学芸大学西口商店街をプラプラ3分ほど歩いて行くと
韓国料理店「サランバン」の角に「ameco」のかわいい看板。看板の指し示す方向を見やると…
サランバン、舌雅、やきとり天国、栄屋精肉店、市喜、ameco、鳥おき、THE BLUE CORNER、駒沢通りを越えれば串カツ田中。パンチのきいた店が軒を連ねていますが、とても静かな路地です。
先ほどの看板が導いていたのはこちらのカフェバー「ameco(アメコ)」。2011年7月にオープンしました。「ameco」は店主の名前に由来するそう。
学芸大学に引っ越してきた直後、2013年秋ごろに2、3度行ったことがありました。それ以来なので5年ぶり。
※追記:2022年12月18日に閉店しました。追記以上
女性客も多い静かでのんびりとしたameco
カウンターが10席ほどでテラス席もあります。女性の先客がいらっしゃいました。そうそう、5年前もそうだった。女性客が多かったです。この雰囲気がいいんだろうな。なーんか落ち着く。
植物の絵があしらわれた、なんだかオシャレなメニュー。
さて、何を飲もうかな。ウィスキーはデュワーズ、タリスカー、グレンフィディック、白州、山崎といったところか。それほど種類があるわけでもなさそう。うーん。
「こちらにもありますよ。これは1990年代のジョニーウォーカー、シーバスリーガル、BELL'S(ベル)」
90年代? 等級制度はいつまでだったかな。
「そのジョニーウォーカーは特級ですか?」
「いえ」
いま調べたところ、等級制度は1989年まででした。
昔の酒税法ではアルコール度数43度以上のウイスキーを特級、40度以上43度未満を一級、39度以下を二級と分類して、これに応じて酒税が設定されていました。そんなわけで、昔のウィスキーには「特級」などと表示されていて、一種のコレクターズアイテムにもなっています。ジョニ黒の特級は2回ほど飲んだことがあったかな。
タリスカーは私が一番好きなスコッチです(スコッチにハマったきっかけがタリスカー)。けど、つい最近「songbird(ソングバード)」で飲んだばかり。さて、どうしよう。
「フィディックをロックで」
おやぁ。もう少し尖った印象があるんだけどな。イメージしていたよりもなんだかまろやか。
いろいろな音楽がかかっていますが、気になったのがこちら。
「そこにメタリカってありますね」
「本当はハードロックとかが好きなんですが、そういうのをかけると、女性が引いちゃうんで(笑) 音楽は何を?」
おおう、墓穴w
「音楽はからっきしなんですが……」
普段はここで話題を逸らすのですが、ホロ酔いも手伝ってポロっと口にしてしまいました。
「聴くのはベビーメタルだけですねぇ」
「そうですか。以前、メタリカ、メガデス、スレイヤー、アンスラックスが揃うというイベントがあって行きたかったんですが……。メタリカとメガデスが一緒になるってすごくないですか?」
ああ、このパターンか。ベビーメタル(BABYMETAL)がヘビーメタル(heavy metal)に聞こえて勘違いされるというベビメタあるあるw
「メタリカの映画もあったんですが……」
店主のメタル話がもう少し続きます。一応、BABYMETALを通じて知ったこともあるので、興味深く聞いていました。けど、店主にしてみれば、ヘビメタが好きだって言うから合わせて話してんのに、まったく乗って来ないなぁ、って感じだったでしょうね。たはは。
さて、二杯目はどうしようかな。
「何が一番出ますか?」
「ハイボールですねぇ」
「どこも似たようなものですね」
「最初の頃はワインもいろいろ揃えていたんですが、結局、『赤』『白』といった注文ばかりで、品種にこだわって飲むという人も少なくて。料理人もいたりしたんですが……」
5年前は私もここでワインを飲んでいました。もうワインって感じじゃないんだ。
「じゃあ、ラムは何が」「ラムも……マイヤーズとキャプテンモルガンだけですね」
たまにはいいか。
「キャプテンモルガンをロックでお願いします」
甘いお酒も大好きなんですが、バニラが強いスパイスドラムってのがどうもね。まあ、普通はロックじゃなくてコーラとかで割って飲むのが正解なんだろうな。でも、久々だしこれはこれで悪くない。
なんだかまったり。この空間がそうさせるのでしょう。スッと客に寄り添う店主の感じも心地いいし。落ち着いた静かな学大の夜もたまにはいいね。
夜中にカフェとしても利用できるameco
それから3週間ほど経った頃。酒の飲めない連れとメシを食べた後、じゃあどうしようかとなった際、「ameco」のことを思い出して行ってみました。
今日も静か。先客は男性が一人。私達が入って来てほどなくしてお帰りになりました。花がきれいに挿してあるなぁ。「花善」かな? 年に何度か、すぐ近くの花屋「花善」とコラボイベントをしていたりしますし。
私はジントニック。連れはアイスコーヒー。アイスコーヒーにはビスケットがひとつ、お酒の私にはチャームがついてきました。
「このビスケットが一番好き」
撮らなかったのですが、ロータスビスケット(Lotus)でした。私は初めて目にしたような。
「何がどう違うの?」
「一枚の満足度が違う。コスパがいい。昔はこればっか食べてた」
ひと口くらいもらっときゃよかったな。
ジントニックはライムがキュッときいた味。暑かったからなぁ。こういう感じがいいかも。コーヒーはひと口飲んだのですが、私はわかりませんw 大量のミルクとガムシロを入れたい派。連れはさっぱりしててアイスコーヒーに合う感じと言っていました。LA CIMBALI(ラ・チンバリ)のエスプレッソマシンなのかな?
