活気に溢れる庶民派八百屋
武蔵小山駅から徒歩9分、西小山駅から徒歩12分。学芸大学駅からだと20分くらいかかりますが、目黒本町界隈にお住まいであればすぐ。平和通り商店街に築地マルシェ倶楽部 目黒本町店という八百屋/青果店があります。2021年3月11日にオープンしました。
2軒並んでいて、向かって右手は本館で野菜・フルーツがあります。左手は食品館で乾物などがあります。
豊洲市場の仲買や八百屋の団体・築地マルシェ倶楽部が運営に関わっています。40年ほどの歴史がある団体だそう。築地マルシェ倶楽部、築地マルシェ倶楽部の歴史、そして漫画家・本宮ひろ志との関係については後ほど。
すぐ近くには飲食店も仕入れに来る、界隈で最大級の八百屋・二葉屋があったのですが、2021年2月末、83年という歴史に幕を閉じました。そして、その2週間後には新たな八百屋・築地マルシェ倶楽部がオープンしたという次第です。
オープン当初は狭いほうの物件だけでした。
2022年4月頃、すぐ先に築地マルシェ倶楽部 フルーツ別館ができました。
2023年1月下旬、フルーツ別館は本店隣に移転し、築地マルシェ倶楽部 果物&食品館になりました。
そして2024年4月、現在のような形に落ち着きました。
以下はオープン当初の写真です。
野菜・果物のほか、乾物や調味料、練り物などもあります。
品数が少ないというのは二葉屋と比べた話。一般的な八百屋としては、とんでもない種類です。狭い店内に野菜・果物がぎっしり。見ているだけでワクワクします。
「〇〇さん(※某ラーメン屋)が明日、キャベツひと箱だって。大丈夫? はーい。大丈夫だって。明日ね。よろしくー」
「あっちがなくなってどうしようかと思ってたのよ。こっちができてよかったわぁ」
ああ、これこれ。この雰囲気。八百屋って楽しいなぁ。
あまりに安いので、いろいろ買いそうになってしまったのですが、ぐっとこらえます。これから週に何度も通うことになるんだ。焦って買うことはない。その日に必要な分だけ買っていこう。
ネギを一束買って、関屋城南食品へ向かい、餃子の皮とうどんを買って、業務スーパー西小山店をのぞき、学芸大学へと戻ってきました。
こちらが買ってきたネギ。適当に刻んで……
大好きな関屋城南食品の生きしめん。大好きな八百屋、新しくできた八百屋で買ったネギ。大好きな業務スーパーで買った牛肉。大好きだったけど閉店してしまった二葉屋で買った唐辛子。大好きだったけど閉店してしまった器々で買った丼ぶり。
何の変哲もないうどんです。けど、"好き"で溢れたこのうどんは、私にとっては特別な一杯。この上なくおいしい。
あはは。「後藤」だって。レシートすらも特別。いや、単なる偶然なんですがw
安くて、楽しくて、おいしい八百屋・築地マルシェ倶楽部 目黒本町店。ごくごく普通の八百屋です。けど、毎日でも通いたくなる普通の八百屋がそばにあるのって、実は特別なことなんですよねぇ。二葉屋がなくなるとわかってそれを実感し、築地マルシェ倶楽部 目黒本町店ができて、より一層その実感が強くなりました。
本宮ひろ志と八百屋の銀次郎
築地マルシェ倶楽部 目黒本町店の店頭に本宮ひろ志の漫画『硬派銀次郎』が飾られていました。なんだろな。写真を撮っていると、お店の方が声をかけてきました。
「知ってる?」
「いえ」
「『巨人の星』の川崎のぼるとか、『あしたのジョー』のちばてつやとかとかと同じ時代の……」
「あ、もちろん本宮ひろ志は知ってます。けど、この漫画は知りませんでした。本宮ひろ志はこの辺りのご出身なんですか?」
「いや、友達なんだよ」
「あー、そうなんですか」
「千葉には銀次郎って八百屋もあってね」
「へー」
混み合ってましたし、いろいろと考え事をしていたので、サラッと流してしまいました。けど、店を出て自転車をこぎながら、頭の中は「?」だらけ。家に帰って調べてみると。
千葉県の市川駅に銀次郎 市川本店という八百屋があります。銀次郎 市川本店が入っているビルは本宮ビル。本宮ひろ志が建てたビルです。
