武蔵小山駅から徒歩5分強。西小山駅から10分。学芸大学駅からだと20分強かかりますが、自転車だとすぐです。都道420号線沿いにあるらーめん亭26。420号線と平和通りが交わる目黒本町五丁目交差点のすぐ近くです。
界隈には少なくなりましたが、こういう感じのラーメン屋・中華料理屋って幹線道路沿いによくありますよね。甲州街道とか青梅街道とかにあるイメージw
「自家製餃子 自家製麺の店」。クルクル回る三角柱の看板も、もしかしたら少なくなってきているかもしれません。
平たくて横に長い店内はL字カウンターのみ。すぐ近くにあった毎度屋に似てるなぁ。なんとなく。
お店をやってらっしゃったのは50代後半くらいと思しきお母さん。私たちの他に客はいません。目の前で餃子を包んでいました。
メニューは基本的にラーメンと餃子のみです。ご飯ものはカレーライスしかありません。連れとあれこれ悩んだ挙句、醤油らーめん(650円)、うま煮らーめん(900円)、餃子(400円)をお願いしました。
お一人ですが、チャッチャと動き、チャッチャと手を動かし、淀みなく餃子、ラーメンを作っていきます。
まずやってきたのは餃子。
ニラが透けて翡翠色をしています。駒留通りのら~めん 博龍を思い出させる色合いです。少し細長い形はハルピンを彷彿とさせます。餃子ってのは店の色が出る。
タネはしっかり練られていてしっとり。甘みと塩味(えんみ)があるので、そのままでも食べられますが、私は酢・醤油・ラー油とオーソドックスなタレにつけ、連れは酢・コショウで食べました。
続いてラーメンがやってきました。
「お好みでニンニク、紅ショウガをどうぞ~」
少し大きく感じる青磁。ラーメンショップ系、家系で青磁が使われることが多いように思います。界隈ではモンゴメリーが青磁ですね。ああ、そうだ。毎度屋も青磁だったな。
デフォルトとも言える醤油らーめんにコーンがトッピングされているというのは珍しい気がします。
スープは濃度を感じさせる色合い、透明度。甘みがあって、かすかに醤油の角を残しています。見た目同様、それなりの濃さがあります。
玉子入りの麺はムニッとした独特な食感。舌触りはトゥルン。加水率も高めなんじゃないでしょうか。最近はあまりないタイプかもしれません。
基本的には穏やかなんだけど、他にはないニュアンスが感じられる独特な味わいです。「あそこに似てる」と例えづらい。おいしいんですが、不思議なラーメンです。不思議なんだけど、なんだかとても温かい。
連れが頼んだうま煮らーめん。
うま煮はほんの少し片栗粉で閉じられていて、かすかにとろみがあります。この閉じ具合はある程度、幅があるんじゃないかな。場合によっては少しきつめ、時に緩めに閉じられているかもしれません。けど、スープをすべて飲み干すためには、これくらいの緩さがちょうどいいかもしれません。
あんかけのスープは野菜の甘み・うまみがたっぷり。野菜の食感がとてもいい。
それにしても、かなりのボリューム。間違いなく連れは食べ切れないだろうな。その分もあるということも視野に入れ食べ進めます。
ラーメンを食べていると、お母さんが目の前で餃子を包み始めました。
「こちらはどれくらいになるんですか?」
「昭和59年から34年」
「長いですねぇ」
「どちらからですか?」
「学芸大学のほうです」
「どなたかのご紹介?」
こういう店に紹介とかってあるのか?w まあ、あるんだろうけどw
「いえ、前をよく通ってて、いつか来たいなと思ってたんです」
「そういう方、多いみたいね。こういうお店も少なくなったから。古いというか……こういう黄色とかねぇ」
「ああ、なるほど。黄色と赤のこういう色づかいは最近ないですよねぇ」
「最近は木を使ったり、落ち着いた感じが多いわよねぇ。このあたりって、目印になるようなものがないでしょう。ここ目立つから、昔はよく『にーろくの近く』って言われたりね(笑)」
お母さんは「にーろく」と言ったぞ。「らーめんていにーろく」か。「にじゅうろく」ではなく。
「ずっとお一人なんですか?」
「いえ、主人がいて」
うしろには「店主難聴の為 大きい声で注文お願いします」と書かれています。近くのとんかつ屋・勝よしにも同じようなことが書かれてるんだよなぁ。
「じゃあ、今日はたまたまお一人なんですね。一人だと大変ですね」
「混み合うと、どうしてもお待たせしちゃうこともあるんだけど、まあでも……」
「これだけ長くやってらっしゃるから、慣れてらっしゃいますよね(笑)」
「そうね(笑)」
とにかくよくおしゃべりになるお母さんです。こちらの質問に答えるというだけではなく、お母さんの方からも積極的に話を振ってきます。めっちゃ楽しい。
「学芸大学だと、こういうお店だったらどちらへ?」
「こういう感じですか……どこだろう。たとえば、東軒とか二葉とかはよく行きます」
「あら、東軒は私もよく行くし、あきらさんもいらして下さるわよ」
「そうですか。おいしいですよね」
「笹崎ってわかる?」
「ええ、もちろん」
「週に一回、笹崎へボクシングをしにいってるの」
「え? ええ? ボクシングですか? それはエクササイズ的な?」
「そうねぇ……そんな感じだけど……」
ん? この言い淀み方。単なるエクササイズじゃないのか?
