島原のそうめんと手延べそうめん
最初にふたつの"違い"をご説明します。ここだけはしっかり読んで下さい。
その1。
無数のメーカーが島原素麺/島原手延べ素麺という商品を販売しています。ですから、島原素麺/島原手延べ素麺といっても商品によってまったく違います。
その2。
そうめん(広義)にはそうめん(狭義)と手延べそうめんがあります(以下、特段の断りがない限り、「そうめん」は狭義のそうめんを指します)。そうめんと手延べそうめんはまったくの別物です。
そうめんは基本的に機械麺なんですが、では両者の違いは機械製と手作りの差かというと、そういうことではありません。根本的に異なります。
そうめんは生地を板状に平たく延ばし裁断します。手延べそうめんは生地によりをかけながら徐々に細く延ばしていきます。手か機械かというだけではなく、製法がまったく異なるということです。
そして、この差がおいしさの差にもつながります。そうめんは基本的においしくはありません。手延べそうめんは基本的にはどれもおいしいです。もし、おいしいそうめん(広義)が食べたければ「手延べそうめん」と書かれた商品を買ってください。
ダイソーの島原手延素麺
100円均一ショップ・ダイソーには有限会社たなか物産が販売者/加工者(後述)となっている島原素麺と島原手延素麺があります。これも上記と同様です。前者は機械麺、後者は手延べ。前者はこのブログでもレポートしています。過去最高と言えるほどまずかったです。
今回ご紹介するのは(有)たなか物産が加工者の島原手延素麺。昨年は見ませんでした(or 気づきませんでした)が、今回初めて目にして購入しました。
108円/150g(50g×3束)。揖保乃糸など一般的な手延べそうめんは300g(50g×6束)なので、300gに換算すると216円。ですから、この島原手延素麺は破格の安さと言えるでしょう。これまで100種以上のそうめんを食べてきましたが、200円前後の手延べそうめんはほとんど見たことがありません。
開封して香りをかいでみたところ、甘い香りがしました。いつも感じるのですが、この香りをかぐと小学生の頃の何かが思い起こされます。はっきりと何かが思い出せないのですが。なんだろう。いずれにせよ、とてもいい香りです。
麺は中太。細くもなく太くもなく。少し平べったい麺が混ざっているのですが、これは手延べそうめんであれば普通のこと。もちろんばらつきが確認できるのは乾麺状の時だけです。茹でるとばらつきはほとんどなくなります。
茹で時間は2分~2分半となっています。様子を見ながら2分15秒ほど茹でました。「おいしくなくてもいい。頼むからまずくないでくれ」と祈りながら。
まずはそのままひと口。手延べそうめん特有の強いコシとは違う穏やかな弾力。
少々ごわつきます。麺つゆに浸せばほぐれるのですが、吸い口、のど越しにわずかながら引っ掛かりのようなものも感じます。不快というほどのものではありません。なんとなくです。
風味はそれなりにあって、味わいは悪くありません。塩がしっかりと味を支えているといった印象です(しょっぱいわけではない)。
おいしい!と唸るようなものではありません。手延べそうめんとしてはレベルは低いです。
けど。
揖保乃糸とこの島原手延素麺、どちらを選ぶべきかと言われれば、私は答えに窮します。もちろん揖保乃糸のほうが圧倒的においしいです。ただ、同量換算すれば200円 vs 300円。「揖保乃糸には及ばないけど、安いから」で十分納得できるクオリティでしょう。
さらに、先日、友達の子(前回の三輪素麺をくれた子)がこんなことを言ってました。
「そうめんを食べるのは年に1度か2度。揖保乃糸を買っても余っちゃう」
と。
そ、そうか……。普通はそんなもんなんだ。だとしたら、150gという食べ切れる量で売られているこの島原手延素麺はむしろいいのかも。
「そうめんを食べるのは年に1度くらいだから、ほんの少し高くてもおいしいものを食べたい」という考えであれば、お勧めしません。三輪素麺を買ってください。
「そうめんにこだわりないから何でもいい。ただ、できるだけ安く、できるだけおいしいものを少量食べたい」ということであれば、この島原手延素麺は断然ありです。買うに値します。少なくともダイソーで販売されているそうめん(広義)の中ではこれが一番おいしいと思われます。
さすがに★4はあげられませんが、ポジティブな★3を進呈します。
名称 | 島原手延素麺 |
原材料名 | 小麦粉(国内製造)(小麦を含む)、食塩、食用植物油、でん粉 |
販売者 | 有限会社たなか物産 |
メモ | 正確には有限会社たなか物産は加工者 |
評価 | ★★★☆☆ |
そうめんの加工者って何?
加工食品には製造者、加工者、販売者、輸入者を明記しなければいけません。「加工」は新たな属性を付加する行為で、その前後で本質的な変更がないことを指します。
事業者によって異なるでしょうが、そうめんにおける加工は製造者(単一もしくは複数)が作ったそうめんを納入させ、これを小分け包装していることを指していることが多いと思います。
ですから、この島原手延素麺は(有)たなか物産が直接製造しているわけではなく、製造者が他にいると思われます。そしてひとつの製造者であるとは限りません。
ということは、今回私がダイソーで買ってきた島原手延素麺と、みなさんがダイソーで買う島原手延素麺とでは製造者が異なり、もしかしたらクオリティ・味も異なるかもしれません。その点はお知り置きください。
島原素麺、三輪素麺、播州素麺の違い
産地の差という話ではなく言葉の話です。
島原素麺/島原手延素麺は単なる普通名詞です。島原のそうめん生産者であれば、誰しもが島原素麺/島原手延素麺という商品を販売できます。
三輪素麺は商標です。登録者は奈良県三輪素麺工業協同組合。同組合に所属している複数メーカーが三輪素麺という商品を販売していますが、厳密な基準に則って作っているので、クオリティも高く維持されています。この基準は手延べそうめんに関する基準ですから、三輪素麺はすべて手延べそうめんです。
播州素麺も商標です。登録者は兵庫県乾麺協同組合。機械麺メーカーが中心の業界団体による商標なので、おそらくほぼすべてが機械麺です(手延べそうめんであれば「手延べ」という単語が商品名に含まれているはず)。