千鳥、青波、赤い「氷」の文字。氷旗は夏を感じさせると同時に、これを見ただけで涼を感じさせます。小さい頃から刷り込まれた日本人としてのDNAがそうさせるのでしょう。
学芸大学駅から徒歩15分。祐天寺駅からだと15分強、三軒茶屋駅からは20分弱。東京学芸大学附属高等学校のすぐ隣に札場氷室(ふだばひょうしつ)という氷屋さんがあります。
油面などでもご親戚筋が氷屋をやっていましたが、現在、ご一族で店を構えているのはここだけ。
基本的には飲食店等への卸売り(業務用)がメイン。夏だけかき氷屋さんをやっています。
「ブッカキ氷」がもともとの名称。これが縮まって「カキ氷」という言葉が生まれました。札場は「ふだば」じゃなくて「ふたば」だと、この看板でわかりました。いろいろな読み方があるんだなぁ。
※そもそも札場氷室に関する情報がネット上に皆無ではあるのですが、「ふたば」と正確に記載しても、調べる方のほとんどが「ふだば」と読んでいるでしょうから、あえて「ふだば」ともタイトルに記載しました。
※2019年4月17日追記:なんと! 実は「ふだば」らしい!w 看板の表記が間違っているとの情報を店主のお知り合いから得ました。どうしてこうなっているのかw 機会があれば詳しく聞いてみます。
※2020年6月7日追記:札場氷室のご主人に直接うかがいました。やはり読み方は「ふだば」。読みづらくなるため看板は「フタバ」と書いてある、とのことw 追記以上
時折、前の道(下馬通り)を通るのですが、タイミングによっては行列になっています。多くは高校の子たちでしょう。
イチゴ、レモン、メロン、カルピス、カンロ、ブルーハワイは150円。ミルク、あずきは200円。ミルクをプラスするなら+50円。縁日価格です。いや、縁日より安い? これなら高校生でも買いやすいですよね。
余談ですが、かき氷のシロップは色が違うだけで、基本的にはどれも同じ味です(少々の香料の差はあるかもですが)。赤ければイチゴ味に感じるし、緑だとメロン味に感じる。色で味を錯覚させています。何気にすごい技だ。あるいは、私たちの味覚なんてのは案外アテにならないとも言えるw
近くの現場で作業をしているであろうおっちゃんが、イチゴを3個注文していました。仲間用に買って行くのでしょう。けど、これをビニール袋に入れて持って行こうとしてるんですが、まあまず無理でしょうなぁ。この炎天下だと1分が限界だと思うよ。大丈夫だったかな?w
さて、次は私の番。「イチゴミルクお願いします」と告げると、ちょうど氷がなくなったようで、新しい氷がセットされました。透き通ったキレイな氷です。
「きれいな氷ですね。ここで作ってるんですか?」
「いえいえ、工場で作ってて、それを仕入れてるの」
「かき氷は確か夏だけですよね」
「そう、夏の間だけ」
「こちらはどれくらいになるんですか?」
「どれくらいって…」
「昭和…」
「昭和40年代とか? いや、40年代ってことはないわね」
「戦前とか?」
「いえいえ! 戦後よ」
まだ東京学芸大学があった頃かな(1964年に小金井市へ移転)。当時の学生さんたちもこのかき氷を食べてたんだろうなぁ。
カップにまずシロップを少し入れるお姉さん。電動のかき氷機は、どんどん氷をスライスしていきます。カップの半分ほどまで氷が入ったら、シロップと練乳をかけます。さらにカップからこぼれ落ちそうになるほど氷を削ったら、最後に再びシロップと練乳。
できあがったものを店頭ですぐ撮影。こんな撮影、15秒くらいですよ。けど……
あわわ。やばっ。もう溶け始めてる。早く食べよう。
薄く削られた氷をストロースプーンですくいます。とても軽い。口に入れるとサクッとした食感。しかし、体の熱が一瞬にして氷を溶かします。
日に焼けた高校生たちの賑やかな笑い声、年季の入った氷屋の佇まい、シャシャシャという氷を削る音、滴る汗、口内に残るシロップと練乳の甘さ、そしてかすかな涼。夏だなぁ。暑いんだけど、なんだか気持ちがいいなぁ。
この記事を公開したのは7月24日。翌日、7月25日はかき氷の日です(日本かき氷協会が制定)。夏氷(な・つ・こおり=725)の語呂合わせというのと、1933年7月25日、山形県山形市で当時の観測史上最高気温40.8度を記録したから。
最近はオシャレなかき氷屋さんが人気です。そういうお店ももちろんいいのですが、近所に氷屋があるかどうかを調べて、老舗氷店の軒先でかき氷を食べる。これはこれで風情があっていいものですよ。
SHOP DATA
- 札場氷室
- 東京都世田谷区下馬4-2-13
- 03-3421-0089
- 公式
氷の世界
「氷」という漢字について
もともとは「冰」。「冫」(にすい)に「水」。これが「氷」という漢字になりました。
「冫」(にすい)は氷の割れ目を表す象形文字からきていて、冷たいことを意味します。冷たい、凍る、凝る(こおる)。冴は冴る(こおる)とも読め、凛はもともと寒いという意味です。
工場で作られる純氷
製氷工場で作られる氷は純氷(じゅんぴょう)とも呼ばれます。純氷は工場もしくは札場氷室のような氷の卸店・小売店で購入できます。
詳細は他所に譲りますが、純氷は水から不純物を取り除きつつ、48時間、場合によっては72時間ほどかけゆっくり凍らせて作ります。結果、透明度が高く、固くて溶けにくい氷ができあがります。
氷のサイズ
製氷に使う缶にJIS(日本工業規格)があるようです(具体的なJIS名称、番号は不明)。このため、製氷メーカーが作る氷(氷柱)は100×55×26cmで135kg=36貫となります。一般的にはこれを36等分し、1貫(3.75kg)単位で販売しています。実際には1貫を半分(あるいは三等分、四等分など)にして納品されることが多いのでしょうけど。購入者(特に飲食店)の使い勝手から。
かき氷機にセットされる氷は0.5貫です。これで7、8杯分のかき氷が作れるそうです。
街の氷屋さん
減ってきてはいるのでしょう。けど、実は何気にチラホラと見かけます。学芸大学視点で言えば、やまね(武蔵小山)、氷石ばし(三軒茶屋)、井上氷室(三軒茶屋)、太田屋氷室(深沢)などなど。氷石ばしのかき氷も有名ですね。
余談ですが、学芸大学でも氷屋から氷を仕入れているお店がいっぱいあって、札場氷室から仕入れているというお店もありました。
活用例
毎年、隅田川の花火大会を見に行くのですが、その際、必ず氷屋さんで氷を買っています。炎天下だとコンビニ氷はあっという間に溶けてしまいます。でも、氷屋の氷は本当に溶けないです。昼過ぎ~夕方前に買って屋外に出しっぱなしにしていても、夜まで残ります。
ちなみに、氷屋さんの氷は1貫(3.75kg)で400~500円ほど。コンビニ氷と値段はさして変わりません。繁盛期は高いかもしれませんが。ちなみに、上の写真に写っているのは3貫。いくつも屋上まで運ぶので、毎年大変w
どの氷屋さんも個人へ小売りしているとは限りません。もし購入したいなら、事前に問い合わせてみて下さい。