※追記:マスターのTABOさん(タボさん)は2024年1月19日早朝にお亡くなりになりました。ご冥福をお祈り致します。
※追記:2024年4月頃、TABOさんの知り合いが店を引き継ぎ246が再開しました。以下はTABOさん時代に書かれたものだということをご了承ください。追記以上
見た目が怪しげな店ってあるよな。え? そういう店にこそ飛び込んでみたくなる? じゃあ、この先を読んでみな。きっといいぜ。
学芸大学の十字街に「焼酎呑ミ処 2nd.(セカンド)」っていう焼酎バーあるだろ。その上にバーがあるんだよ。「246(にょろ)」っていうんだけど、知ってるか? 入口は「2nd.」のすぐ脇の路地を入ったところ。
だいたい9時ごろからやってるようなんだけど、適当らしいから、まあ、開いてたら行ってみろよ。階段を上るとあるからさ。ちなみに一階も店らしいんだけど、ここもいつやってんのかよくわかんねぇ。
※追記:新しくバーができたんだよ。「BAR VINE(ヴァイン)」。こっちもいいぜ。
二階は全フロアが店。だから意外と広い。オシャレなソファーとかもあってな。けど、そんなことよりケツ。お尻のケツな。店ん中は全部ケツ。ケツだらけ。女のケツだよ。当たり前じゃねぇか。誰が男のケツ見たいんだよ。ああ、見たいヤツもいるか。すまんすまん。
たとえば、これ。トリスの瓶で作ったケツ。本当は雰囲気があるから一枚目がいいんだけど、店ん中暗れぇからさ。見えねぇんだよ。仕方ないからフラッシュたいたバージョンも載せといた。
「トリスの瓶で作ったんだよ。本当は69本で作ろうと思ったんだけどな」
「70本になっちゃったとか?」
「いや、67本で諦めた。一ヶ月で作ろうと思ってさ、さすがに一日3本は無理だった」
頭おかしいよなw
「こんなの見せられて愚問ですが、お尻が好きなんですか?」
「女が好きなんだよ」
店主のTABO(たぼ)さんはアーティスト。尻をモチーフとした絵を描いてるんだよ。ライブペイントもやってて、パリのジャパン・エキスポにも行ったりしてるんだって。「初めてのヤツには見せてるんだよ。3分」そう言って、活動の様子をまとめたDVDを見せてくれた。デカい筆でガガガガガ!って尻を描くんだよ。かっけー。つうか、桑沢出身だぜ? ガチだよガチ。ぱねぇ。
「普通の紙には描けないですよね。あれは何に描いてるんですか?」
「段ボール紙みたいな分厚い紙。パリにはベニヤ売ってねぇんだよ」
一杯目はジャックのロック。TABOさんは1リットル入るデカいジョッキにちょびっと酒をついで飲んでる。じゃあ小さいのにしろよ!って思うんだけど、気持ちはわかるんだよなぁ。ある種の"足かせ"にしてんだよ。たぶん。こうしなきゃ止まんねぇから。重くすることで量が減り、ピッチが緩むんだよ。
「乾杯。おれTABO。名前は?」
「ひろぽんです」
「ああ、うちにもう一人、ひろぽんっているんだよ」
「ひろしって名前じゃないですか?」
「そうそう」
「僕もです(笑) なんで『246』なんですか?」
「昔、渋谷2-4-6で店やってたんだよ」
吸ってるのは「echo(エコー)」。オレと一緒。安いからなw
「echoですね」
「そう。一緒だと思ってた」
「安いですからね」
「そうそう。その前は何だった?」
「マイルドセブンも吸ったし、セッターも吸ったし、キャビンもキャメルも。グッとタバコが高くなった時、echoに変えました」
「オレはハイライトだったなぁ。echoは短けぇからよ。一服って感じがするよな。それにしても、よく入って来たな」
「ああ、ぜんぜん大丈夫ですよ。どこでも飛び込めます」
「すごいな。この辺だとどこ行く?」
「いろいろ行きますよ。十字街だとアオギリ(現呑家)もきんかもゴールデンも89もキャベツ亭も、下の2nd.も」
「よく行ってるなぁ」
「学大界隈だったら200軒近く行ってます」
「長いの?」
「2年くらいです」
「2年でか。すげぇな。オレなんてここ10年になるけど、行くの2軒くらいだぜ」
「ちなみにどこですか?」
「さいとう屋にたまにな」
「えー。僕もよく行きますよ。ボトル入れてます。学大で一番いい居酒屋がさいとう屋だと思ってます」
「そうかい。あいつはオレの弟のようなもんでな。前はウチにもよく来てたんだよ」
「ちょっと待って下さい。弟? だって、さいとう屋のマスターは確かごじゅう……」
「オレの二個下かな。オレは55」
「わかっ」
「そんだけ飲んでるんだったら、あの子知ってるかい? 面白い子がよく来るんだよ」