「これやろう」
「えー、いいよ。あー、これやったら?」
「何これ?」
「知らないの? こうやっていろいろな形にするんだよ。スネークキューブ。昔はもっと大きくて、焦げ茶と肌色だったんだけどな」
帰って調べたら、スネークキューブ、ルービックスネーク、マジックスネーク(ツクダオリジナル)など類似品がいっぱいあるようです。
で、こいつを渡すと連れが妙にハマって、スマホで完成形のサンプルを見つけ、それを作ろうと躍起に。その間、ゆっくりと店内を観察します。
うーん。なんだろう。アニメなのか漫画なのか。妙にオシャレ。関係者でも来てるのか? と思いきや。
帰って調べてみたところ、「幼女戦記」の主人公、ターニャ・デグレチャフ(中身はおっさん)と「キルラキル」の鬼龍院皐月でした。どうも店主がアニメ好きらしい。アニメの上映会みたいなイベントもやっているようです。他にもバイク、バスケットボール、スケートボードなど、いろいろなものがお好きなよう。
「できた!」
「おー」
「みなさん、いろいろ作ってて、店が終わって見てみたら、見たことのないようなものができあがってたりするんです(笑) いろいろ見ましたが、これはすごいですね」
「でしょ! これは難易度高いですよ」
アイスコーヒーは700円、ジントニックは850円もしくは900円、お酒のチャーム代が200円もしくは250円(たぶん)で計1800円でした。
amecoがまく種
凝った食事メニューやこだわったワインを置いたって仕方ない。お酒の種類を増やしたところで出ない。2011年にオープンしてここまで、客層に合わせて「ameco(アメコ)」はいろいろなものをそぎ落としてきたのでしょう。そうして落ち着いたのが現在の形。と書くとネガティブに聞こえるかもしれませんが、そうじゃない。客が望んだ形ということです。
確かに掴みどころがないと言えば掴みどころがない。「こんな店」となかなか説明しづらい。けど、それも決して悪い意味で言っているのではありません。
「ameco」はいろいろな種をまいています。アニメ・漫画、音楽、バイク、バスケ、スケボー、おもちゃ、酒、コーヒー。もしかしたら、そのどれかに客が引っかかりを感じるかもしれない。そうすると店と客にコミュニケーションが生まれる。そして種は芽を出し花を咲かせます。もし今回、連れが一人で来ていたら、ロータスビスケットで話に花が咲いていたかもしれません。
「ameco」にはこの種が何気に多いのですが、センスよくそれが配されていて、上手にキレイにまとまってます。オシャレ。何かをことさら強調することもないから、掴みどころがないようにも感じます。けど、じーっと目を凝らしてみて下さい。楽しい花が咲くことを予感させる種がそこらじゅうにいっぱいまかれています。
夜中にカフェはやってないし(実は一軒ある)、ほんの少しのお酒、ないしはコーヒーで夜更かししたい、まったりしたい、静かに過ごしたい、そういう人にも貴重な空間だろうなぁ。考えてみれば、他にこういうお店って学大にないし。
お酒が飲めない人でもぜんぜん大丈夫。女性も安心して行けます。あなた好みの種を「ameco」で探して、花を咲かせてみてはいかがでしょうか。
SHOP DATA
※「宅飲み酒場 アヤノヤ」のオーナー兼店主・西田彩乃さんがめっちゃいいことを言っているのをたまたま目にしたので、ちょっとパクらせてもらったw