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OTTO/オットー(学芸大学・祐天寺)は個性的で楽しい店主・中村昭三さんがやっている料理もおいしいバー。おしゃれで居心地がよく、一度行ったら誰かに話したくなり、誰かを連れて行きたくなります

吸入~料理もおいしいオシャレなバー

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学芸大学駅、祐天寺駅から徒歩約12分。中央中通り(旧区役所通り)にOTTO(オットー)というお店があります。定食屋・三河屋の跡地で、2018年6月にオープンしました。

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OTTOはノーチャージのバーです。焼酎からウイスキー、ワインまで幅広くお酒が揃っています。料理もおいしくて、定番がありつつも、「こんな感じで」と言えばその時ある食材で何でも作ってもらえるようです。

カウンターメインで4人掛けテーブルがひとつ。オシャレな雰囲気。店主・中村昭三さんも個性的で面白く、とにかく楽しい時間が過ごせます。

と、最初に店の基本データを吸い込んでおいて下さい。ここからたっぷりと語らなくてはいけませんので。

圧縮~OTTOの軌跡とイイコ

OTTOの存在は内装を工事している段階から知っていました。いや、それどころか15年前から知っています。

「このあと3人になると思うんですが」

「もしかしたらテーブルに移って頂くことになるかもしれませんけど」

「はい、ぜんぜん。ここは初めてですが、代官山というか恵比寿というかに2、3度うかがったことがあるんです」

「アクビですか?」

「いえ、OTTOです。もう15年くらい前かなぁ。そのあとイイコですよね。横山さんとはどういうつながりだったんですか?」

「お客さんだったんです。で、店を閉めることになった際、店長をやらないかと」

「そうでしたか。それにしても、なぜここに?」

「祐天寺に住んでいたことがあって、三河屋にも来たことがあったんですが、その三河屋が空いたので」

「なるほど。この界隈にゆかりがあったんですね」

随分と昔のことなので記憶が曖昧です。そして詳細にお話をうかがったわけでもないので、以下は正確性に欠く内容になるかもしれません。

もう15年ほど前のことだと思います。当時、私は恵比寿界隈に住んでいました。恵比寿でもとにかくよく飲み歩いていたのですが、ある夜、妖しいお店を見つけます。恵比寿西の五叉路から代官山方面へ上って行く丘の頂上。マンション一階の駐車場部分に明かりがポツンと灯っていました。看板には「OTTO」。狭くて暗い、なんだか面白いバーだったという記憶しか残っていませんが、ヘンテコな場所に佇むそのバーは文字通り隠れ家といった趣きでした。

マスターの中村昭三さんはすぐ近く(線路を越えた先、代官山アドレスの坂下)に家庭料理ラウンジ アクビというお店も出店(2006年頃~2009年1月)。OTTOはマンション建て替えのため、2008年2月に閉店しました。

話は少し変わり、1997年、恵比寿駅の線路沿いの坂の途中に201号室という和食系のお店ができました。マンションの201号室だったから201号室。運営は横山貴子さんが代表を務める株式会社イイコ。祐天寺のスーソマヤジフ、麻布十番のアパッペマヤジフ(元ナポレオンフィッシュ)、渋谷の月世界、恵比寿のClub 小羊も同社が運営していて(2020年8月現在)、どこも大人気店です。

2000年(?)、201号室は恵比寿大飯店というお店にリニューアルしますが、3ヶ月間しか続きませんでした(201号室は恵比寿西へ移転して続201号室というおでん屋になり、2005年頃にClub 子羊となります)。そして従来より店舗デザインなどを手掛けていた、横山さんの友人でもあった中村昭三さんの名前にちなみ、同店は中村昭三(中華)となります。

中村昭三はその後、リニューアルを繰り返し、店名も中村圭太(沖縄料理)、中村玄(2006年のリニューアル当初はコラーゲン鍋。2011年より麻辣香鍋)となりました。そして2008年?2009年?、OTTOを閉めた中村昭三さんが同店の店長として招聘されます。なお、麻辣香鍋を強く推し続けていたのも中村昭三さんだそう。

ということを知ったのは後年のこと。上記の会話はこんなことが前提で交わされたものです。

そんな経緯がありまして、あのOTTOが10年という歳月を経て学芸大学に甦るとわかり、そりゃもうね。驚きました。

なお、カウンターで私の隣に座り、混み合いだして店を手伝わされているのが中村昭三さんの次男・中村玄君。長男・中村圭太君はダブルダッチの世界チャンピオン。そんな余談も付け加えておきましょう。

