「神輿(みこし)を担いでみたいな。どうすればいいんだろう」
「今度、神輿を担ぐことになったんだけど、何を用意すれば?」
この記事はそんな方へ向けたQ&Aを中心とした記事です。私は東京都の学芸大学駅界隈に住んでいるので、界隈の一番大きな祭り・碑文谷八幡宮 秋季例大祭を例に説明していきます。ただ、他地域、他祭でも参考になる部分もあると思います。もしよければどぞ。
注1:当然、地域によって異なることがあります
注2:現代の地域社会ならではの"理想と現実"みたいなことがあります。そのあたりに少し留意しながら読んで頂けると幸いです
参考サイト/wikipedia:碑文谷八幡宮
初めて神輿を担ぐためのQ&A
Q.そもそも神輿って何?
普段は神社にいる神霊が氏子町内、御旅所(おたびじょ)などへ渡御するにあたって一時的に鎮まるとされる輿(こし)が神輿(みこし)です。神殿をかたどっていることが多く、2~6本ほどの担ぎ棒がついていて、これを30~50人ほどで担ぎます。
参考サイト/wikipedia:神輿
もともとは豊作や大漁を願い神輿を担いでいたようですが、地域の安全や繁栄を祈願しつつ、地域の親睦を深めることが神輿担ぎの目的となっているのが現状でしょう。
Q.神輿っていつあるの?
春から秋にかけてが多いようです。地域の神社が主催する祭りに伴い、神輿を担ぐことが一般的です。碑文谷八幡宮 秋季例大祭(以下、碑文谷秋祭)は毎年、敬老の日の前の2日間に開催され、神輿もこの2日間で担ぎます。
Q.神輿はどこにでもあるの?
基本的には町会(町内会・自治会)が神輿を保有していて、普段は町会が管理している倉庫などに保管されています。
ひとつの町会でひとつの神輿を所有しているとは限りません。複数の神輿を所有している場合もあります。また、複数の町会が合同で神輿を保有しているというケースもよくあります。
全国的に神輿を担ぐ文化・伝統はあると思いますが、地域によってはない場合もあります(過疎化によってなくなったりも)。
Q.どこからどこまで担いでるの?
祭りになると、神輿が組み立てられ、特定の場所に設置されます。その場所は地域によってさまざまです。ちょっとした広場(駐車場)、御仮屋(おかりや)≒御旅所、御神酒所(おみきしょ)付近などなど。
三谷北町会は学芸大学駅前(西口)が御神酒所。ここがスタート(&ゴール)地点です。
向原西町会は碑文谷鬼子母神(きしもじん)が神酒所です。
神輿はスタート地点から祭りが開催されている神社へ向かい、参道を通って社殿へ入り、そこで宮司(あるいは神職)からお祓いをしてもらいます(宮入)。
その後、町内へ戻り、町内を練り歩く(町内巡行)というルートが一般的だと思います。
町内巡行は夕方ごろに終わる町会もあれば、夜まで担ぐ町会もあります。
※宮入はせず、町内巡行だけの町会もあります
Q.誰が神輿を担いでるの?
神輿を担いでいるのは、その神輿を所有している町会の人たちが中心です。ただ、町会の人たちだけとは限りません。詳細は後述しますが、神輿を担ぐために他地域から人がやって来る場合もあります。
Q.私でも神輿を担げる?住んでいる地域の町会の神輿じゃないと担いじゃだめ?
地域によっては町会に所属していなければ担げない、その町に住んでる人orその町で働いている人しか担げないなど、条件があるかもしれません。町会によって違いますから、まずは聞いてみて下さい(詳細は次項)。
その地域の繁栄を祈願し、親睦を深めるというのが実情でしょうから、住んでいる町内の神輿を担がせてもらうというのが理想かもしれません。ただ、現実的にはそうなってはいません。この件に関しても後述します。
余談ですが、筆者は三社祭、碑文谷秋祭などで担いだことがありますが、住んでいる町の神輿を担いだことはありません。すべて他地域の神輿です。
Q.神輿を担ぐためにはどうすれば?
神輿に関わっている町会の方に連絡を取り相談してみましょう。連絡先がわからない、そういう方と面識がないという場合は、町内に建っている案内板・掲示板等をチェックしてみて下さい。祭りの季節が近づいて来たら、このように担ぎ手を募集している場合があります。
ただ、どこの誰ともわからない、見ず知らずの人からいきなり「神輿を担ぎたいんですけど」と連絡があっても、町会側は困惑するかもしれません(担ぎ手を募集していたとしても)。
道ですれ違ったら挨拶をしていて、顔は見知っているとか、よく利用する商店では顔を覚えられていて、店の方から話を通してもらえそうとか、できればそれくらいの関係性を持った上で相談したいところです。
あるいは、その地域の飲み屋などへよく出入りしていると、「今度担がない?」みたいな話になることもあります。私は毎年そうですし今年もそうでした。私が神輿を担ぐに至った経緯に関しては、後ほどご紹介致します。
なお、半纏や接待の準備がありますから、町会側としては早めに人数を把握しておきたいと思われているはず。できるだけ早くコンタクトを取っておいたほうがいいかもしれません。遅くとも祭りの1ヶ月前くらいとか?
