学芸大学駅から徒歩3分。学大横丁の中ほど、和牛やの隣の高架をくぐった先、チャランポランと同じ筋に味心(あじごころ)という魚を中心とした和食系居酒屋があります。1999年11月24日にオープンした老舗の居酒屋です。
ずっと気になっていたので行ってみたのですが、店内に誰もいません。前掛けが椅子に置いてあったので、おそらくは買い出しか何かで店主が出ているのでしょう。待つことにしました。
5分、10分……。店主は戻って来ません。客も来ません。膨大な量のメニューをじっくり見たり、置いてあった釣り新聞を読んだりしながら待ちます。15分、20分……。まだ戻りません。
一見で入った店に誰もいない。この状況があまりにも面白く、さらに待ってみます。そして、店に入って30分ほど経った頃、ようやく店主が帰って来ました。氷をぶらさげて。
「すみません、どれくらい待ちました?」
「30分くらいです。不用心ですね(笑)」
「私も不用心ですが、初めて来られた方が誰もいない店で30分待つというのも変わってますね(笑)」
待たせたお詫びにと、ビールを一杯ごちそうになりました。
壁には「無愛嬌」と書かれていますが、そうでもありません。気のいいお兄さんです。あとでわかったことですが、私より5歳ほど年上なのに30代くらいにしか見えない若い方で、そんな若いのに、お孫さんまで! いやはやビックリ。30分間の空白を埋めるがごとく、とにかくよく話しました。お互いw
さて、まず頂いたのはカツオ刺し。こってりとした味わいにミョウガ、ショウガがピッタリ。カツオの切り口、薬味の細かさを見れば、包丁が達者だとすぐわかります。京都の玉乃光を頼むと、「ひやおろしもある」といって、ひと口サービスしてくれました。
次はアジフライ。肉厚でフカフカのアジ。サクっとした衣。絶品です。さらに秀逸なのは付け合わせのキャベツ。細く細かく千切りされていてフワフワ、シャキシャキです。これだけを注文したいくらい。
このアジフライは学大一。と言うと、店主・野中さんは嫌がるんですがw やめてくれと。ハードルが上がると。けど、そう言っても過言ではありません。本当においしいです。
一見が、うまい酒と肴を頂きつつ、店主を独占して談笑。これこそまさに至福の時間。ああ、酒飲みに生まれてよかった。なんてことを感じていると、「こちらもどうぞ」。そういって青森のイカの塩辛などもサービスで出して頂きました。
続いて頂いたのはイワシ刺し。なるほどなぁ。小ネギをこうして切って、青い部分と白い部分を分けて盛るのね。こりゃいいや。マネしよう。だけど、ここまで細かくは切れないだろうなぁ。
いろいろ話をしている中で、私が「サバが魚で一番好き」と言うと、「いざという時のため、〆サバを凍らせておいてるんですが、食べます?」と。もちろん頂きます。あえて完全に解凍せず出してくれました。脂の乗ったサバが冷えてさっぱり。これがまたうまい! 石川の純米吟醸・加賀鳶も進みます。小皿に普通に盛っただけなので、出し方は100%本気じゃなかったと思います。だから写真は撮りませんでした。
追記:その後、ちゃんと注文して頂いた〆サバがこちら(下写真)。このボリューム、このクオリティ。やば。追記以上。
空白の30分間で、私の期待は膨れ上がっていました。だけど、その期待をものの見事に越えて行く、素晴らしい料理の数々。店主の人柄もいいし、途中で入って来た常連さんも素敵な方でした。
気になるおいしそうな料理はまだまだあります。すべてを喰らい尽くすがごとく、これから何度も、ここ味心に通うことになりそうです。
追記:味心を食べ尽す
幾度となく味心に行っています。学大でボトルを入れている店は数少ないのですが、うち一軒が味心です。
店主・野中さんが優しすぎて、ついいろいろ甘えてしまいます。女性客が多いというのもよくわかるなぁ。
ちゃんと和食をやってきた方です。ふぐもできます。そんな方がふるう包丁は見事としか言いようがありません。料理に関してわからないことがあったら、いつも野中さんに聞きに行きます。素人にもわかりやすく丁寧に説明してくれて、毎度、本当に勉強になります。
毎回、お通しがとてもおいしいです。この日は貝のマリネでした。お通しレベルではありません。
寒い日はあさりの椀がお通しになったりね。
麦イカのなめろう。見ただけで、いかに手をかけているかがわかります。ここの料理に妥協は一切ありません。これが本物の料理。
アカハタとホッキ貝。アカハタの皮も茹でてくれます。ホッキ貝は生と湯通しの2種にしてくれました。この量、このクオリティで650円と550円よ?w
ふぐ!
フライと刺身がセットになった、イカセット、アジセット。お得だしうまい。キャベツもやばい。おかわりしちゃったよw
すべてをいちから作り始めるので、料理が出てくるのに時間がかかります。これは自他共に認めているところw のんびり待つことを覚悟して行って下さい。ただ、待ちに待って出てきた料理を食べればこう感じるはずです。待った甲斐があった、と。