「なぜボクシングを? ボクシングがお好きなんですか?」
「これを話しだすと長くなるんだけど、簡単に言うと、息子の友達が女子ボクシングやってて、初めて試合見に行ったら、ちょっと熱くなってきちゃって(笑) それで同じ横浜の花形(ボクシングジム)で始めたんだけど、ちょっと遠いでしょう。近所で探したら、笹崎ボクシングジムにチケット制があって通いやすかったから、笹崎に行くようになったの。今は月謝払って通ってるけど」
WBA世界フライ級王者・花形進が開設した花形ボクシングジム。お母さんの言う息子の友達の女性ボクサーは、もしかしたら花形冴美(本名:田中冴美)かもしれません。学芸大学駅が最寄りの東京学芸大学教育学部附属高校(※)に通っていたそうなので、いろいろ話が符合します。
※現・東京学芸大学附属高等学校。2004年に現在名へ改称
では、お母さんとの話を続けましょう。
「お遊び程度でミット打ちをしたことがあるんですが、3分がとてつもなく大変で、めっちゃ疲れましたよ」
「なんかね、ランナーズハイじゃないけど、疲れてくると、そういうの通り越して……。2年前、初めて富士山に登ったんだけどね、その時も疲れるというより……」
「快感になるんですか?」
「そう、ハイになっちゃうのよね(笑) まあ、ボクシングをやってるような体つきじゃないけど(笑)」
見た目は穏やかで優しそうなお母さん。ボクシングをしているようには見えないし、ボクシングをしてハイになるとか、そんなことを言いそうにない雰囲気です。なにこのギャップw
ところで、ひとつ気になっていたことがあります。
「この『26』というのはどういう意味なんですか?」
「前の通りが、補助26号線といって」
ぐはっ。驚かないで下さいね。この時までそれに気付かなかった!w
「あ、そうか」
「26号線にちなんで店名をつけたんだけど、最近の若いタクシーの運転手さんとかは都道420号線って言わないとわからないみたい」
「この界隈の方はみなさん26号って言いますよね」
「昔、あっちに『26号線』っていうパチンコ屋もあってねぇ」
ちょうどお隣さんが会計をしました。いいタイミング。
「こちらもお勘定をお願いします」
「ありがとうございます。またぜひ来てね。水曜日が定休日です」
「ええ、ぜひ。おいしかったです。ごちそうさまでした」
店を出て自転車を押し、歩いて26号線を学芸大学駅方面へ。
いつまで経っても五本木まで開通しないことにいら立っている人や、土地収用のせいで、意に反して転居を余儀なくされる(された)人もいます。でも、それはとりあえず横に置いて、私は常々こう思うのです。26号線はなんて愛されてるんだと。界隈の人たちはみんな26号線が大好き。界隈で飲んでいても、とにかく「26号」という言葉が出て来ます。
「26号はいつになったら五本木まで通るのかね」
「あの店知ってる? 26号をずっと行ってさ」
学芸大学駅界隈の飲食店店主は、26号線を通って二葉フードセンター(二葉屋)へ買い出しに行きます。目黒本町界隈に住んでる人たちは26号線を通って学芸大学へ飲みに来る。お母さんはおそらくは26号線を上って笹崎ボクシングジムへ行き、もちろん私も26号線を下って武蔵小山方面へと買い物に行ったり飲みに行ったり。
地元感の強い、生活に密着した道・26号線。そんな26号線にあやかって店名がつけられたわけですが、らーめん亭26とそのラーメンもまた同じでした。地元の人たちに愛され、地元の人たちが長年通い続ける、地元に密着したラーメン屋の、ずっと変わらずにあり続ける、ちょっと独特な温かいラーメン。
学芸大学だと、花たこ、サンライズ、東紅苑、マッターホーンなどで同じようなことを感じます。その街が愛してきた味ってのがあるんだなぁ。
もし行く機会がありましたら、そして混んでいなければ、食べるだけじゃなく、お邪魔にならない程度に、お母さんと話してみて下さい。楽しくて、ラーメン・餃子が一層おいしく感じられると思います。
※26号線は都市計画道路補助26号線の略称で、界隈の人たちにもっとも馴染みのある呼び名です。正式には都道420号(東京都道420号鮫洲大山線)と言います。26号線の詳細に関してはまた日を改めて
SHOP DATA
- らーめん亭26
- 東京都目黒区目黒本町5-16-6 セルジュ目黒1F
- 03-3713-8126
- 公式