました。

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乾めんの時は何も感じませんでしたが、茹であがると太さが際立ちます。水分をしっかり含むのでしょう。

まずはそのままひと口。プリッ。ははは。変なぬめりやドロっとした感じはなく、弾力があってツルリとしてます。まずくない。悪くない。けど、これは素麺ではないw

この弾力は細いうどん。まあ、機械麺のそうめんはこうなりがちなんですが。生地を薄く延ばし、細く裁断。まさに手打ち(風)うどんと製造工程は同じです。食感が似通うのも道理。

食べ物としてはそれなりにおいしいです。ただ、この食感、味わいは素麺に求めるものではありません。何でもいいから麺っぽいものでお腹を満たしたいということであれば、手打風そうめんはいい商品でしょう。けど、おいしい素麺を食べたいと思うなら、星2つです。

DATA
名称手打風そうめん
原材料名小麦粉、食塩、加工でん粉
製造者株式会社麺のスナオシ
評価★★☆☆☆

"手打ち風そうめん"という表示について考えてみた

ネットで調べた限り、麺のスナオシが販売している手打風そうめん以外で"手打ち風"と銘打っているそうめんを見つけることができませんでした。そういう意味では、かなりレアな商品です。

けど、そうめんを"手打ち風"として販売することは、法律や規格的に問題はないのでしょうか。ちょっと検証してみましょう。

食品表示基準ではこのように規定されています。

乾めん類 次に掲げるものをいう。

一 小麦粉又はそば粉に食塩、やまのいも、抹茶、卵等を加えて練り合わせた後、製めんし、乾燥したもの

(中略)

長径を1.3㎜未満に成形したものにあっては「干しそうめん」又は「そうめん」と(中略)記載することができる。

要は、小麦粉を練って麺状にして乾燥させれば乾めん類だと。そして、そうめんの場合は直径が1.3mm未満であればいい。それだけです。製法については一切規定がありません。

次に乾麺の業界団体・全国乾麺協同組合連合会が定めている全国乾麺協同組合連合会表示等のガイドラインではどうでしょう。こちらでは生めん類の表示に関する公正競争規約を参考に、「手打ち」「手打ち風・手打ち式」といった言葉を定義しています。

1)「手打」「手打ち」とは、製めん全工程を手作業で行うもの及び、混練・熟成・延棒での圧延及び包丁でめん線状に裁断した後、乾燥したものであって、混練及び乾燥以外の工程を手作業で行ったものをいう。

2)「手打式」「手打ち式」「手打風」「手打ち風」等とは、製めんに際し、混練・熟成・めん帯の方向が交錯するような方法での圧延及び包丁又は手切りに近いうす刃の切刃でめん線状に裁断した後、乾燥したものであって、その工程の全部又は一部を機械作業により行うことをいう。

生地を薄く延ばして裁断して乾燥させるんだけど、手作業であれば「手打ち」、機械だったら「手打ち風」と。

つまり、機械で生地を薄く延ばして裁断して乾燥させた、直径1.3mm未満の乾めんは、「手打ち風そうめん」と言うことができなくはない。あくまでもパッケージの表面などで、ですが(裏面の品質表示に「手打ち風そうめん」とは記載できません)。

ですから、「手打風そうめん」と銘打つこと自体は、規格・ガイドライン上は問題なさそうです。

ただし、こうも考えられます。

第一。機械麺のそうめんのほとんどが手打風そうめんと言えちゃうよね? それをことさら訳ありげに記すのはどうなのよと。

第二。規格の話はさて置き、論理的に、言葉として、手打ち風そうめんがあるのなら、手打ちそうめんもなきゃいけない。手打ちそうめんがないのに"風"も何もあったもんじゃないでしょう。じゃあ、手打ちそうめんがあるのかと。

手作業で生地を直径1.3mm以下に裁断して素麺を作ろうなんて人は現実的にはいないでしょう。少なくとも私は手打ちそうめんを目にしたことはありません。とするなら、手打風そうめんはないものを前提とした"風"。これはいかがなものかと。

しょせん"風"ですから、景品表示法における優良誤認とまではいかないかもしれませんが、素麺に関して誤ったイメージ・知識を消費者に与えかねません。そうめんメーカーとして、あるいはそうめん業界として、これはどうなんですか?と。

法律、規格、ガイドライン、そのどれもに反していないかもしれない。けど、なーんかね。

まあ、実際上、「なんだこれは!」とクレームをつける消費者はいないでしょう。「手打風そうめん」という名称自体に私がやいのやいの言ったところで仕方ありません。そうめんに関する理解を一層深めるいいきっかけになってくれたと捉えておくかw