もともと、銀次郎創業者・興梠憲男(こおろぎのりお)さんは野菜の引き売りをしていたそう。ふとしたきっかけで本宮ひろ志と出会い、意気投合。本宮ビル(1979年築)が建つ前から本宮ひろ志が場所を貸し、興梠憲男さんは八百屋・銀次郎を始めました(ビルが建つ前の屋号は青空市場)。もちろん店名は本宮ひろ志の漫画『硬派銀次郎』に由来し、イラストも使わせてくれたのだとか。
ゴルフが好きな同い年同士ということで気が合ったんですかね。気が合い過ぎたせいか、本宮ひろ志は漫画『やぶれかぶれ』で登場人物に「八百屋の銀次郎で野菜でも売りながらゴルフでもやってくらすさ。」というセリフを言わせ、さらには『グッドジョブ 八百屋銀次郎編』という八百屋がプロゴルファーを目指すという漫画まで描いています。
なお、『硬派銀次郎』にはコオロギという人物が登場します。銀次郎創業者・興梠憲男さんから取ったのか、あるいは逆に創業者が漫画からコオロギという名前を取って愛称的に使っているのか。
話を八百屋に戻しまして。
銀次郎は規模を拡大。現在、関東には銀次郎と名のつく八百屋が数えきれないほどあります。ただ、これらがすべて資本関係のある姉妹店というわけでもなさそうです。暖簾分け的な店舗もあるかもしれませんし、また、全日食チェーンというボランタリーチェーンが絡んでいたりもします。実態はよくわかりません。
参考/街歩いて、食べ歩いて、また街歩いて。:目利きの銀次郎 ②
銀次郎と築地マルシェ倶楽部
さて、2010年に築地市場取次店 銀次郎 プレナ幕張店、築地市場取次店 銀次郎 大森海岸店という八百屋がオープンしました。いずれもさほど長くは続かなかったのですが、プレナ幕張店はオープンした3ヶ月後、築地マルシェ プレナ幕張店と改名しました。
そして、2013年には築地マルシェ Izumi浅草店がオープン。2015年には松陰神社の青果いなみねが閉店し、そこに築地マルシェ 松陰神社前店(世田谷店?)がオープンしました(現在は野菜屋マチルダ/Matildaやおや みたあじ)。
銀次郎、築地マルシェ/築地マルシェ倶楽部――具体的にどのような関係かはよくわかりません。ただ、まったくの無関係ということではないはずです。株式会社築地マルシェ倶楽部が法人登記している住所は銀次郎 市川本店と同じ(千葉県市川市市川南1-1-3)。そして、築地マルシェ倶楽部 目黒本町店には本宮ひろ志『硬派銀次郎』が飾られていて、働いている方が本宮ひろ志の「友達」ともおっしゃっているわけですから(その本人が友達なのか、つながりのある銀次郎の創業者が友達という意味だったのかは不明)。
築地マルシェ倶楽部の役割
築地マルシェ倶楽部 目黒本町店の方に少し話をうかがったところ、仲買や八百屋が協力して店を出しているということ、ここが1号店で、今後、店舗を増やしていきたいということをおっしゃっていました(ということは、浅草の築地マルシェとは直接的な関係性はない?)。
二葉屋が閉店した直後に築地マルシェ倶楽部 目黒本町店が開店……偶然なわけがありません。莫大な売上を誇っていたであろう二葉屋が閉店したら、客だけではなく店で働くスタッフも店に卸している業者も困ります。二葉屋で失われる売上を補うため、そして八百屋がなくなり困るであろう多くの近隣住民のため、あえて二葉屋の近くに出店したのでしょうね。
なるほど、そう考えると築地マルシェ倶楽部の役割も見えてきそうです。単に八百屋を運営するというだけではなく、仲間が困ったときに助け合う、そんな互助会的な役割もあるのかも? あるいは八百屋の開業支援、コンサルタントなんかも?
店舗たる築地マルシェ倶楽部 目黒本町店と築地マルシェ倶楽部がどういう関係なのか、実情がわかりましたら、追記します。市場内の有志・仲間たちであれやこれやというのはよくあって、外から見ただけではよくわからないんですよねぇ。
あ。本宮「ひろし」w
SHOP DATA
- 築地マルシェ倶楽部 目黒本町店
- 東京都目黒区目黒本町5-33-24 メゾンだるま1階
- 03-3713-0831
- 公式