坂利製麺所の手延葛そうめんは太目でコシの強い、舌触りが気持ちいいそうめんです~そうめんに葛を入れる意味、あるいはそうめんと地域 - 肝臓公司(かんぞうこうし)

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坂利製麺所の手延葛そうめんは太目でコシの強い、舌触りが気持ちいいそうめんです~そうめんに葛を入れる意味、あるいはそうめんと地域

吉野の葛を使った香り高いそうめん

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株式会社坂利製麺所の手延葛そうめん。

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こだわりや 三軒茶屋店で購入しました。492円/250g。一般的なそうめんの量・300gに換算すると590円。お高めです。

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当サイトではそうめんを5段階の星で評価しています。そんな中、例外の星6を獲得したそうめんが2つかありまして、その内のひとつが坂利の手延素麺。商品棚に坂利のそうめんを見つけ、小躍りしてしまいました。

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開封。小麦の甘い香りがとんでもなく強い。何度も何度も袋に鼻をつけて香りをかいでしまいました。

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少し太めなのが印象的。

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パッケージ裏面の「おいしい調理方法」がとても細かい。鍋の形状までw 手延べそうめんはとても繊細な食品です。手間暇をかけて作り上げたそうめんをベストな状態で食べてほしいという気持ちが伝わってきます。

ただ。

「投入後、再沸騰してから3分でゆで上がります」

申し訳ないけど、ここだけは守れねぇ。茹でる前からわかります。私にとってはこの茹で時間は絶対に長すぎる。タイマーを3分にセット、沸騰したお湯に入れ、2分、2分15秒、2分30秒と一本取り出して食べてみました。

やはり2分30秒で十分。すぐさまザルに移して流水で洗います。

しっかりとした弾力で気持ちがいい手延葛そうめん

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ハリのあるきれいな茹で上がり。まずはそのままひと口。

おおお、坂利の手延素麺とはまったく違う。

唇や舌にトゥルンと触る。噛むと歯を押し返すようなブルリンッとした弾力。

小豆島の太めの手延べそうめんにありがちなコシです。あるいは稲庭うどんのコシ。稲庭うどんって讃岐や関西の普通の手打ちうどんとはまったく違うコシがあるじゃないですか。あれです。稲庭うどんは手延べなので、太めの手延べそうめんは稲庭うどんと似たコシになることもよくあります。

乾麺状では小麦の香りが強かったのですが、茹でたそうめんの風味は比較的穏やかです。すっきりしていて透明感があります。

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星6を獲得した坂利の手延素麺には「こんなそうめんがあったのか!」と驚かされました。一方、この手延葛そうめんは「ああ、なるほど。このパターンか」と。これなら似たものが他にもある。おいしくはありますが、驚きはありませんでした。

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いいそうめんです。とてもおいしい。そして気持ちいいそうめんでもあります。ただ、私は細くてブチブチッとした強い歯切れのそうめんが好みなので、今回は星4。

太めのそうめんが好きな連れは手延葛そうめんを食べて星5と言ってました。小豆島の太めのそうめんや半田そうめん、大矢知素麺などが好きな方にとっては、間違いなく最上級のそうめんだと感じられると思います。

葛入りの意味

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特に奈良県の手延べそうめんに多いのですが、葛を使ったそうめんをよく目にします。

「なぜ葛を入れるの?」

葛を入れることによってコシが強くなる、舌触り・のど越しがよくなるなど、味・品質に変化をもたらすことができるのかもしれません。ただ、仮にそうだとしても動機としてはかなり小さいでしょう。

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手延葛そうめんの食品表示です。原材料名の欄には食塩の次に「本葛澱粉」とあります。詳細は省きますが、食塩よりも本葛澱粉のほうが含有量は少ないと思われます。いわゆる原材料として練り込まれているというよりも打ち粉的に使われているんじゃないでしょうか(添加物扱い)。

いずれにせよ、本葛は高価ですし、使われている量は相当に少ないはずで、本葛澱粉が品質に大きく影響を及ぼすとは到底思えません。ですから、品質のことを考えてというよりも、他商品との差別化・地域産業の活性化を狙ってのことじゃないかと推測します。

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坂利製麺所の本社住所は奈良県吉野郡東吉野村瀧野。まさに葛の一大産地です。実際、坂利製麺所も吉野本葛という商品を製造・販売しています(していました?)。葛餅も製造・販売しています。

ですから、全国的に名の知れた地元の名産品を使って、他社(あるいは自社)の商品と差別化しようという意図があるのだと思います。

また、これが人気を博してたくさん売れれば、そこに使われている吉野本葛も売れるということです(少量ながらもそうめんに含まれているわけですから)。ビジネスとしては一石二鳥でしょう。

あるいは吉野本葛・吉野葛(※)のPRになるかもしれません。そうすると自社のみならず近隣地域の産業活性化にもつながるかもしれません。

※吉野本葛・吉野葛は吉野葛製造事業協同組合による地域団体商標

地域活性化と手延べそうめん

実は坂利製麺所だけではなく、どんな地域でも似たようなことは試されています。

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たとえば有限会社植木農園の青じそ入 手延べ素麺。同社は地元(大分県大分市津守)の名産品を作りたいと大葉を育てていて、大葉を使った商品を数多く製造・販売しているのですが、このそうめんもその内のひとつです。

青じそ入 手延べ素麺は緑ですが、これはクチナシ色素によるものです。食べてみても青じその香りはほとんどしません。品質に作用するかどうかではなく、青じそを使っているという事実自体に意味があるということです。

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小豆島の手延べそうめん・島の光には手延オリーブ素麺という商品があります。オリーブの味はしません。小豆島の特産品であるオリーブを使っているということ自体に意味があるのです。

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五島の糸(ますだ製麺)には五島列島の特産物・椿油が使われています。ただ、なたね油と大豆油も使われています。品質上、油を3種も使う意味はほぼありません。なぜ、わざわざ椿油を使っているかというと、「五島列島は椿油も名産なんです。この手延べそうめんは、その名産品も使っています」と言いたいがためです。

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誤解しないでください。品質に影響がない、それによって劇的においしくなるわけじゃないということをネガティブに言っているわけではないんです。

少しでも地域に貢献したい、地域の名産を自社製品=そうめんでもアピールしたいという気持ちは素晴らしいことだと思います(そこに商売的下心が潜んでいても悪いことじゃない)。

坂利の手延素麺の記事でも詳しく書きましたが、坂利製麺所はそもそも過疎対策事業としてそうめんの製造を開始しました(昭和59年~)。手延べそうめん(など)を作ろうとすると雇用が生まれる。人が集まる。この地域に活気が出る、というわけです。

そうなるためにはビジネスとして成り立たなければいけません。手延葛そうめんにも、そうした願いが込められているのでしょう。

"過疎化対策としての手延べそうめん作り"という観点からもいろいろ語りたいところですが(三輪素麺、菊川素麺などなど)、あまりにも長くなり過ぎてしまいます。この辺で終わりにしておきましょう。

参考/てんりせいかつ Vol/19:母の想いを受け継ぎ地域とともにこれからも。

DATA
名称手延葛そうめん
原材料名小麦粉(国内製造)、食塩、本葛澱粉、ゴマ油
製造者株式会社坂利製麺所
評価★★★★☆