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酒場 浮雲(学芸大学)は和洋、もつ煮と何でもあるふわふわとした白い雲のようなオシャレな居酒屋で、ふわふわとした気分に浸れます。というのは隠れ蓑。浮雲ではぐらかされているのですよ。本当は。

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急な階段の先にはいい店があります。立地がいいとは言えない場所でもやれるということは、それだけ実力がある、人気があるということだから。

経験的に見てもそうです。急な階段ですぐに思い出すのは、新宿のレンピッカ。学芸大学なら、さいとう屋天ぷら カブBAR PRETTYなどなど。どこも素晴らしいお店です。

さて、どんな店だろう。そんなわくわくを覚えつつ、今回も急な階段を上ってみました。

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学芸大学駅から徒歩1分。東口商店街沿いの亀屋万年堂の角を曲がってすぐ右手、十字街の入口に、いやが応にも期待を高めさせる急な階段があります。その先にあるのは「酒場 浮雲」。

店主は有川毅さん。博多もつ鍋 うみの(碑文谷)の元店長です。9年間うみのに勤め、2017年3月に閉店した後、有名なピッツェリア・La TRIPLETTA(武蔵小山)で働きながら新店オープンを目指し、2018年12月27日に浮雲をオープンさせました。

※2022年7月に法人化。社名は株式会社Neue tanz(ノイエタンツ)

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店内は白と木。清潔感のあるオシャレな空間は居酒屋というよりカフェのような雰囲気です。中目黒のchano-maを彷彿とさせます。さらに上の階、3階には10名ほど入れる個室もあります。

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和、洋、そして中華っぽく思えるようなものと、いろいろあります。値段設定が少し高めに感じるのですが、同時にこうも思うのです。

チャージ・お通し代の類がありません。仮にお通し代が500円で、5品頼んだとして、それぞれが100円安かったとすると、結局、現状と同じ値段になります。だったら、食べたくもないお通しなんかなくして、100円ずつ値段を高く設定してもらった方がいいな、と。もちろん、それに見合うクオリティが各料理に求められるわけですが。

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生レモンサワー(600円)はレモン感がすごい。すっぱくておいしい。

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最初にやって来たのは、おまかせ前菜3種盛り。

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おっとっと。一瞬、ひるみます。

3種と掲げておいて4種出すというのは飲食店のセオリー。けど、さすがに5種にするというのはあまり見かけません。

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特製ポテトサラダ イクラのせ。私はイクラの乗ったポテトサラダが好きではありません。見栄えがいいだけで、こうする必要性を特に感じないから。だったら別々にくれと。けど、浮雲のポテトサラダは違いました。

考えてみれば、ポテトサラダに半熟卵を乗せたりするわけで、それと同じことなんですよね。鶏卵が魚卵に変わったというだけ。しかも、実はイクラと鶏卵の黄身は味が似ています。だとするなら、卵のまろやかさを加えてちょうどよくなる塩梅にすればいい。

浮雲はそこがちゃんとできている。だからポテトサラダにイクラがよく合っています。ついでにイクラのプチプチとした食感もいい。イクラの乗ったポテトサラダで、見栄え以外にイクラの存在意義を感じさせてくれたのはこれが初めて。

※イクラなしにもできるそう

フルーツトマトのナムルはバルサミコのコクの向こう側にほんの少し香ばしさを感じさせます。ホタルイカの新じゃがバターはふくよか。生しらすのブルスケッタはねっとり濃厚。強めの料理が続く中、日向夏の白和えがさっぱり。全体のバランスもいい。

ちなみに、おまかせ前菜3種盛りは1000円~。会計から逆算すると、これは1200円くらいでしょう。

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宮崎県霧島鶏のもも肉唐揚げ(600円)。宮崎県は店主の出身地です。霧島鶏は学芸大学の焼き鳥屋でもよく見かけるポピュラーな銘柄鶏。

すごいな。もも肉を丸めて揚げています。なぜこれがすごいかというと、単に丸めただけでは粉をつける際、あるいは揚げている間に広がってしまうからです。どうしてるんだろう。

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ん? 煮こごりのようなジュレ状のコラーゲンだ。

見ても聞いてもいませんから、実際にどうしているのかはわかりません。いずれにせよ、かなりの手間をかけなければ、この唐揚げはできないでしょう。単にもも肉をカットして揚げたというだけの料理ではない。

