学芸大学駅から徒歩3分。東横線高架下の飲食エリア・学大横丁に鉄板BISTRO Akahoshiというお店があります。対面式の鉄板料理店です。
※追記:2023年3月23日に閉店しました。追記以上
オーナー店主は赤星智和さん。久留米市出身。サッカー・野球で有名な筑陽学園卒です。元日本代表のストライカー・久保竜彦と同窓生? 同級生? チームメイトでもあったとか?
赤星さんはホテルの鉄板焼きや洋服屋などで働き、その後、フランスへ渡って修行。日本に戻って、リストランテASOやスペイン料理店などで経験を積み、2012年4月11日、鉄板BISTRO Akahoshiをオープンさせました。
私と同い年くらいかな?と思っていたら、4つ下でした。シュッとした精悍な男前なので、実年齢より上に見えるんだろうなw
余談ですが、鉄板BISTRO Akahoshiがオープンした2012年は学大のターニングポイントの年です。学大高架下が全面開業。学大角打、アオギリ(現呑家)といったその後の学大を占うような新感覚の店が続々とオープンしました。学大飲食の一大イベント・学大はしご酒祭が始まったのも2012年。
カウンター12席と間仕切りされたテーブル4名席がひとつ。その日は満席だったのですが、私たち二人以外は常連さんでした。
なお、鉄板BISTRO Akahoshiは完全予約制です。こんな時期だからということも? いずれにせよ、行く際は必ず電話で予約を取って下さい。
ドリンクは基本的にビールとワインだけなのですが、カウンター上にはウィスキーもあるので、聞けば他にもあるかもしれません。
また、ワインだけのメニューブックもあります。ただ、日によってあるもの・ないものがあるでしょうから、ワインが飲みたければ、相談するのがいいかもしれませんね。
フードはメニューブックの定番料理のほか、黒板にはその日のおすすめ料理、旬の食材を使った料理も書かれています。前菜、温野菜、魚介、肉からそれぞれ頼んでいくことにしました。
一杯目はもちろんこうなりますわね。サッポロラガービール、通称・赤星。二杯目以降は赤ワイン(カベルネだったかな?)でした。
一品目、前菜からリピート率No.1というポテトサラダ。これはハーフサイズです。それだけしかもう残っていなかったから。
ほのかな酸味と甘み。しっとり滑らかクリーミー。コショウがピリッ。何かひとつありそうなコクも感じます。おいしいなぁ。レディーボーデンサイズで持って来いw
温野菜から3種の茸炒め(しめじ、舞茸、エリンギ)。ガーリックがきいていてパンチがあるのですが、生クリームでまろやかに仕上がっています。
細かいのはレッドオニオンのアッシェかな? いろいろな下準備があってこそ、即座に焼き始めることができるんだね。鉄板焼きは「焼く」にフォーカスされるけど、それ以外の部分ってのも重要なんだろうなぁ。
イタリア産サマートリュフのオムレツ。トロトロなオムレツに濃厚なソース。サマートリュフとはいえ、ここまでたくさん削られると香りも豊か。行儀悪いですが、皿を持ち上げ、ソースも飲み干します。おそらくバゲットがあるでしょうから、本当はバゲットを頼むのが正解でしょう。
大粒ホタテ貝のポアレ しそバターソース。ホタテは片面だけをしっかり焼き付け、サッと返すだけでした。ミディアムレアなホタテは甘く、しそとバターはガッツリ濃厚。
先のオムレツもそうなんですが、強いソースでパンチを出しているのも、なるほど鉄板"ビストロ"なのかと感じさせます。
シャンシャンシャン、カツッカツッカツッ。鉄板とヘラがぶつかる音。ジュッという焼ける音。ガーリックや肉が焼けた香ばしい香りがフワッ。
他の客の注文との兼ね合いで、少々時間がかかることもあるのですが、待ち時間も飽きることがありません。五感すべてに訴えかけてくる鉄板ライブ。
「ねぇ、ひろぽん、あれ何?」(同伴者)
「オムライスか。メニューにはないね。常連さんに特別に作ってるんだろうね」
「なんか見てるだけで楽しいね」
そうかぁ。魚介のあとに肉を焼く。肉のあとに野菜を焼く。その都度、ヘラでシャッと焦げなどをこそぎ落しはしますが、すべてを同じ鉄板で焼いています。ですから、おそらく前に焼いたものの成分も残っているはず。
単に焼くと言っても、それまで焼いてきたすべての素材の成分が積み重なり、その残り香が肉へ、魚介へ、野菜へと移っていく。フライパンで調理する料理と鉄板料理の差はこんなところにもあるんだろうなぁ。確かに鉄板焼きって面白い。
「肉はどうしようか」
「ステーキがいい」
「ハンバーグもおいしそうだしなぁ」