Q.神輿を担ぐために必要なものは?
その町会によってさまざまだと思いますが、ダボ(あるいは鯉口)、足袋(たび)といった直接肌に触れる物は自前で用意して、半纏(はんてん)と帯は町会から借りるのが一般的です。実際に担ぐとなったら、町会の方たちが詳しく教えてくれるはずです。
こちらがダボの上下。私は楽天市場で購入しました。上下合計で3500円(送料込)ほど。
足袋は裏にゴムがついた祭り用の足袋です。
大別すると2種あります。クッション入りとクッションなし。前者は2500円~5000円ほど、後者は700円~1500円ほど。初めて担ぐ、来年はどうかわからない、その程度でしたら安い物でいいと思います。クッションがないと足の裏が痛くなりますが、まあ、我慢できる程度です(靴下を履いて足袋を履くといいですよ)。
足袋には「四枚コハゼ」といった記載があります。コハゼとは後ろ側(アキレス腱側)にある留め金で、これが四枚あるという意味です。枚数が多くなれば、それだけ足首部分が長くなります。とりあえず四枚コハゼを選んでおけば問題ありません。
足袋もネットで売っているのですが、私は洋品店で購入しました。
祭りの季節になると、商店街の洋品店・雑貨店等が足袋やダボ、股引などの祭り関連用具を大々的に扱うようになることがしばしばです。
貸して頂いた半纏(&帯)を着て記念撮影。頭に巻いているのは持参した手ぬぐいです。手ぬぐいは何でも構いません。私の手ぬぐいはホッピー手ぬぐい。粋に巻ければかっこいいんですけどね。これは適当。
神輿を担ぐ間の持ち物ですが、私はダボパンツについている胴ポケットに入れていました(小銭入れとスマホ)。胴ポケットがなければ、ジップロックに物をまとめて入れ、懐にしまっておけば事足ります。神輿に慣れている女の子は和柄の小さな斜めがけポシェットを使っていました。
Q.当日、どうすれば?
町会の方から集合時間・場所の指示があると思います。私はお世話して頂ける方のご自宅に、神輿がスタートする30分前に行きました。ここで着替えをし、荷物を置かせてもらいます。
ちなみに、行き帰りはダボのままでOKです。足元は雪駄やサンダル、スニーカーでまったく問題ありません。
Q.どんなスケジュール?
祭りによって、町会によってさまざまです。2日に渡る祭りを仮定して一例を挙げてみます。
1日目(宵宮/前祭)
14:00 子供神輿・山車町内巡行
18:00 神輿町内巡行
2日目(本祭)
10:00 神輿・山車出発→宮入
16:00 神輿町内巡行
昼にポッカリと時間が空くこともしばしば。その際はおのおの自由に過ごしています。ここで飲み過ぎると夜の渡御に響くので要注意w
Q.ずっと神輿を担いでなきゃだめ?
仮に午前で2時間、午後で2時間、宮入・町内渡御があるとします。計4時間、ずっと担ぎっぱなしというわけではありません。途中で休憩がありますし、また、疲れたら担ぐのをいったんやめることもできます。あるいは、どうしてもこれから仕事が……という場合は、もちろん事前に了承を得た上で、中抜けすることもできると思います。
Q.ちゃんと担げるかな?担ぎ方のコツは?
