カジュアルな天ぷら屋
学芸大学駅から徒歩10分。東口商店街を抜け、目黒通りに差し掛かろうかというところに天ぷら カブというお店があります。2012年にオープンしました。
田舎のバス停脇にでもありそうな「昼の部」という黒い看板ももちろんいい。けど、それ以上に右側の「営業中」のフォント。絶妙。いい書体だなぁ。この先の緩やかにカーブを描く縞鋼板の階段を無事に上り下りできるかどうか、不安になります。それほどもうすでにクラクラきています。
※2018年10月17日追記:「営業中」は昔の教科書に使われていたフォントだと、デザインをした前田浩志さん談。追記以上
カンカンカン。階段を上がると暖簾に「創業昭和八十七年」「四季酒肴求心」。そして"「笑"を逆さに書いています。昭和87年てことは平成24年。2012年にオープンしたということか。「四季酒肴求心(しきしゅこうぐしん)」は自由が丘の名店・金田の標語として有名です。箸がつまんでいる赤いものはなんだろう。漢字の「心」かな? そして"「笑"とは? 倒福的なことなのか、あるいは笑うに角がついているから笑う門には福来たる的な? 仕掛けがいろいろあって忙しいw
※2018年10月17日追記:箸がつまんでいるのは赤い玉(赤玉)。赤玉が出るまでがんばれというエールを込めてと、デザインをした前田浩志さん談。赤玉は昔のパチンコで使われていた最後の玉。転じて、男の"打ち止め"に出ると言われていますw追記以上
お得なランチは天ぷら定食/天丼
店内はカウンター8席。旬のてんぷら定食をお願いしました。
タイルがいい。石油ストーブも素敵。ぶら下がっているランプシェードも、ライトの赤いコードも魅惑的。ちんちんを出している仙台四郎の人形もかわいい。そして、天井を見上げると……。
アールデコのような欄間風。すべてをチェックしきれていないのですが、おそらく3つあって、松竹梅かな。いいなぁ、この感じ。悶々としてきます。
おっとっと。店内の様子にばかり目を奪われていてはいけません。チリチリと油が優しく鳴り始めました。すべてのネタがタイミングよくすくい上げられるよう、順序よくネタを揚げて行きます。
揚げる音が静まってきたら、揚がったという合図。しじみの赤だし、お新香、ご飯が供されて、最後に天ぷらがやって来ました。
季節を感じさせる栗と銀杏。舞茸、玉ねぎ、茄子、キス、海老が2本。ほんの少し塩につけます。薄めの衣がサクっと音をたてたかと思うと、中の身がフワッ、プリッ、ムチッ。すかさず白米を口へ放り込み、ハフッ。
サクッフワッハフッ、サクップリッハフッ。規則正しい三拍子。時折、お新香や赤だしがこれを崩しにかかります。そして、ある意味で天ぷらのクライマックスと言えばこれ。海老のしっぽ。
プリッとした海老の身からの突然の変化。そして、天ぷらの衣とは異なる香ばしさ、食感。パリッパリッ。愉悦。
オシャレな昭和レトロ
すべてを食べ終え、もう一度、店内を見回します。単なる和テイストじゃない。昭和モダン。
薩摩ボタン(レプリカ)のリング、縁台、提灯、藍色のカーテンに朱色のステッチ、OKURAあるいはBLUEBLUE。恥ずかしながら拙宅です。本当にこういうテイストが大好きなんですよ。落ちつくなぁ。
「なんで『カブ』なんですか?」
「いろいろ意味があって、こちらに……」
メニューの裏に書いてありました。
(1)熊などの獣の子どもを意味する英語。若く未熟な人、小僧、青二才、生意気な若造。
(2)ホンダの生産する原付バイク。
(3)魔法使いサリーちゃんの弟。
(4)その仲間・社会で評価を得ていること。また、その評価。
カブはサリーちゃんの弟ではなく家来なんですが、それはさて置き。
飲み屋で見せる顔とはまったく違う、店でのそっけない感じは職人意識というのもあるのでしょうけど、シャイだから? 店名にしたって、1~4以外になーんか、他にあるんだろうな。と思わせます。ふふふw
昼に天丼も食べたいし、夜も飲みに行ってみよ。
※2015年12月5日追記
この記事を上げたまさにその日の夜、某バーでカブのデザインをされた前田浩志さんに偶然お会いしました。びっくり。
とても素敵なデザインですとお伝えすると、喜びつつこんなことを。
「昭和の生まれでしょう。そういう時代のものが懐かしくて。カブは昭和の水族館、銭湯をイメージしてるんです。だからタイルを使ったりね」
上述の「松竹梅」はあっていました。本当はもっといろいろお聞きしたかったのですが、楽しい酒の席で仕事に関する話ってのもアレですから、ほどほどに。
それにしても、すごい偶然だったなぁ。いやはやびっくり。なお、ワインバー・木とのデザインをされたのも前田浩志さんです。
夜の天ぷらコースをしっかり頂いてきました
夜はこんな感じ。
ピーマンの昆布和え、えび、キス、アユ、鯛のしそ巻き、天丼。ある夜に食べた天ぷらコース(3000円)の一部。うまいなぁ。
別日のコースの一部。〆は天茶。わさびをたっぷりと溶くのが好き。
甘めに作ってもらうレモンサワーも好き。
ある晩はとてつもない賑わいでした。ほとんどが店主・平田君と同郷・大分県の人たち。平田君、チカちゃんは大分県佐伯市出身。
ご覧の通り、かしこまるようなお店ではありません。もちろん天ぷらはバツグンですが、カジュアルに利用できます。スタッフはみんな楽しいヤツらです。ついでに男前ばっかw わいわいと賑やかに天ぷらをつまみながら盛りあがって下さい。
水曜日はチカちゃんのおばんざい店(追記あり)
水曜日は休業日だったのですが、2017年ごろからチカちゃんがおばんざいを出すようになりました。
どの料理もまあうまい。料理上手。週一じゃもったいないw
チカちゃん、亮平という楽しいヤツらがやってる水曜日のおばんざいも機会がありましたらぜひ一度。
※追記:チカちゃんが卒業したので、水曜日おばんざいは終わりました
年越しそば用の天ぷら
毎年、年末になると年越しそば用の持ち帰り天ぷらセット(えび2本・かき揚げ/2000円)を販売しています(乾麺のそば付は2500円)。
基本的には予約制です。できれば前日までに予約を。状況によっては、もしかしたら当日予約でも大丈夫かもしれませんが。
ちなみに、大晦日、店内で年越しそばを食べることはできません(常連・関係者のみ飲食可)。
もちろんえびもおいしいのですが、かき揚げがボリューミーでゴージャス。これだけでお腹いっぱいになれます。乾麺のそばもおいしいんですよねぇ。
※追記:天ぷらカブがとんねるず石橋貴明さんのYoutubeチャンネル・貴ちゃんねるずの名物企画・アラートランに登場しました