学芸大学駅から徒歩1分。十字街の入口にBAR Hellish APT(ヘリッシュアパートメント)というバーがあります。2020年9月11日にオープンしました。
hell=地獄
hellish=地獄の、地獄のような
APT=apartment。集合住宅の一区画・一部屋
Hellish APT=地獄の一室・地獄部屋
けど、扉を開けると急な階段。急な階段の先にはだいたい天国があります。さいとう屋しかり、浮雲しかり、Fin./PRETTY/Sidewayしかり。はてさて、この階段はいかに。
カウンター8席ほど、奥には小さなテーブル席。
ダーツ、卓球台もあります。とにかく情報量が多い写真になっていると思うのですが、徐々に、追々。
店主は佐藤剣(つるぎ)君。昼はIT系の仕事をやっています。
「ひろぽんさんですよね。ブログいつも拝見してます。プレミアワンでお見かけしました」
「プレミアワンということはベロベロでしたよね。すみませんw」
「ごりちかのオープンでも一緒でしたよ。登山家の女性がいた日っす」
「あー。若い子たちがいっぱいやって来た、あの中でしたか」
「客として通ってたら気に入ってくれて、ウチで働かないかと。で、ごりちかでも働いていました」
アメリカに5年。帰ってきて、学芸大学のシェアハウスに長く住んで、自分で店を持つ夢をかなえるべく、物件を探すこと約2年。ようやくここに出会いました。
「物件を見たその日に申し込みました」
「いや、ここはいいですよ。もし仮にバーをやるとしたら、僕も絶対ここを選んでました」
「イメージはニューヨークっす。いい大工さんを友達から紹介してもらって、僕もずっと手伝って。壁を塗ったり、DIYで。階段には手伝ってくれた友達25人のサインも入ってます」
印象的なのはこの絵。飾られているわけではありません。壁に直接、描かれています。
「旅行先のメルボルンでたまたま知り合ったグラフィティアーティストがいて、『いつかバーを開いたら描いてくれ』って約束してたんです。そして、実際にバーを開くことになって、兵庫からわざわざ描きに来てくれました。ちょいエロな感じで、ソファーで女の子がジーンズを脱いでるところをお願いしたんです」
階段のグラフィティもカウンター下のグラフィティもアーティスト、BG Worldの手によるもの。なるほど確かにニューヨークって雰囲気。
カウンター上にはフルーツやコーヒーが漬け込まれた酒の瓶がずらり。
「市販のリキュールやお茶を使いたくなくて、自分で漬けることにしたんです。基本的には瓶に値段のシールが貼られているものが飲めるものです」
900ではなく9.00としてるのもアメリカっぽいねw
ラムにドライパイナップルを漬けたお酒の紅茶割り。すっきりとした甘さ。しっかりフルーツの味が出ています。
「氷を細長く削ってます」
あー。こういうことか。こうしてるのは初めて見た。面白いな。のこぎりで角氷をこの形に削っているのだとか。氷は下馬の札場氷室。
「Songbirdのみずきさんに紹介してもらったっす」
いろいろ飲み歩いていたりするから顔が広いんだろうな。
「ここも人と人がつながるような場所になればいいなぁと。実際、工事中も手伝ってくれてた友達のリペア屋と大工さんがつながったりしましたし」
目の前でうまそうにビールを飲んでたので、釣られて二杯目はアメリカのビール・パブストブルーリボン(Pabst Blue Ribbon)。
「アメリカでは金のないヤツが飲むビールって言われてて。オシャレなデザインとしても有名なんです。フタがトランプになってたり。味は大したことないんですけどねw これ置いてる店、ほとんどないんじゃないかなぁ」
アメリカでトップクラスの販売数を誇る、アメリカンカルチャーを象徴するビール。いやいや、なかなかおいしいじゃないですか。思っていたよりもしっかりとしたコクがあります。
「ビアポンを流行らせたいんです。カップにピンポン玉を入れていく飲みゲームですね」
