学芸大学駅から徒歩30秒。東口商店街沿いに「ごりちか」というバーがあります。2018年10月11日、目黒通り沿いでオープン。2024年4月1日、東口商店街沿いに移転しました。7Daysの上です。同じビルの2Fにはバー デッシュがあります。
※以下、文章も写真もすべて移転前のものです
その名の通り、地下へと階段を下っていきます。扉を開けると、女の子2人、男の子1人の先客が。
「あ、いらっしゃいませ」
「うぇーい! 飲もー!」
なんだなんだw
妙にハイテンションな子がカウンター内へと廻り、ショットグラスにお酒を注ぎます。
「いや飲むけど、これ何?」
「私が持ってきたの!」
てか誰?w まあいいやw
「開店おめでとうございます」
「ありがとうございます」
「かんぱーい!」
わわ。よく見ると、サシカイアじゃん。3年前、Massimottavio(マッシモタヴィオ)で飲み損ねていた、ずっと飲みたかったグラッパ。グラッパ特有のクセがありつつも、今までグラッパで味わったことのないような甘味があります。うまいなぁ。これ、1本1万円くらいするんだぜ? そんな代物を振る舞ってるこの子はいったい何なんだw
店主・ケンゴ君は直前までPremier1(プレミアワン)で働いていました。それ以前はGirls Lounge ShowEn(ショウエン)の店長・倉田君と六本木でずっと一緒に働いていていたのだそう。
「電光石火でここ決まったね」
「実は少し前から決まってたんです。あと1年くらいプレミアワンでやっていたかったんですけどね」
資金、地盤堅め、いろいろな意味でもう少し時間をかけたかったのかな。けど、こういうのはタイミングが大切だったりす
「私はエベレストに登った!」
突然なんだ?w ベロベロに酔っ払ったかわいらしい女の子は自由奔放。店内を歩き回って叫んでます。まあ、エベレストの麓あたりをちょっと登るようなツアーでもあるのかな。
「登頂したよ!」
え?
「いや、本当なんですよ」(ケンゴ君)
ええ!? 登頂って……あ。まさか!
「もしかして、最年少で世界中のあっちこっちを制覇してるとか?」
「そう!」
まじか。
冒険家・南谷真鈴(みなみやまりん)。1996年12月20日生まれ。七大陸最高峰制覇を達成。エベレストに日本人最年少で登頂。エクスプローラーズ・グランドスラム(七大陸最高峰・北極点・南極点到達)を世界最年少の20歳112日で達成。
顔と名前は覚えていませんでしたが、そういう子がいるというのは知っていました。wikipediaにも載っているような子に、まさかこんなところで出会えるとは。しかもこんな状態でw
「彼女よく来るの?」
「いえ、初めてです」
「えええ。CHIKABAに来てたとか、プレミアワンに来てたとか?」
「それもないみたいです」
「一見で来てこれ? すごいねw」
苦笑いを浮かべるケンゴ君。私より4つほど年下なんですが、なんか落ち着いてて、ホッとします。「ごりちか」のごりは、まあ見た目がそんな感じ……だからかな?w
店はとても広いです。カウンターのほかソファー席もいっぱいあって、ダーツもあります。プレミアワンもそうなんですが、広くてソファーもあるとダラーッとしたくなるんだよねw 落ち着くなぁ。
ちなみにテーブルの上に散乱してるのは真鈴ちゃんの荷物。ダーツに刺さってるのもそうかな? 荷物をあちこちにぶちまけて、いろいろなものを「これあげる」「あなたはこれ」とみんなに配りまくってます。
あとで聞いたところ、嫌なことがあって、だからちょいと荒れ模様だったのかもしれませんw
「ここには光が差し込んでる!」
今度はどうした?w
「ここは絶対流行る! 風がこう流れてるから!」
夜です。地下です。もちろん日の光は届きません。けど、真鈴ちゃんは階段から店の奥へとなぞるように指を向けます。
