学芸大学駅から徒歩2分。西口を出て線路沿いを五本木方面へ行き、信号を渡った先、学大横丁の対面に中川という居酒屋? 小料理屋? があります。2015年7月4日にオープンしました。再開と言った方が正確か。
※追記:2021年3月19日に閉店しました(コロナとは関係ない事情で)。おばあちゃんが45年、りえちゃんが26年、計71年という歴史でした。お疲れさま、ありがとう、りえちゃん。
※追記:2021年8月7日、りえちゃんはお亡くなりになりました。とみーさん、英二郎さん、としさんたちとあっちで待っててね。追記以上
東口商店街に清瀬という居酒屋がありました。もう70年以上前の話です。その2号店が十字街にでき、これをおばあちゃんが買い取り、なぜか店名を中川とします(お客さんが命名したそう)。おばあちゃんが45年、店を切り盛りし、孫のりえちゃんが引き継いだのが約25年前(2019年時点)。ですから、創業は昭和25年頃(1950年頃)ということになります。飲み屋としては学芸大学でもっとも古いお店かもしれません。
中川があったのは十字街のビル。深夜食堂 きんちゃんも同じビルでした。2014年、建物が取り壊されるに伴い移転を余儀なくされ、店を休むこと約1年、ようやく物件が見つかり、中川が復活します。場所は山もとがあったところです。学大横丁の居酒屋・海の家 あそなる~の前。
そもそもなぜここを知ったかと言いますと、だんだんのとみーさんから教わったから。「中川って店が再開するから、ひろぽん、今度、一緒に行こうよ」なんて誘われていました。だけど、我慢できず一人で訪問w
※追記:とみーさんは2019年に亡くなりました。だんだんは閉店しています。追記以上
中川のりえと言えば、学大が地元なら知らない人はいないくらいの方。隣にいたお父さん(御歳78歳)はこんなことを言ってました。
「ここの客で、りえのおしめ替えたという人もいるよ」
生まれた時から学大(&都立大学)。学大の人に愛され育ち、悪ガキになってそこら中を走り回り、大人になったら飲んだくれて、あっちこっちで遊びまわって、中川の客たちはりえの成長をずっと見てきて、そんなりえが店を継ぐ。ああ、なんて素敵……。
「きんかも行くの? ノブと同級生だよ。美好も? お父さん、ほんといい人だよねえ。信八って知ってる? いっつもオヤジんとこ世話になってんのよ。へー、いろいろ行ってるねぇ。今度、一緒に飲みに行こうよ」
口が悪いというのは自他共に認めてるところw けど、嫌な感じはぜんぜんしません。年下からするといい姐御といった雰囲気です。ご年配方からはかわいがられ、年下からは慕われる。そんな姐さん。そのことが一番よくわかるのがこちら。
店の外にかけられている看板、店内に飾られている灯篭、マドラー、黒板、傘立て、テーブル、椅子、すべてお客さんのお手製です。
「○○が全部作ってくれたんだよ。ごっつい指してんのに細かい作業がほんと上手。その傘立ても作ってくれたんだよ。富田のオヤジ(だんだんのとみーさん)が灯篭を見て気に入って、ウチにも作ってくれってさ(笑)」
それはそれは嬉しそうに話すりえちゃん。いやーわかるなー。この人のために、なんかしてあげよう、そんなことを思わせる姐さんです。
仕事の関係でちょうど一眼レフを持っていたので、いろいろ写真を撮りました。しょせん素人の写真です。だけど、感動して涙を浮かべます。
「なにこれ! ウチ、こんな綺麗なの? ○○に見せたら絶対喜ぶよ! なんか、○○より私の方が嬉しいんだけど」
口の悪い姐御は泣き上戸?w めんどくせー姐さんだw いえ、こんなことを言ってもぜんぜん大丈夫な方なのでw
さて。
飲んでるだけでは申し訳ないし、料理も気になったので、卵焼きを頼みました(もちろん飲みに行くだけでも大丈夫です)。
「普通の家庭料理だよ。甘めだから」
とてもおいしい卵焼きです。撮った写真を見せたら、また大喜び。なんてことをしていたら、娘さんがやって来ました。
「お兄ちゃん、卵焼きも撮ってくれたんだよ」
いつもの調子で酔っ払ってる母親を「はいはい」といった表情で受け流します。かわいい娘さんだ。いや、ほんとかわいい。店を手伝うつもりは一切ないと言い切るあたり、その気の強さ、芯の強さは母親譲りだろうなw
私には地元と呼べるような地元はありません。家族との関係も希薄です。そんな私にとってみると、こういう方々がとてもうらやましい。今度、写真を紙焼きにして持って行こう。
「中川行ってきましたよ」
とみーさんに報告しにだんだんへ行きました。するとお母さんもいて、家族4人が勢ぞろい。お兄ちゃんの誕生日だったのです。家族水いらずの場に、なんて間の悪い……。
「ひろぽんはいいんだよ。飲んでいきなよ」
オヤジの特別な料理、ケーキもごちそうになり、2軒連続で家族の温かさを感じさせてもらいました。いいなぁ、こういうの。こっちが涙出そうだw
その後、幾度となく足を運んでいます。
人を連れて行くこともしばしばで、楽しい、面白いとハマる奴が続出。その内の一人が後藤建築工房の後藤大一郎。りえちゃんの気の強さ、口の悪さはこういう職人たちにもっともウケるのかもねw
辛めの濃厚なカレー、ピリ辛のナス豚味噌炒め。りえちゃんの料理はうまい!
「りえちゃん、おいしいね。料理屋みたい」
「料理屋だよ!」という返しを期待してたのに、「ああ、そう?」だって。照れちゃってるw 俺に対してはなんだか妙に優しいんだよなぁw
「あははは! 私より口が悪い人、初めて見た!」
と連れてったエリィもお気に入り。
「このテーブル、家の居間みたいで面白いねぇ」
こう見えて、りえちゃんは実はアイドル好き。少年隊・ニッキの大ファン。それ以外も昭和のアイドルにめっぽう詳しい。最近のアイドルも何気に知ってたなぁ。アイドル話になると、それはそれは楽しそうに語り始めますw
ワシワシ食うような店ではありません。酒だってそんなに種類はない。でも、とにかく面白い。最高。これがいわゆる"飲み屋"ってやつなんだろうなぁ。
まあ学大に住んでいるなら、一度は中川に寄って、"学大の姐御"に挨拶でもしなされ。
SHOP DATA
- 中川
- 東京都目黒区鷹番3-9-6
- 03-3792-8233
- 公式