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函館らーめん 汐のや(西小山)のらーめんは鶏のうまみが溢れ返っていて、店中に人への優しさと西小山への愛が溢れ返っていました。

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西小山駅から徒歩2分。アーケード商店街の南端にある函館らーめん 汐のや。2016年11月10日にオープンしたラーメン屋です。

鮨のいつき(テイクアウト)→鉢巻太助/小僧寿し(テイクアウト)→麺屋 黒琥→函館らーめん 汐のやと変遷してきた物件です。麺屋 黒琥が短命に終わったせいか、地元の人たちにしてみると、この物件は続かないというイメージがあるそうな。ただ、汐のやはもうすぐ3年。定着したと言ってもいいんじゃないでしょうか。

ちなみに前店・麺屋 黒琥はムジャキフーズの店でした。汐のやもムジャキフーズのブランドなのですが、ここがどういう経営実態なのかは不明です。まあ、ムジャキフーズは独特な契約なので、仮にムジャキフーズが絡んでいたとしても個人店に近い店になるはずですが。

汐のやと言えば、初夏になると店頭に置かれる誰でも自由に飲める麦茶。おそらくは初めて置かれるようになった2017年シーズンからお世話になっているのですが、この麦茶が冷たくておいしいんです。大変助かっているので、一度は汐のやのラーメンを食べようと思っていました。

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店内はL字カウンターにテーブル席。明るい雰囲気のお店です。スタッフは男性店主と女性スタッフが一人。いつも同じ女性なのか、他にも何人かいるのかは不明です。この日はハスキーボイスの明るいお姐さんでした。

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お店のデフォルトであろう塩らーめんを注文して、メニューや店内をじっくり観察します。

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全体的に安く感じます。特に生ビールと餃子。餃子も頼めばよかったかなぁ。まあいいや。また来ればいいだけだ。

大人用の半らーめんと子供用のらーめんが分かれているのも面白い。どちらも麺は半量なのですが、子供用にはコーンが入っていて、店主の心遣いが読み取れます。

店頭にもあるのですが、メニューは絵になっています。うまいなぁ。ぬくもりのあるタッチ。料理の絵もいい味なのですが、背景のオレンジね。すごい。なんだろう。白いラインがシャシャシャと入っているでしょう。クレヨンで塗って、削ってるのか? それにあたかも貼り合わせたような効果も随所に見える。あるいは、あえて塗り方を変えてエリアをセパレートしたり。

私にはよくわかりませんが、絵のことがわかる人であれば、ここに使われている技法がひと目でわかるだろうな。いずれにせよ、素人が適当に塗ったのとはわけが違う。あたしゃこのメニューでゴッホの「ひまわり」さえも思い起こしましたよ。

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子供用の椅子が用意されているのも印象的。

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ディスプレイ用なのか売り物なのか、おもちゃやぬいぐるみもいっぱい。

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「じぃじぃ ばぁばぁ いつもあそんでくれてありがとう らーめんたべてね」

1000円と500円の"商品券みたいなラーメン券"もあります。「お釣りは100円券・50円券でお支払い」とあるのでハッとなってメニューを見返しました。全メニューが50円刻みでした。なるほど。

「お待ちどおさまです」

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おおお。透き通ったスープを想像していたのですが、濃度があります。へー。まずはスープをひと口。

あ!

予想とまったく違います。優しい味わいかと思っていたら、鶏がガッツリ。めっちゃ鶏。超鶏。鶏すごっ。鶏の甘み・うまみがハンパない。

そして、単なる鶏というだけではない濃厚なコクを感じます。鶏の脂? いや、もはやバター。それくらい濃い。トッピングにはバターがありますが、デフォルトのスープにもバターが入っているんじゃないか、そう思わせるほどのコクです。

強くてガッツリで、とてもパンチのある味。塩味(えんみ)も強め。これは予想外だったなぁ。帰って某ログ等を見てみたのですが、「あっさり」「優しい」という感想がいっぱい。うそでしょ。ふだん二郎しか食ってねぇんじゃね?w

丼が大きめです。そこにたっぷりと濃厚なスープ。食べごたえもあります。おいしいなぁ。好きだなぁ。暑いこの季節、これくらいのパンチがちょうどいい。ん? もしかして季節や気温によって味を変えてたり? さすがにそこまではしてないか?