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奥から天ぷらかぶの平田君、かぶの元スタッフ・大ちゃん、木とのいずみん
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※2018年10月20日追記:2度目の訪問で、いくつかの驚くべき事実を知りました。

なんと、中村昭三さんはもともと聖林公司だった! ハリウッドランチマーケットです! だからこんなにオシャレなんですね。そして、そのテイストが私の好きな感じだというのも合点がいきました。いやビックリ。ちなみに肝臓公司の「公司」は聖林公司をマネてつけました。それくらい好きなんですw

また、恵比寿のOTTO時代、201号室だけではなくいろいろなお店のデザインにも携わっていました。その中でも一番驚いたのは恵比寿の喫茶 銀座! ミラーボールが吊り下がっていたりする摩訶不思議な雰囲気で、ドラマなどの撮影でもよく使われています。これを手がけたのも中村昭三さんだったのです(2002年?のリニューアル時。今の礎となったデザイン)。まじビックリ。

結局、中村昭三さんが店長になる以前から、店名に名前を"貸して"いたといった感じだったそうですw 追記以上

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さて、OTTOや中村昭三が辿って来た15年の歴史をギュッと圧縮してまとめたところで、約束をしていた二人、天ぷら カブの平田君、天ぷら カブや木とのデザインを手がけたMさんがやって来ました。ちょっと話をしたいと呼び出されていたのです。

※偶然なのか狙ってなのか、201号室は移転後もマンションの201号室でした

※業態を変えることを厭わない、人(店長や料理人)によって店を変えるというのがイイコ(横山さん)の特徴であり特長

燃焼~OTTOの濃密な酒と肴とインテリア

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カウンターからテーブル席に移動。二人、特にMさんはOTTOの大常連なので、Mさんとマスターからお店のことについて、いろいろ話をうかがいました。

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オープン直前?直後?に店内をのぞき撮影w

私もその作業の一端を見ていたわけですが、中村昭三さん自身が定食屋・三河屋のあった物件をスケルトンにして、内装もすべて手がけたそう。

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器や灰皿もすべてお手製。東郷神社(原宿)内にある日本陶芸倶楽部で陶芸を学び作ったのだとか。

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この箸置きも自作なんですが、

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裏を返すとおみくじになっています。私は大凶でした。大凶が一番いいとのことw

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釘を打ってレタリングした看板、縄のれん、カウンターに配されたアームライト、少し歪んで斜めにしないとちゃんとかからないレコードプレイヤー、自作の皿類、壁、カウンター、テーブル、椅子、どれもがおしゃれ。しかも、とってつけたような、飾るがためのおしゃれじゃない。おしゃれに見せかけようとしているまがいものじゃない。その人の内面からおのずと沸き上がっているおしゃれ。その人のセンスが表出しているとしっかり感じ取れるおしゃれ。ニセモノか本物かは見りゃ一発でわかる。

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オリジナルブレンドのウィスキーを使ったハイボール、さつま白波の甕仕込み、常連さんのマネをしてオレンジ入りのジントニック、ロンサカパのロックはいつも通りノーステア、再び戻りたくなるハイボール。どの酒も濃いw もちろんうまい。

時にツッコみ、時にフォローし、客席に潤滑油を振りまく店主に巻きこまれるようにして、初対面の客同士の会話も盛り上がり、酒が進んで場が沸騰。入店時はまったりだった店内はヒートアップしていきます。

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タコ・きゅうり・アボカドのサラダ、カレー(ライス少なめ)、「納豆食べたい」で出てきた納豆と卵の炒めもの、野沢菜とあさりの佃煮。

「このキイチロウカレー(お父さんの名前だったかな?)は家のカレーって感じでいいんですよ。あと、愛子うどん(後述)もおいしいんです」(Mさん)

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再訪した際、隣で平田君が頼んだ「愛子うどん」を撮影。詳細後述

いい料理人は飾らない。おいしい料理は飾る必要がない。

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店主・中村昭三さんも飾りません。誰でも何でも受け入れるような"優しい"人じゃない。ハッキリ物を言います。

「ここは私の店なんで」

もちろんいい人です。けど、"私の店"を台無しにするような輩に容赦はしません。サクッと出されると思います。ただ、厳しいというわけじゃない。店の空気を感じて、他の客に迷惑をかけない、そんなのは当たり前のことですよね。まあ、長年客商売をやっていると、その当たり前ができない人も多くて、時に店が被害を被って、うんざりすることもたくさんあるんだろうなぁ。

どの店でもそうですが、エンジンブロー、オーバーヒートにはご注意を。自戒も込めてw

排気~人と人が交わり結びつくオットーサイクル

OTTOはイタリア語では数字の8、古高ドイツ語では財産という意味。末広がりの8で縁起がいいからOTTO? いや、どうだろう。もしかしたら4ストローク機関を発明したドイツ人、ニコラウス・オットー(Nikolaus August Otto)に由来するのかもなぁ。聞こうと思ってて忘れてた。

