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揖保乃糸(兵庫県手延素麺協同組合)は恐るべきそうめん。その商品ジャンルで最強にうまいものがどこでも売られているというのは驚愕すべきことです~揖保乃糸を通して見るそうめんの基礎知識

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そうめん4大生産地のひとつ播州(※)。兵庫県の揖保川周辺域には多数の手延べそうめん生産者が点在しています。そして、その多くを束ねているのが兵庫県手延素麺協同組合。言わずと知れた揖保乃糸の"メーカー"です。

※播州、島原、小豆島、三輪がそうめん4大産地と言われます。ただ、播州の手延べそうめんはそのほとんどが揖保乃糸です

揖保乃糸の生産システム

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兵庫県手延素麺協同「組合」という言葉からもわかる通り、揖保乃糸はひとつの工場で作られているわけではありません。

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約400軒の生産者が同組合に所属していて、それぞれが厳格な同一規格に則って揖保乃糸を作っています。そして、各製麺所で作られた揖保乃糸が同組合の大きな倉庫に集められ保管され、検査され、そして出荷されていきます。

機械麺そうめんと手延べそうめん

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パッケージ裏の品質表示には「手延べそうめん」と書かれていますよね。これがとても重要です。

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そうめん(広義)には2種あります。

  • そうめん(狭義)
  • 手延べそうめん

そうめん(狭義)は機械麺そうめんとも言います。生地を板状に薄く延ばし、これを細く麺状に裁断します。

手延べそうめんは生地をよりをかけながらどんどん細く延ばしていきます。

もともと(奈良時代以降)は手延べそうめんしかありませんでした。ところが、明治になって製麺機が登場し、うどんや中華麺と同じように裁断してそうめんが作られるようになりました。これが機械麺そうめん。

機械麺そうめんは基本的にはおいしくありません。まずいものもたくさんあります。手延べそうめんは他の麺にはない独特なコシがあり、基本的にはどれもおいしいです。

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このような欄に「そうめん」「干しめん」と書かれていれば機械麺です。「手延べそうめん」「手延べ干しめん」と書かれていれば手延べそうめんです。

揖保乃糸は播州素麺ではありません

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ところで、「揖保乃糸は播州素麺」と言われるのを散見します。これは間違いです。「播州素麺」(すべて漢字)は機械麺メーカーが中心となって組織されている兵庫県乾麺協同組合の登録商標です。ですから、播州素麺という名前のついた商品はすべて機械麺です。

一方、揖保乃糸は兵庫県手延素麺協同組合の登録商標で手延べそうめんです。確かに揖保乃糸は播州のそうめん/播州の手延べそうめんではありますが、播州素麺ではないということです。

また、「島原素麺より揖保乃糸のほうがおいしい」といったセリフも大いに誤解を含んでいます。島原素麺(島原そうめん)は商標ではありませんが、基本的には機械麺です(手延べそうめんであれば、「島原手延べそうめん」などと表記されているはず)。好みはあるでしょうけど、手延べである揖保乃糸よりおいしい機械麺たる島原素麺はありません(少なくとも私はそんなものに出会ったことはない)。

さらに、島原素麺(あるいは島原手延べそうめん)は単なる総称です。いち商品と比べるというのもおかしな話です。「〇〇製麺所の島原手延べそうめんのほうが揖保乃糸よりおいしい」ということならわかりますが。

話を先に進めましょう。

揖保乃糸の束紙の色とグレード

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パッケージ裏面の右下に管理番号が振られています。トレーサビリティも有していて、生産者が違えど同じそうめんになるよう、それはそれはしっかりと組織・管理され作られているのが揖保乃糸。このシステムが日本最強のそうめんを生み出しています。

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細くてピンと張りのある麺。香りは柔らかく豊か。

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細くはありますが、こんなにもしなります。よくしなる手延べそうめんはおいしいというのが私の経験則。

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揖保乃糸はそうめんを束ねている束紙によってグレードがわかります。一番流通していて、一般的によく知られているのが、この赤い束紙の上級品。レギュラークラスです。

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黒は特級品。最上位クラス。

ただ、詳細は別の機会に譲りますが、レギュラーの上級で十分です。普段食べるなら、むしろ黒よりも赤をお勧めします。

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茹で時間は1分半~2分と表記されています。けど、1分半でも少し長いかもしれません。私はいつも1分強で上げています。ただ、温度、茹でる量、お湯の量によって最適な茹で時間は異なります。当然、好みもあるでしょう。好みの時間茹でて下さい。

最高峰がスタンダード

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細さが醸し出すのどごし、プチプチとした歯切れ、滑らかな舌触り、しっかりとした小麦の風味。「やっぱり」と呟かざるを得ません。

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考えてみれば揖保乃糸はおそるべき商品です。私は200種以上のそうめんを食べてきました。揖保乃糸に比肩するそうめんもありましたし、日本中を探せばまだあるでしょう。もちろん揖保乃糸よりおいしい素麵もたくさんあります。しかし……。

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スーパーならほぼ100%どこにでも置いています。250円~350円と手頃な価格です。日本人なら誰もが知っていて、誰もが食したことがあります。そんな商品がそのジャンルにおいて最高峰(のひとつ)という事実。他ジャンルでこんなことはまずありません。

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「いつも揖保乃糸だし、たまには他のものを食べてみようかな」

スーパーに陳列されている複数のそうめんを前に、こんなことを思わない方が賢明です。おそらく、目の前のそうめんの中でもっともおいしいのが揖保乃糸でしょう。よっぽど他と食べ比べたいというのでなければ、迷わず揖保乃糸を選んで下さい。これが正しいそうめんの選び方です。

もし、万が一、他のそうめんを選んだとします。そして食べます。あなたはこう呟くはずです。

「そうめんはやっぱり揖保乃糸だなぁ」

と。

最高峰をスタンダードとして知ってしまった私たち日本人。幸か不幸か。

DATA
名称揖保乃糸 上級品
原材料名小麦粉、食塩、食用植物油
製造者兵庫県手延素麺協同組合
評価★★★★★