「じゃあ、両方いっちゃいなさいよ。食べられるでしょ?」
ちなみに、あることのお礼にご馳走してくれるというので、私が鉄板BISTRO Akahoshiを希望してやって来ました。そんじゃ遠慮なくw
「ハンバーグとステーキをお願いしたいのですが、今日の肉は何ですか?」
「オーストラリア産のグラスフェッドビーフです。草(グラス)だけで飼育された牛です。部位はフィレで、オメガ3脂肪酸が多く含まれてます。何グラムにしましょう?」
「普通はどれくらいですか?」
「だいたい150gくらいでしょうか」
「じゃあ目玉焼きのハンバーグと、ステーキ200gでお願いします」
ちょうどストック分のハンバーグが切れていたので、私たちの注文したハンバーグをこね始めました。ああ、あれだけしっかりと塩をしなきゃいけないのか。保存分のふたつには油を垂らしてるぞ。これで乾燥を防ぐのかな。
両面にそこまで焼き色をつけない段階で鉄板から外して休ませます。ほう、こんなにしっかり休ませるんだ。
十分休みを取ったハンバーグを再び鉄板で焼き、仕上げにソースをたっぷりとまとわせ、型で丸く焼き上げた半熟の目玉焼きを乗せます。
手作りハンバーグ 半熟目玉焼きのせ 自家製デミグラスソース。うーん。いい顔。
肉々しいハンバーグです。むっちり。火の通り方も完璧。下味の塩味がビシッと決まっているので、パンチがあります。これに濃厚なソースとまろやかな黄身がからみ合い、それはそれはもう。こってりとしていて、食べ応えのあるハンバーグでした。やばい。
ハンバーグをこね始める前に冷蔵庫から出されてたフィレを鉄板に置くと、指で宙をサササッと切ります。そして「よし」という表情。シミュレーションだ。
肉の形状、厚みは毎回異なります。これにどう火を入れ、どうカットするかも毎回変わります。だから、どうするかをあらかじめ計算しておくのでしょう。
先端部分を切り分け、先に鉄板から上げました。残りをサイコロ状にカットして、転がしながら火を通していきます。
オーストラリア産グラスフェッドビーフのフィレ。しっかりと肉感がありつつも、この上なく柔らかい。噛むとジワリと肉汁が漏れ出てきます。やっぱ肉は塊がいいね。「肉食ってる!」という感じがして。
皿の上の肉を平らげても、まだ残っています。先に鉄板から上げておいた分です。第二弾の肉もあっという間になくなりました。食べることに没頭し過ぎて、〆にナポリタンを頼むのを忘れてたw
鉄板焼きは客の目の前で包み隠さず、すべてをさらけ出して調理します。ですから、ごまかしがきかない。失敗の許されない一発勝負。
単純な食材は流すように調理することもあるのでしょうけど、肉や魚介といったシビアさが求められるような食材は神経を研ぎ澄まして調理する必要があります。
さらに、場合によっては常連さんからメニューにはない突然のリクエストがあるかもしれない。そうなると頭をフル回転させなければいけません。
だから鉄板料理は大変……なんですが、きっと本人はこれこそを望んでいるのでしょう。ここに快感を覚えるからこそ、鉄板料理をやっているわけで。
鉄板料理の料理人はホール全体を見渡して、客の様子をうかがい、それぞれが何を望んでいるかをいち早く察知。そして、注文の順序と調理の順序を整理しつつ、手際よく調理し、最適なタイミングで料理を客に出す。
そこで求められるのはテクニックや手際のよさはもちろん、視野の広さ、瞬間の判断力・決断力、柔軟な想像力、クリエイティビティ。
「敵のポジショニングはこう。それを見たあいつならこう動く。だからあそこへボールを出そう」
試合をコントロールするミッドフィルダー、そう、中田英寿のような。
一方、私はというと、供された肉たちをただひたすらかきこむのみ。中田英寿の狙いすましたスルーパスを、力強くゴールへ叩き込む久保竜彦のように。
もちろん一見でも楽しめますが、何度も通い、料理人とコミュニケーションを取り、お互いのことがわかってくると、もっと楽しくなると思います。
(今度はこんなパスを出してみよう)
(こう動いたら、こいつはボールをどう出すかな?)
そんな駆け引きも、料理人と客が対面する鉄板焼きの面白さでしょう。
デート、女子会、ちょっとしたお祝い事、友人同士の何気ない夕食……カジュアルなお店ですから、どんなシチュエーションでも利用しやすいと思います。一度、鉄板BISTRO Akahoshiというフィールドへ絶妙なスルーパスを受けに行ってみてはいかがでしょうか?w
SHOP DATA
- 鉄板BISTRO★Akahoshi
- 東京都目黒区鷹番2-21-17
- 03-3715-1713