甘味もしっかりあってジューシー。そして衣はパリッ。おいしくも奥深く、そして楽しい一品です。

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国産牛もつ煮込み しょうゆ(700円)。もつ煮込みというよりも、まさしくもつ鍋です。もつ鍋に換算すると1/2人前くらいはあるでしょうか。かなりのボリューム。

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もつの甘味、うまみがすごい。そして、火の通し加減にハッとさせられます。これ以上煮てしまうと、プルプルの脂が過度に落ちたり縮んだりするだけ。ここで止めておくべきなんだよなぁ。私たちは普段、もつ鍋で火を通し過ぎているということを、9年という経験者の仕事から教えられます。

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あらごし桃サワー(700円)。私が一番好きな果物は桃。レモン同様、これも桃感がハンパない。よくないね。ほんとよくない。一気に飲み干してしまうじゃないか。

〆て4110円。いやぁ、お腹いっぱい。二軒目にラーメン屋でも寄ればいいかなと思っていたのですが、その必要はありませんでした。

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「今日もふわふわお待ちしておりますー」

浮雲のインスタグラムの最後に添えられている一文です。「ふわふわと軽やかなスタンスで和洋何でも取り揃えています」という意味なのでしょう。

「ふわふわどうぞー」

これもインスタグラムでよく添えられている一文。「ふわふわとリラックスして気軽にお越し下さい」という意味なのでしょう。

和洋何でもある、ふわふわと浮かぶ真っ白い雲のようなオシャレ居酒屋・浮雲で、ふわふわと心地のいい時間をぜひお過ごし下さい。

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なーんて、ひねくれ者の俺が〆るかよw

鶏の唐揚げの手のかけ方、イクラと合うポテトサラダの塩梅、もつの火の通し具合――どれだけ緻密に計算された料理か、どれだけ手をかけた料理かは見ればわかる。食べればわかる。ふわふわなんかしていない。

和洋何でもありがふわふわ? そうかな。しっかりとした戦略なり哲学なりが自分の中で確立されていないと、何でもありはできません。本当にふわふわと何でもやっていたら、おそらく業績はふらふら。ふわふわしていたら、何でもありなんてできっこない。

私には浮雲がふわふわしているようには見えないし、鋭く攻めてくる手の込んだ料理の数々に私はふわふわとしていられませんでした。

ただ、私としてはそのほうがいいんです。本当に単なるふわふわでオシャレな店だったら、それこそ居心地が悪いw あーやだやだ。腕もセンスも何もないくせに、ふわっと雰囲気で誤魔化すような店は。大っ嫌い。

その点、浮雲は逆なんですよ。鋭く砥がれた刃を客に気付かせないために、緊張感を抱かせないために、客にふわふわしていてもらうために、オシャレな雰囲気ではぐらかす。ふわふわしているフリをして煙に巻く。

浮雲のようにふわふわとは建前。実は浮雲は隠れ蓑。

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と、私は感じたというだけのこと。こんなひねくれた記事のことは気にせず、浮雲の料理・雰囲気をふわふわと楽しんで下さい。それでいいのです。唐揚げの作り方なんて考える必要はないし、

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ましてや、実際に作って確かめる必要なんてまったくありませんw

けど、これで改めて気付かされるわけですよ。どれほど浮雲がすごいかということに。そして自分の才能のなさに。やっぱりふわふわしてらんねーよw

余計なことをしたり、考えたりせず、ふわふわと楽しんでおけばいいものを。ったく。

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ああ、最後にもうひとつだけ言っておかなきゃいけないや。

オープンしたのは2018年12月。訪れたのは2019年5月。なぜ、半年待ったか。それは何人かの人に浮雲へ行くことを止められていたから。オープン直後のバタバタしている状況で判断しないでくれ、落ち着いた頃合いに見て書いてくれといったニュアンスで。ちょっと高く感じるかもしれないけど、おいしいから!とも念を押されましたw

こうまで言われたら待つしかない。じれながら半年待ったわけですが、これでわかったことは浮雲が、店主がいかに愛されているかということ。今回、店主とは何も話さなかったので、どんな人なのかはわかりませんでしたが、それだけ愛されている人がやっている店だということだけ、付け加えておきます。

はぁ、浮雲の階段より長ぇ記事になっちまったな。読むの疲れた? じゃあ浮雲で一杯やってくか。素直にふわふわとねw

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