特徴を聞いてすぐわかったよ。
「あ、○○ちゃんですね。確かに、あっちこっちの店でよく一緒になりますよ」
「やっぱりな。あの子もよく飲んでるよな。面白い子でさ、いっつも走って帰るんだよ」
「走って?」
「ハグしようとしたらさ、バーって走ってくんだよ」
「いや、それは走ってるんじゃなくて、逃げてるんです(笑)」
「そうとも言うな(笑)」
「246」に行ったのはおととい。TABOさんとの会話は全部、一言一句違わず、全部書き起こせるぜ。なぜかって? あまりにも波長が合うから。あっちの言ってることがすべてスッと頭に入っちまうんだな。あまりにも似てて。
けどな。それはオレと似てるって話じゃねぇんだよ。オレにも似てるけど、酔いどれみんなに似てるんだよ。酔っ払いってこうなんだよな。だからお互いに気持ちが通じるんだよ。学大の酔っ払いはみんな「246」に行くのな。いずみんもそう、亮平もそう、あとは差し障りがあるかもしれねぇから書かないけど。
もうひとつ、オレとめちゃくちゃ似てることがあったんだよ。
「今は昨日の残り物を飲んでるって言ってましたけど、普段は何を飲んでるんですか?」
「一日一升って決めてるんだけどさ、最近は金宮のコーヒー割だな」
「僕も同じです。僕はファミマのパックのコーヒーと黒霧島ですが」
「甘党だな。ウチにもいるよ。ファミマのコーヒーで割るのが好きってヤツが。いっつも持って来るんだよ」
ちょっと待て。誰だ? 焼酎をファミマのコーヒーで割るとうまいってのはオレが発見したと勝手に思ってるんだがw いつもそれ飲んでるあそこで一緒になってる誰かか? おい、だったら勝手に広めるなよ!www
※追記:ファミリーマートが加糖のコーヒーのパック、販売やめちまったんだよ。むかつくなぁ。追記以上
「じゃあ一番好きなお酒はなんですか?」
「ラフロイグだな」
これもオレと同じだ。家ではペドロヒメネスのカスクを飲んでるぜ。西麻布にあったバー「ボウモア(PUB&SHOP BOWMORE)」の話も出たなぁ。懐かしい。
ラジカセって今は言わねぇか。なんて言うんだ? まあいいや。そういうのからはブルースが流れてんだよ。
「音楽はこれでいいかい?」
「ぜんぜん。音楽はからっきしで。まったくこだわりがないんです」
「オレと同じだな」
「けど、憧れはあるんですよ。ギター弾けるのとかって、めっちゃかっこよくないですか?」
「わかる。いいよなぁ。オレはクラリネットやりたいって思ってんだよ」
「なぜゆえw あ、わかった。どこかでクラリネットをかっこよく吹いてる人を見たんですね」
恥ずかしそうにTABOさんがうなずいたよw やっぱりなw
「そういや、提灯ありましたよね。いま見たらなかったですけど」
「壊れたんだよ。もともと捨ててあったのを拾ってきただけなんだけどな。沖縄そば屋の提灯で、『沖縄そば』って書いてあったから、バツで消しといたんだけどよ。たまに来るんだよ。沖縄そばないんですかって?」
「ははは(笑) じゃあ逆にもう誤解されなくていいですね」
ちょいと1、2杯のつもりだったのに、あまりにも楽しくて2時間半もいちまったよ。4杯飲んで3800円だったかな。会計をしたら、TABOさんは下まで来てくれた。普段、そんなことする人かい? よくわからんが。
「ひろぽん、いいヤツだな。面白かったよ」
「いえいえ、こちらこそ。めっちゃ楽しかったです」
「また来てよね」
「ええ、ぜひ」
TABOさんが手を出す。固く握り返す。
店内は暗くてガラクタで溢れてて、ケツだらけで、別に何か凝った酒があるわけでなし、店主は酔いどれでぶっきらぼうで。けど、なんか居心地がいいんだよな。ここでは何でも許されるから。だって、店主がこうなんだからさ。お前がそれなら、こっちもな。それでいいんだよ。いや、そうしてほしいんだよ。
かったりぃ挨拶や気遣いは無用。オレとお前と酒とケツ。それでいいじゃねぇか。年も職業もなにも、んなもんどうでもいいんだよ。そんなもんを振りかざすヤツは酒飲むなよ。めんどくせぇ。
で、最後まで読んだあんた。こんなので行く気になったかい? 面白そう? お前も相当好きだなw もし「246」で会ったらよろしくな。
――店の雰囲気に合わせた文体にしてみましたw
SHOP DATA
- 246(にょろ)
- 東京都目黒区鷹番2-20-4
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- 公式