栄屋精肉店（学芸大学）の弁当は"奇跡の弁当"と呼ぶに値する

学芸大学で約500軒の飲食店を巡っている筆者が学芸大学でもっとも愛している食べ物――栄屋精肉店の弁当です。

学芸大学駅から徒歩4分。西口商店街沿いの韓国料理店・サランバンの角を右に入ると、栄屋精肉店があります。

街のお肉屋さんです。120円/100gの牛すじがなかなかいいんですよ。牛すじを大量に使う料理を作る際はここでよく買っています。

※その後、値上がりしたかもしれません

さて、今回はお弁当を買いに行きました。頼んだのはトンカツ弁当（550円）とコロッケ（80円）。

注文が入ってから、衣をつけ揚げはじめます。チリチリといい油の音。

※その後、時間帯（特に昼）によってはメンチカツを揚げ置きするようになりました。

「お店はいつからあるんですか？」

「昭和38年から。どうして？」

「いや、ここに昭和49年の賞状が飾られてるじゃないですか。私の生まれた年とほぼ同じだなぁと気になって」

「何年生まれ？」

「昭和48年です」

「ひと回りくらい違うね（笑）」

なんてことを話していたら、トンカツとコロッケが揚がったようです。ザクッザクッとトンカツを切る音も心地いい。弁当にパチンと輪ゴムをかける音もいい。

「630円ね。はい、20円のおつり。ありがとう」

「ありがとうございます。またきまーす」

お父さんもお母さんも優しい素敵な人です。

せっかくの揚げたて。すぐに頂きたい。栄屋精肉店の裏手にある三谷児童公園で食べることにしました。

シンプルですが、ボリューミーです。キュウリの盛り方なんてシャレてるじゃないですか。いいですねぇ。トンカツもコロッケもとても美しい。

箸でトンカツをひと切れ持ちあげます。箸先から伝わる衣のカリっと感が、もうすでにおいしさを伝えてくれます。口に入れたら想像通りにサクっ。この音、歯触り……至福。豚肉も柔らかくジューシーです。

コロッケも衣がサクっとしていて、中はフワっ。ジャガイモの甘みが口内に溢れ返ります。惣菜系のコロッケは甘くしすぎるきらいがあるのですが、ここのコロッケはちょうどいい。ああ、なんてうまいんだ。

そして秀逸なのがご飯！　弁当のご飯としては完璧な炊き上がり。モチっとしすぎるとベチャっとなるし、パサパサすぎてもおいしくない。揚げものと一緒に食べること、時間を置いて食べられるかもしれないということを想定して炊き上げた、絶妙なバランスのご飯です。

こんなにうまい弁当が、このボリュームで550円。コロッケを足しても630円。あ・り・え・な・い。

さらに。特に変わった弁当でもありませんから、おそらくは50年前からほとんど変わってないと思われます。生まれるずっと前から、変わらない姿で変わらない味で提供され続けてきた弁当……。

50年という歳月を乗り越えてきた、シンプルだけど美しく、この上なくうまい、激的に安いトンカツ弁当。この弁当を"奇跡の弁当"と評するのは大げさでしょうか。

昼時、誰もいない小さな公園で、弁当を一心不乱に喰う――よかった誰もいなくて。

「ママ見て。おじさん泣きながらお弁当食べてるよ」

幼稚園児にそんな風に指さされなくて済んだｗ

※追記：私がコロッケを買った最後は2023年4月7日です。そして4月14日、その日に栄屋精肉店へ行かれた方から「大変だからコロッケはやめた」とおっしゃっているとの情報が寄せられました。これをお読みになっている時点ではもしかしたらコロッケはないかもしれません。追記以上

随時追記：奇跡の軌跡～栄屋精肉店の弁当一覧

幾度となく栄屋精肉店の弁当を食べています。鳥のから揚げ弁当、チキンカツ弁当はザックザクでジューシーで濃厚。メンチカツ弁当は巨大なメンチカツが2つ！~~（メンチ1、コロッケ1にもできます）~~　甘みがあってジューシーなメンチカツは激やばです。このメンチカツ弁当は「学大で食べるべき20の料理」に選びました。