※追記:後日、聞いたところ、たまたま見ていた家具のカタログにオットマン(ottoman:足を乗せるためのソファー)が載っていて、その言葉がなんかいいと感じてOTTOにしたのだそうw 追記以上

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席が埋まったためカウンター内に立たされてる平田龍二(手前)とみずからも積極的に楽しむ中村昭三さん(メガネ)

立ちが出るほど大盛況でした。私はここでひとつ気付きます。2人連れ、3人連れが多いのですが、すべての組において、誰かが誰かを連れて来ていたのです。かく言う私も、ある意味、連れられて来たようなもの。

酒、料理、インテリア、雰囲気、店主。あらゆる要素がそれぞれ濃厚でフックがある。引っかかるから、それについて誰かに語りたくなる。そして誰かを連れて来たくなる。

いい店は人が人を呼ぶんですね。店主が客を惹きつける。その客は他の客を連れてやって来る。連れて来られた客は違う客を連れてまたやって来る。常連が多くはあるけど、常連はただ留まるのではなく、新しい空気を呼び込み、結果、店は停滞することなく活気に溢れ、走り続ける。まるで4サイクルエンジンのように。

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いつの間にか客は私たち三人だけ。時計を見やると3:30でした。6時間も飲んでたってことか。一応、閉店時間です。味噌汁が出てきたのは"ホタルの光"的ニュアンス?w けど、二人は帰る素振りを一切見せません。元気だw これ以上は翌日の誕生日会に響く。二人とマスターに挨拶をして店を出ました。

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まったりな優しさに癒されるというのとは違う、不思議な心地よさのある賑やかなバー・OTTO(オットー)。普通なら「ぜひ一度」とかなんとか言って〆るところですが、ここではあえて言わない。そんなこと言わずとも、オットーサイクルは回り続ける。

追記のアイドリングは愛子うどん

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2019年に入ってからランチも始まりました。メニューはひとつ。汁なし塩豚骨うどん「愛子うどん」(800円)。

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OTTOには幾度となく来ていますが、ランチで来たのはこれが初めて。2019年5月12日。

「メニューはひとつだけですか?」

「はい」

「じゃあ特に注文することもないのか。ちょっと前にあるバーで、うどん屋ができたんですか?って聞かれて、いやいやOTTOというバーだよ、とw」

「あははは」

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実家・鹿児島県のお母さま(愛子さん)が作っていた骨付きの豚肉(スペアリブのような)を煮込んだ塩豚骨。これを再現して、うどんに乗せたのが愛子うどんです。ですから、豚骨とありますが、豚骨ラーメンのようなものではありません。汁なしです。

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ホロホロになるまで煮込まれた塩豚骨と鶏胸肉、キャベツ、さつま揚げが主な具材。さっぱりしつつも、なんだか妙に奥深い。ゆずコショウとレモン、胡椒がいいアクセントとなり、箸が止まりません。

「もしよければこちらもどうぞ」

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半分かじってしまったおにぎり。丸美屋のふりかけが数種あるので、のりたまをかけました。懐かしい。

このおにぎりは誰にでもついてくるというわけでもなさそう。どういうシステムなんだろう。ま、中村さんの気分かな。もし付いてこなくても文句を言わないで下さいねw

日曜日の昼過ぎ。うどんとおにぎりを食べ終え、しばし世間話。ああ、そう言えば。

「表の『8+8』ってどういう意味なんですか?」

「16食限定なので。OTTOだから8+8にw」

「なるほどw」

土日は休むこともあるかもですが、基本的には毎日やっているのだそう。

「そうだよなぁ。この辺りでランチとなると、平和軒と大むらくらいですしねぇ」

「大むらはタバコが吸えなくなったから、こっちがありがたがられてますw あと、セントラルマンションの一階の……」

「プチですねw」

はぁ、やっぱなんだか落ち着くなぁ。不思議な人だなぁ。面白いなぁ。いいアイドリング。さ、出かけるか。

「行ってらっしゃい」

「夜また来ます」

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表のオブジェがひとつ増えてました。

「ハーイ!いらっしゃい」

これが本当のオシャレ。なぜこれがオシャレかって? わからい人はわからなくていい。わかる人だけクスッとなればいい。というオシャレ。ここにはマスター・中村昭三さんの人柄、センスが如実に表れてます。で、何のことかって? いいのいいの。わからなくてw 気になる人は聞いてみて下さい。

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