尾上製麺所の三輪素麺は穏やかでやさしいタイプの三輪素麺。けど、さすが三輪。歯切れがよく気持ちいい~三輪素麺の特異性 - 肝臓公司(かんぞうこうし)

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尾上製麺所の三輪素麺は穏やかでやさしいタイプの三輪素麺。けど、さすが三輪。歯切れがよく気持ちいい~三輪素麺の特異性

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尾上製麺所(おのうえ)の三輪素麺。頂き物です。

「まごが喜ぶ三輪そうめん」。ふふふ、なんだかかわいいキャッチコピー。けど、おじいちゃん・おばあちゃんがターゲットなんだ。面白い。どういうマーケティングなんだろ。夏休み、息子・娘が孫を連れて実家に遊びに来た際、そうめんでお出迎えはいかが?って?

余談ですが、この記事がアップされた7月7日はそうめんの日。

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約35年前から奈良県では過疎対策・地場産業対策の一環として、そうめん生産家の拡大が推進されました。「奈良県といえばそうめん(後述)。雪で林業ができなくなる冬季にそうめんを作りませんか? ちょうどそうめんの製造時期ですし。収入になるのはもちろん、雇用が発生して人が集まり、村の過疎化も押し止められますよ」てなわけです。

奈良県の山間部、吉野郡黒滝村(くろたきむら)にある尾上製麺所もこれに基づいて製麺所を起業しました。黒滝村では尾上製麺所のほか、吉村製麺所、岡村製麺所が開業しています。

参考/奈良県黒滝村地域おこし協力隊新聞 黒滝村Lover Vol.12(PDF)

当ブログではそうめんを5段階の★で評価しているのですが、例外の★6を獲得した坂利製麺所(奈良県東吉野村滝野)もそうめん作りの研修プログラムに参加し、三輪素麺に学び、1984年に創業しています。

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箱には三輪素麺の鳥居マークとGIマークのシールが貼られています。両者の詳細については後ほど。

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20束×2列の40束、2000g。さすがに多いなw

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三輪素麺はランク(細さ)によって呼び方、束紙の色が異なります。ランク上から順に

  • 神杉(かみすぎ)
  • 緒環(おだまき)
  • 瑞垣(みずがき)
  • 誉(ほまれ)

ただ、細いものは三輪素麺という商品名ではなく各メーカーがオリジナルの商品名でリリースすることも多くなり、最近では金帯の瑞垣、黒帯の誉の2つがほとんどだそう。なお、三輪素麺という言葉(商品名)に関しても後ほど。

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柔らかな小麦の香り。とても細くてまるで糸。よくしなります。

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茹で時間は「3分程」となっていますが、三輪素麺で3分は長い。様子を見つつ2分で上げました。

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冷水で締めるとピンと張りがでます。

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プチッと弾けるとまではいきませんが、プリッとしたいい歯切れです。舌触り、のど越しはツルリと気持ちいい。風味は穏やかで三輪素麺の中では優しい部類ですが、とてもおいしいです。

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オンラインであれば16束、22束でも購入できます。普通ならこれだけあれば1年はもつでしょう(そうめんの賞味期限は2年くらい)。お中元にもいいんじゃないでしょうか。

DATA
名称三輪素麺
原材料名小麦粉(国内製造)、食塩、食用植物油
製造者尾上製麺所
評価★★★★★

三輪素麺の特異性

三輪素麺は登録商標

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三輪(奈良県)、島原(長崎県)、播州(兵庫県)、小豆島(香川県)がそうめん四大産地と言われています。

島原のそうめんは島原素麺、小豆島のそうめんは小豆島素麺です。じゃあ三輪のそうめんが三輪素麺? いえ、話はそう単純ではありません。

島原素麺、小豆島素麺は地域名に「素麺」という単語がついた単なる一般名詞です。一方、三輪素麺は奈良県三輪素麺工業協同組合が権利を有する登録商標(登録日:1990年3月27日)。ですから、三輪で作られたそうめんを勝手に「三輪素麺」と謳って販売できません。同組合に所属し、同組合の許可を得て初めて「三輪素麺」という商品を販売できます。

なお、播州素麺は兵庫県乾麺協同組合の商標です。ただ、詳細は略しますが、三輪素麺の場合とは異なる事情で商標登録されています。

三輪素麺はすべてが手延べそうめん

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三輪素麺は食品表示基準(※1)よりも厳密な組合自主基準を定めていて、これに則って組合員が製造したそうめんのみ三輪素麺を名乗れます(※2)。この自主基準は手延べそうめんとしての基準ですから、おのずとすべての三輪素麺が手延べそうめんということになります。奈良県三輪素麺工業協同組合より「三輪素麺に機械麺はない。すべて手延べそうめん」との言質も取っています。

この点も他地域のそうめんと大きく異なります。島原素麺は島原で作られたそうめんですから、機械麺も手延べそうめんも島原素麺と呼ぶことができます。ただ、であるがゆえに、島原の手延べそうめんは「手延べ」をアピールしたいので、島原手延べ素麺という商品名になることがほとんどです。逆に島原素麺という商品名のそうめんはほぼ100%が機械麺です。これは小豆島においても同様で、播州においてはむしろ積極的に機械麺用の商標・商品名として播州素麺という言葉が使われています(播州素麺という商品はいっぱいありますが、すべてが機械麺)。