ダーツがあったり、卓球台があったり、テーブルサッカーゲームがあったり、トランプがあったり。これだけいろいろあると、とっ散らかりそうなのに、ちゃんとまとまっています。本人のセンスというか、しっかりとした芯があるからでしょう。OTTOでも似たようなことを感じるなぁ。
三杯目は凍頂烏龍茶割り。すっきりとしていて飲みやすい。
天井をぶち抜いて、屋根がむき出し。白い梁が立派だなぁ。
「フードは乾き物があって、ポップコーンがあって……」
「ホットドッグをやりたいんですよねぇ。まだ商品開発ができてないんですが」
「アメリカっぽくていいね」
オシャレでかわいい男の子がやって来ました。へー、エンポリオ、AWORKS、ごりちかでも働いてたことがあるんだ。年下の子と話してるツルギ君は、いいお兄ちゃんって感じ。
ツルギ君が漬け瓶のフタをこぶしでコンコン。
「On the house。店からどうぞ、という意味です」
「そうなんだ。ありがとう」
先ほどちょっと試飲させてもらっておいしかった、ブルーベリーのウィスキー漬け炭酸割り。めっちゃうまい。この味好き。
「ウィスキーを甘いもので割るのも大好きで。ラスティ・ネイルとかゴッドファーザーとか」
「杏仁も漬けてるっす。自家製アマレット。こんなに漬けてるバー、他にないんじゃないですかねぇ」
「原価がねw どんどん瓶が増えていくんだろうなぁ」
「壁に棚を作る予定っす」
「棚に瓶がズラーっと並んでたら壮観だ」
「ニューヨークにHell's Kitchenというエリアがあって、それがかっこいいので、hell'sなんとかって名前にしようと思ったんですが、hellというとメタルっぽいじゃないですかw だから、オシャレに聞こえるhellishにしました。オープン日はアメリカを象徴する日、9月11日にしたかったんです」
それぞれにきっちりと理由がある。ストーリーがある。アメリカ愛・こだわりってことなんでしょうけど、ITっぽくも感じなくはなくw そして、こういう語りは往々にして聞いてて面倒だったりもするのですが、それが一切ありません。なんだろな。熱い想いがあるのはもちろんなんですが、その一方で、どこかクールにも見える。だから話が情報としてすっと入って来る。ウザくならない。
つまりは人柄ってことか。あるいは昼職を持っているという、いい意味での余裕もそう感じさせるのかもしれません。
「トイレも見て行ってください。トイレもこだわりました」
トイレもエアコンも換気扇も、あえて年季が入っている風にデザイン。真鍮のスイッチも雰囲気があります。
ふぅ、それにしても情報量が多い。僕のことをご存じだから、あえていろいろ説明してくれてたってのもあるんだろうけどw
BAR Hellish APTを出て二軒目でのこと。
「いま、ツルギ君のとこ行ってきたよ」
「どうでした?」
「よかったよ」
「ありがとうございます」
と、ツルギ君のシェアハウス時代のシェアメイト、マリコ。マリコもBAR Hellish APTを手伝うのだとか。つーか、おい、そんな仲のいいヤツがバー出すってんなら、教えておけよ!w
翌日。
「昨日、ツルギ君のとこ行ってきたよ」
「私も昨日行ったよ。どうだった?」
「じゃあ俺のあとだったんだ。オシャレでいいね」
「自分ちもめっちゃオシャレなんだって。マリコが言ってた」
「そうなんだ」
「女の子ウケしそうだよねー」
と、ももちゃん。他にも「よかった」という女の子が一人。早くも女の子から軒並み高評価。
その後、棚もできました。
ここでしか飲めないお酒だらけの、ちょっと変わったオシャレなバー、BAR Hellish APT。急な階段を上った先はフルーツ漬け酒の天国でした。ただ、飲みやすいので、スイスイいっちゃいます。度数がそれなりにあるからキケンです。帰りの階段で地獄行きにならないようにご注意をw
SHOP DATA
- BAR Hellish APT(ヘリッシュアパートメント)
- 東京都目黒区鷹番2-20-14 2F
- -