会計は650円。今どきのラーメン屋にしてはやっぱり安い。

「この絵はどなたが?」

「店主です。メニューも表の看板も全部」(女性スタッフ)

「以前、何かおやりになっていたんですか?」

「いえいえ」(店主)

うそおっしゃいw

「え? 独学ですか? いやぁ、これだけうまいのに何もやってらっしゃらないというのは逆にすごいですけど……」

「昔、油絵を」(店主)

ほらねw

「でしょうねぇ。じゃないとこれは描けませんよ」

「こちらもそうなんです。どうぞ」(女性)

「ありがとうございます」

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かわいいトッピング券もカタツムリの絵。「トッピング」と「プレゼント」の後ろに敷く色を変えたり、グラデーションを入れたり、そりゃもう凝りに凝ってるのですが、問題はこの形です。正方形とかにしておけば、カラーコピーしてカッターでサッと切ればいいだけ。切るのに手間のかかるこんな形にわざわざしますかねぇ。

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これは2018年5月5日に撮影したものなんですけどね。

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「コレで作りました」

なぜ粘土のケースがぶら下がっているだろうと思ったら……。

自分の内から湧き出るものを抑え切れない。だから溢れ出る。結果、すべてが過剰になる。学芸大学ならねこにこばんがまさにそう。なぜそうなるのかは人それぞれなんでしょうけど、基本的には愛だったり優しさだったりするのでしょう。だからこそ子供たちが喜ぶだろうと、トッピング券をかわいく切り抜く手間を惜しまない。粘土で冷やし中華まで作ってしまう。

しかも、汐のやの愛は単にお客さんに向けられているだけじゃありません。このお店は、この店主は西小山という街を愛している。

店頭に麦茶を置く。孫がおじいちゃんに渡すための商品券を用意する。それもこれもこの街を愛しているから。ラーメンを作りながら、店主の目線はずっと店外へと向けられていました。通りすがる街の人たちすべての顔を確かめるがごとく。

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2019年4月13日撮影。

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2019年5月25日撮影。一ヶ月でもう変わってるw 愛が注ぎ足されてる。

「汐」は文字通り夕方の"しお"。夕刻、月の引力により海面が上昇することです。

月の光は優しいのですが、引力は太陽の約2倍。夕方になると溢れんばかりに潮が満ちます。

函館らーめん 汐のやは優しい。けど、人を、街を愛そうとする気持ちがこの上なく強い。その溢れ返る想いが乗った塩らーめんもまたとても強く、記憶に色濃く残るその味は街の人を惹きつける。

私は学芸大学住人。潮が引くように一度、学大へと戻ります。けど、かわいいトッピング券を使って味噌ラーメンを食べるため、再びまた月の引力に寄せられ汐となり、溢れる優しさに舞い戻ることになるのでしょう。

醤油らーめん。極上。

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2021年10月30日。二日酔いを引きずる胃を落ち着かせるべく、2年半ぶりに汐のやへ。この間、店前は数えきれないほど通っていたのですが、ようやくあのトッピングチケットを使える機会が訪れました。

「醤油らーめんお願いします。味玉で」

そう言いながらトッピングチケットを差し出します。

「わあ! 久々ですね」

サッとスマホで自分の記事の作成日を調べました。

「約2年ぶりでした。久々ということは、デザインが変わったんですか? あるいはもう配ってないとか?」

「雨の日とか、季節によって、たとえばハロウィンの日だったりに、気分次第で出してます。とてもキレイに取っておいてくださって、ありがとうございます」

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醤油らーめん(味玉トッピング)がやってきました。まずはスープをひと口。

こ、これは……。すごい。

塩らーめんのスープは鶏全開のパンチのあるスープでした。ベースは同じなんでしょうけど、醤油らーめんのスープはこれとはまったく異なります。

もちろん鶏のダシはしっかりしています。けど、果てしなく優しい。気のせいか、うっすらと潮の香りも。かつおではない。トッピングされた海苔・ワカメ由来でもない。いりこ?

醤油のかえしは、ほんのわずかに角を残しています。まろやかではありますが、甘みは控えめ。"昔ながらのラーメン"。この言い方がぴったりきます。懐かしくホッとする味わい。いつまでも飲んでいたい。

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私はよくラーメンを自作します。だからわかるんです。この味はなかなか出せません。自分で作るとなると、どうしても押し出しが強くなる。強い味の方が作りやすいから。

もちろん同じものは作れない。けど、こういうラーメンを作ってみたい――そう思わせる極上のスープでした。

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