※1 以前は乾めん類品質表示基準(農林水産省/廃止)。現在は食品表示基準(内閣府)
※2 鳥居印の帯紙で結束し、製品パッケージに鳥居マークのラベルを貼付することができる、というのが正確

三輪素麺の地理的定義

奈良県桜井市に三輪という町があります。三輪山およびこれを神体山とする大神神社(おおみわじんじゃ)が所在する町です。そして、こここそがそうめん発祥の地とされています。

では、奈良県桜井市三輪で作られたそうめんが三輪素麺かというとそうではありません。三輪近隣地域をはじめとする奈良県全域が対象地域です。もちろん前述の通り、奈良県三輪素麺工業協同組合に属し、同組合の基準に則って作られたそうめんのみが三輪素麺と名乗れるわけですが。

今回ご紹介した三輪素麺の製造者・尾上製麺所も桜井市から遠く離れた山間部の吉野郡黒滝村にあります。ですから、三輪素麺という言葉における「三輪」は具体的な町名を指すわけではなく、ある意味でブランド名のようなものと捉えることができるでしょう。

三輪素麺はGI

三輪素麺は農林水産省が定める地理的表示(GI)保護制度登録されています(登録番号:第12号・登録日:2016年3月29日)。三輪がそうめん発祥地であるという歴史や、三輪素麺は登録商標で、かつ厳格な基準によって製造されていることなどがGIに登録できた要因です。

三輪素麺というブランドが確立できた背景

少数精鋭

奈良県三輪素麺工業協同組合には約70名の製造者が加盟しています。小豆島手延素麺協同組合が154名ですから、奈良県三輪素麺工業協同組合の組合員がとても少ないということがよくわかります(しかも一方は県全体、一方はひとつの島)。

もちろん組合に属さずに手延べそうめんを作っている製造者もいますが、三輪素麺においては組合に属していないと三輪素麺という商品を販売できないので、ここでは考慮に入れません。

手延べそうめんの割合

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参考/農林水産省:平成21年米麦加工食品生産動態等統計調査年報 (参考4)乾めん類の都道府県別生産量

奈良県のそうめん(=機械麺)と手延べそうめんの比率は他県と比べて断トツで偏っています。要は奈良県で作られているそうめんのほとんどが手延べそうめんということです。

産地表示問題

1983年4月から産地表示が規制されていましたが、2002年7月に大手の販売業者3社が長崎県産(≒島原産)の素麺を三輪素麺として販売していたとして、農林水産省の立入検査と改善の指導を受けます。三輪素麺と謳っていた商品の内、約80%が長崎県産だったそう。

以後、奈良県三輪素麺工業協同組合が中心となって、他県産を三輪素麺と呼ばないだけでなく、先述の通り、三輪素麺に厳密な基準を設けるようになります。さらに2015年、奈良県三輪素麺工業協同組合と三輪素麺販売協議会は三輪素麺のブランド強化に取り組むことを発表し、統一ブランド商品の開発、共同配送などを行うようになります。翌2016年にはGIにも登録されました。

参考/wikipedia:三輪素麺

少数だからまとまりやすい。手延べそうめんしかない。諸問題を乗り越えるため各生産者が一致団結した。こういったことが三輪素麺というブランドを確固たるものにしたんじゃないでしょうか。

では、島原素麺はどうでしょう。長崎県南島原市を中心に長崎県下には多くの素麺組合が存在します(島原手延素麺協同組合・長崎県有家手延素麺協同組合・長崎県手延素麺製粉協同組合・肥前手延素麺組合など)。2013年の南島原市役所調べでは、同市内の手延べそうめんの生産者は311軒です。

さらに上表のように手延べそうめんではない機械麺の生産量も膨大です。品質にバラつきが大きすぎて、島原素麺という言葉ではブランド化できません。なんとか島原手延べ素麺というブランドを確立しようとしていますが、長崎県島原手延そうめん振興会、島原手延素麺組合連絡協議会など業界団体も複数あり、どうもまとまりに欠けるように見えます。

三輪素麺の知名度

とはいえ、都内のスーパーでは三輪素麺はあまり見かけません。島原素麺/島原手延べ素麺が商品棚に目立ちますから、知名度としては島原のほうが上。

ただ、三輪素麺は手延べそうめんですから、基本的にすべておいしいです。一方、島原のそうめんはどうかというと、一般消費者は島原素麺と島原手延べ素麺の違いなんてわかりませんから、まずい島原素麺(機械麺)を買ってしまって、「島原のそうめんはまずい」と誤解する人も多いようです(そうめん自体をまずいものだと勘違いする人までいるので、まずい島原素麺の罪は重い)。

かように単に知名度が高ければいいというわけでもないので、なかなか難しいところではあります。

三輪の手延べそうめんが日本一

結局、何が言いたいかというと。

島原にも播州にも小豆島にも、あるいは他地域にもおいしい手延べそうめんはいっぱいあります。けど、アベレージでもっともおいしいのは間違いなく三輪の手延べそうめんです。

もちろん三輪素麺でまずいものなんてひとつもありません。イマイチと思ったことすらほぼありません。そりゃそうです。三輪素麺に限って言えば、奈良県三輪素麺工業協同組合が原材料を一手に仕入れて組合員に渡しているので、どれも原材料は同じ。製法もほぼ同じ。おいしいに決まってます。

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商品棚に複数のそうめんが並んでいたら、機械麺ではなく手延べそうめんを選ぶ。もし「三輪」という言葉が入ったそうめんがあれば、それを選ぶ。おいしいそうめんを食べたければ、これが正解です。