初めてでも担げますのでご安心を。
写真をご覧の通り、たくさんの女性たちも担いでいます。身長が低いと肩に担ぎ棒が乗らないかもしれませんが、それはそれでOKです。逆に背が高いと大変です。もろに肩に乗って来ます。超重たいし超痛いw
肩に担ぎ棒が乗ったら、神輿(担ぎ棒)が上下するのに合わせて、肩を担ぎ棒に密着させ、自身も上下に動きます。これ重要。こうしないと、肩にゴンゴンとずっと棒があたることになり、とても痛いです。まあ、うまく担げていたとしても痛くはなるのですが。
かけ声は周りに合わせていれば大丈夫。なんとなくで問題ありません(特別に決まりがある場合は別ですが)。声は出しましょう。その方が盛り上がりますし、不思議なことに声を出していた方が担ぐのが楽です。いやほんとそう。
神輿の現実~担ぎ手不足と神輿会
神輿は町会が所有していることがほとんどで、町会の方々が中心となって担ぐわけですが、それとは別に有志が集い神輿会なるものが組織されている場合もあります。神輿好きの同好会のようなものです。
神輿会は単なる寄り集まりというだけではなく、時に神輿に関する諸々のことを取り仕切る役割も果たします。さらに、各地の神輿会と連携し、神輿会メンバーがお互いにそれぞれの地域の神輿を担ぎに遠征するというケースもあります。
こうした遠征には神輿好き同士の親睦を深めるという以上の意味があります。近年は神輿の担ぎ手が少なくなってきています。そこで他地域から担ぎ手に来てもらうというわけです。
今回の碑文谷秋祭に誘って頂いた方・Aさんは神輿会・碑文谷睦會の長でもあります。Aさんは担ぎ手を組織し、他地域の祭りへ出向き神輿を担ぎ、あるいは自身の地域で祭りがあれば、他地域の方に来てもらう手筈を整えてらっしゃいます。だから、年中いっつも神輿。
こちらは2017年9月9日、10日に開かれた大鳥神社(目黒)の目黒大鳥神社例大祭。Aさんは神輿会として大鳥町会宮本に"遠征"していました。遠征するだけではありません。ご自身が住む地域(向原西町会)の碑文谷秋祭となると、他地域の神輿会の方々を呼びます。さらに、自分の周りの方々にも声をかけ、担ぎ手を集います。
今回の碑文谷秋祭もそうです。遠くから神輿会のお仲間が大勢いらっしゃっていました。そして、飲み屋で「今年、うちで担がない?」とAさんから誘われた内の一人が私です。
ある町会の方に聞いたことがあります。できれば50~60人くらいは集まってほしい。けど、町会内の担ぎ手は実質的に15人ほど。これでは担げないので、あとは他地域から応援に来てもらっていると。
駅近くなど商店が集まっているような地域だと、比較的人が集まりやすいでしょうね。逆に住宅街、特に最近になってマンションが乱立するようになった地域や、他地域から移り住む人が多い地域だと、なかなか人が集まらないかもしれません。また、町会に所属する人も減少傾向にあると思います。高齢化で担げる人が減っているということもあるでしょう。ですから、神輿を出すというのは、傍から見るより大変なことなのです。
神輿を通じた地域との関わり合い
神輿には手間とお金がかかる
沿道に提灯をぶら下げ、警察署に道路使用許可申請を出して、案内状やポスターなどを刷って各所に貼り、御仮屋や御神酒所にテントを建て、飲食物を用意し、貸し出した半纏・帯は使用後、回収してクリーニングに出し、すべてが終われば後片付け。
それはそれは手間暇、コストがかかっています。どこからお金が出てるかというと、町会費(自治会費)、あるいは寄付です。
この記事を読んでいる方の中には、町会に属しておらず、町会費のようなものを払っていない方も多いことでしょう。私もそうです。そんな人間が「神輿だけ担がせて」というのは、悪く言えば「いいとこ取り」なわけです。
ずっと昔から、何代にも渡って、町の文化・伝統を受け継いできて、これに誇りを持ち、手間とお金をかけて神輿を担いでる地元の方々がいらっしゃいます。そこに混ざって神輿を担がせて頂くわけですから、そういう方々がいらっしゃるおかげで担げるということに感謝しつつ参加させて頂く、という姿勢で神輿を担ぎたいものです。
地域へのカジュアルなコミット
初めての年は神輿を担ぐだけでもいい。けど、翌年は、たとえば祭りの時期が近づいて来たら、ほんのちょっとでもいいから何かお手伝いするとか、祭りの翌日、後片付けに参加させて頂くとか、そういうことがあるとよりいいかもしれませんね。
マンションの借家暮らしで、この地域にいつまで住むかわからない。そういう方が地域に深く関わるのは難しいかもしれません。あるいは、正直、いろいろなしがらみが煩わしいと感じることもあるでしょう。けど一方で、少しはこの地域に関わりたい。カジュアルに町の人たちと交流を持つことができればいいなと感じている人もいると思います。
もちろん、それが許されるのであればという条件付きではありますが、ゆるく、カジュアルに、ライトに、地域(およびその周辺)と関わるってのは、なかなかいいものです。そして、それを実現してくれるひとつのいいきっかけが神輿でしょう。
もしかしたら、神輿を担ぐことで、この町をもっと好きになるかもしれない。場合によっては、より深くその地域に関わっていきたいと思うようになるかもしれません。いずれにせよ、楽しいですから、一度、神輿を担いでみてはいかがでしょうか?
向原西町会のみなさん、ありがとうございました!
住んではいませんが、向原西町会の界隈は大好きな地域です。今回、そんな地域の神輿を担げて、とても光栄です。
向原西町会のみなさま、碑文谷睦會のみなさまには本当にお世話になりました。とてもいい経験ができました。ありがとうございました!