後藤ひろし（ひろぽん）「ひろぽん、どこかおすすめある？」
「居酒屋だったらさいとう屋いいですよ」
「どこ？」
「ボラボラの角を曲がって……」
学芸大学駅界隈の飲み屋で、もう何百回と繰り返して来た会話です。ただ、その時は少し違いました。
「ボラボラ？」
まあ、レアですが、ここまでならまだある。
「駅前に八百屋があるじゃないですか」
「八百屋？」
さすがにこれはｗ その方は西口方面にお住まいですが、にしてもねぇ。
「こっち側じゃなくて、駅のあっち側に行ったら駅のすぐ目の前にある八百屋ですよ」
「八百屋かぁ。あったかなぁ。今度ちゃんと見ておくよ」
誰もが街をちゃんと見ているわけではありません。それに、朝早く電車に乗り、夜遅く帰って来るような生活だと、確かに八百屋が開いているところを目にしたことがない、ということもありえますわね。
というわけで、学芸大学界隈に住んでいても知らない人がいたという驚きから、今回はボラボラのご紹介です。
学芸大学駅から徒歩10秒。東口に向かった目の前にある青果店・ボラボラ。創業50年近くの老舗です。フランス領ポリネシアのボラボラ島がその名の由来。
2階のベジタブルキッチン ボラボラを運営しているのが青果店・ボラボラです。店頭に椅子を出して座り、街ゆく人に声をかけたり、子供に飴を配ったりするお母さんは学大名物の内のひとつ。なんですが、たまたまなのか最近、あまりお見かけしません。体調を崩してらっしゃるのかな。
※追記：2017年9月25日に亡くなりました。この街を明るくしてくれていた方だったと思います。ご冥福をお祈り致します。追記以上
近隣の飲食店が「あ、キャベツ切れた！」といった時にも利用されがち。あと、バーやスナックの女の子にお土産でフルーツを買って行く紳士も多いです。私はもっぱら、そのご相伴にあずかる係。ボラボラのスイカ、ブドウ、イチゴはどんだけ食ったことか。
さて、私もよくボラボラを利用しています。その日はポテサラを作るためにやって来ました。平和通り商店街の八百屋・二葉屋（閉店）で購入した野菜がまだちょっと残っていたので、ボラボラで買い足したかったんです。
店頭にも店内にも果物・野菜がいっぱい。レジ前には自家製のぬか漬けもあります。いろいろ買いたくなってしまうのですが、ぐっと堪えて必要な物だけを手にしてレジへ持って行きました。
今回、購入したのはこちら。
クレソン、ルッコラ、ジャガイモ2袋。さっそくポテサラを作ります。
どーんとこれくらい作るのが快感ですな。入ってるものはジャガイモ、きゅうり、紫玉ねぎ、ベーコン。調味料はマヨネーズ、ブラックペッパー、そして隠し味程度にクミン。あのね、ワサビを入れてもおいしいよ。まじで。今度やってみて。
本当はゆで卵も入れようとしていたんです。いい卵をもらったので。でも、ゆで卵が半熟卵になってしまいましたｗ で、どうしたかと言いますと。
ジャーン。
ジャーン。
うははは。うめー。まろやかでトロトロな黄身がポテサラにまとわりつき、濃厚。むしろ半熟卵でよかったな。うん。
翌日の昼はポテサラを違う形でまとめてみます。ボラボラで買ったジャガイモですからね。どうするかというと。
ベジタブルキッチン ボラボラ オマージュのポテトサラダ。今度はトマトの酸味でさっぱり。うま過ぎ。
そして、その日の夜はこう。
無造作に、シンプルにポンと盛る。いいねぇ。赤ワインのお供にもピッタリ。
仮にスーパーより安かったとしても、たかだか数十円の違いです。何ならまとめてすべてスーパーで買ったほうが楽かもしれない。でもね、せっかくこの街に住んでるんです。毎回とは言いません。私だって毎回そうしてるわけじゃない。でも、たまには街の八百屋で買うってのもいいもんです。
「これ、駅前のボラボラで買ったんだよ」
そう言い添えるだけで、料理がおいしそうに見えるじゃないですか。それに、これを聞いて育った子は「ボラボラの野菜はおいしいんだ」って思うようになります。大人になったらボラボラで買うようになる。そしてやっぱり自分の子供に「これ、ボラボラの野菜だよ」って言うんです。こうして街はその街らしさを保っていきます。
なーんて、カッコイイこと言っとりますが、スナックやガールズバーでも「わー！ ボラボラの巨峰だ！」って喜んでくれますよｗ