「これくらいクレイジーじゃないと、そりゃエベレストなんて登れないよねw」
「そうですねw」(ケンゴ君)
人とは違う景色を、それこそ死と隣り合わせで見てきた真鈴ちゃん。私のような凡人とは感性、感覚、見えている世界が違うんだろうな。うん、ここにはきっと光が差し込んでるんだよ。いい風が流れてるんだよ。
ハイボールを半分ほど飲んだ頃。まるで真鈴ちゃんの言葉がそのまま現実となったかのように、10名ほどの団体がやってきました。もちろん偶然なんでしょうけど、本当に賑わい出します。そして、10人にも果敢にからんでいく真鈴ちゃんw
「真鈴ちゃん、そっちにからまないで!w」(ケンゴ君)
10名分のドリンクを作りながら、ベロベロになった子をコントロールしようとする店主。10名はダーツをしたり、酔い潰れて寝ていたり。そんな中を自由に飛び回るギネスブック記録保持者。カオスw
「健作さん(プレミアワン店主)はすごいですよ」
「こういうのもうまくあしらうから?」
「ええw」
いやぁ、ケンゴ君だって上手だよ。
「真鈴ちゃん、最高峰を制覇して、次はどうするの?」
「銀河鉄道999! 私のルーツは岩手!」
「銀河鉄道の夜かな? 宮沢賢治だね」
「そう! 私は詩人!(以下略)」
岩手=宮沢賢治=銀河鉄道の夜=銀河鉄道999? 曾祖父(?)が鉄道をどうのこうのとも言ってたな。よくわからんけど、たぶん宇宙を目指すってことなんだろうなぁ。なるほど。英語も中国語もペラペラの才女。ぶっ飛んではいるけどクレバー。クレイジーだけど知的。アスリート的運動神経も備えてる。十分ありえる話だ。
「お手すきで」
指をペケにして示します。
「すみません」
「いやいや、楽しいかったよ。俺はねw 今度またゆっくり」
会計はチャージ500円(乾きもの取り放題)+ハイボール650円で1150円でした。
「ごちそうさま」
「ありがとうございました」
「私おくってく!」
真鈴ちゃんは地上まで付いて来てくれました。
「ありがとう。じゃあまたね」
「めでたし~めでたし!」
これもさっきから繰り返してるんだよなw 何かあるんだろうけど何だろう。
「めでたし~めでたし」
私もそう返し、同じく合掌。
「ハグ~!」
角を曲がるまでずっと見送ってくれていました。ぶっ飛んでる不思議な子だけど、いい子だなぁ。
ざっとこんな夜でした。
どんな酔っ払いでもうまく操舵する懐の深い店主。カウンターで一人しっぽり飲むこともできるし、団体でわいわいすることもできる。広々としていてソファもあってくつろげ、ダーツもあるバー「ごりちか」。けど……。
誰も目にしたことのない壮絶な世界を渡り歩いてきた子が「光が差してる!」「絶対流行る!」と言うバーだよ? 私の下手な説明よりそっちの勘のほうがあてになると思うけどw そして、そんな子を引き寄せたという点にこそ、「ごりちか」のパワー・魅力を汲み取るべきでしょう。
この界隈に住んでると、ちょっと飲みたいけど駅まで出るのは億劫。そんな風に感じることありますよね。あるいは、駅周辺の喧騒を離れて、たまにはゆったり飲みたいと思うこともあるでしょう。そんな時、目黒通りの階段を下ってみてください。なにかいいことがあるかもしれませんよ? 私はずっと焦がれていたサシカイアに出会えたし、ファンキーでクレイジーな子と出会えたし、こんなに楽しいお酒が飲めたし。
……あ。南谷真鈴ちゃんは現代の仙台四郎か? 真鈴ちゃんがフラリと寄ったそのバーは、以後、客足の絶えないバーとなったのでした。めでたしめでたし。ってね。こりゃ縁起がいい。
※2024年4月11日追記:それから6年後、本当に光の差し込む店になり、本当に大人気店になりました。やっぱすげぇや。追記以上