学芸大学駅から徒歩3分。東口商店街沿いにスタンドバインミー(Stand Bánh Mì)というお店があります。2017年10月1日、西口方面にオープン。2019年8月1日、現在地・東口商店街沿いに移転しました。
※追記:2022年8月、自由が丘に姉妹店・L'Atelier de Stand Bánh Mìがオープン。もともとキッチンだった場所が店舗になりました(東京都目黒区自由が丘1-3-21)。追記以上
※追記:2024年6月現在、以下の店舗を展開しています。
- Stand Bánh Mì(学芸大学)
- L’Atelier de Stand Bánh Mì(自由が丘)
- Stand Bò Bún(祐天寺)
- CƠME by Stand Bánh Mì(麻布台ヒルズ)
- Stand Phở You(渋谷)※2024年夏オープン
カウンター約8席と4人掛けテーブル席がひとつ。単なるエスニック料理店とは趣を異にします。オシャレカフェともまた違う。異国情緒というか何というか、独特な雰囲気。けど、それがとても心地いい。学芸大学の商店街というのを一瞬忘れさせますw
こちらがランチメニュー。
スタンドバインミーはベトナムのサンドウィッチ・バインミーが名物のベトナム料理店です。バインミーは屋台などで売られているベトナムのファストフード。バインミーの本来の意味はパンなのですが、バゲットに野菜やハーブ、肉などが挟んだものもバインミーと呼ばれています。
ただ、オープン当初はバインミーがメインだったのですが、移転後はベトナム料理店といった趣が強くなりました。バインミーの他にもカレーライスやフォー、ボブンなどもあります。どれもこれもおいしそ……あ。
私の考案した牛しぐれ煮バインミーだw 期間限定だったのですが、定番として残して頂いています。これに関しては後述。
夜のメニューとドリンクはこんな感じ。
とりあえず、まずはバインミーからご紹介。
スタンドバインミーの恐るべきバインミー
旧店舗時代
旧店舗時代のデフォルトのバインミーです。
パンは少し温められています。表面はサクッとしていて、中はフカッ、モチッ。一般的なフランスパンよりも軽いです。米粉も使われているからでしょうか。香ばしくて甘みがあります。
ハーブはパクチー、ミント、ディル。ニンジンやアーリーレッドが入っていて、肉は自家製の豚のハム。パクチー感はそこまで強くありません。それよりもミント、ディルの爽やかな風味が印象的。ハーブ、野菜、肉は季節や仕入れの状況によって変わるそうです。ハーブ増し(+100円)もでき、また、パクチーが苦手という人はパクチー抜きにもしてもらえます。
軽めの昼食といった感じのボリューム感です。うん、こりゃうまいな。食感もいいし、パンと具の味のバランスもいい。ついでに丸い木製の皿も素敵(後藤睦氏作)。
さて、スタンドバインミーのすごさは実はここにあります。切り開き方。
写真をよく見て下さい。パンの真ん中で裂いてないですよね。上側に切り込みを入れています。ニュアンスとしてはフタをしているような感じ。こうすることで見栄えよく置けるし、挟んで持ちやすい=食べやすくなる。
「単に開き方を工夫してるってだけでしょ?」
いいですか、この店はそこまでやるんです。バインミーをはじめ、すべての料理がどこまで考え尽されているかということが、ここでわかります。スタンドバインミーのすごさがここに集約されていると言っても過言ではありません。
恐るべしスタンドバインミー。
進化したバインミー
一時、カフェ併設のベトナムセレクトショップ・333(バーバーバー)でもスタンドバインミーのバインミーが食べられました。
真鱈フライバインミー。オープン当初の素朴な感じもよかったのですが、一層おいしくなっていました。塩がビシッと決まってて、真鱈フライは大きくて食べごたえがあります。うまっ。
私が考案した牛しぐれ煮バインミー
2018年末、スタンドバインミーとビールの333がコラボしてバインミーレシピコンテストを開催しました。私もきのこタルタルのバインミーと牛しぐれ煮バインミーの2作品を応募し、牛しぐれ煮バインミーが優勝しました。
優勝特典として、実際に店舗で私考案の牛しぐれ煮バインミーが販売されました(2019年1月5日~1月31日2021年まで)。
こちらが牛しぐれ煮バインミー。いやぁ、うまいなぁ。ほんとうまい。私が作ったものよりもショウガ感が少なく、ハーブがしっかりきいていて、バランスがいい。当然、こちらのほうが断然うまい! やっぱプロはすごいなぁ。
和とベトナミーズの融合、新年感がこのバインミーのテーマでした。そこがしっかりと表現されていたのも嬉しい。
2019年10月時点ではメニューに含まれていました。もしよければぜひ。
※追記:2021年夏ごろに終了した模様。長い間、メニューに加えて頂きありがとうございました。追記以上
スタンドバインミーの多様性
上述の通り、移転する少し前からスタンドバインミーが変わりました。バインミー以外のベトナム料理に重心が少し移動したように見えます。
ただ、いつも激混みで、土日ともなれば行列になっています。ですから、なかなか行けなかったのですが、移転して約2ヶ月、ようやく。
こちらは甘辛和え細米麺「ボブン」。
甘ダレ牛肉と揚げ春巻きが乗った極細米麺を甘酸っぱいタレと和える「ボブン」とはフランスの料理名で、ベトナムでは「ブンボー」と呼ばれています。「ボー」は牛、「ブン」は麺を指します。
よく混ぜてひと口。あーあ。やばいやつだ。
全体的には甘味が支配しています。牛のうまみもたっぷり。麺はそうめんに似ていますが、食感はまるで違います。ムッチリ、モッチリ。
牛肉、揚げ春巻き、パクチー、ミント、ベトナムなます、アーリーレッド、きゅうり、ナッツ。モチッ、パリッ、シャクッ、カリッ、サクッ。それはそれは多彩な食材が合わさり、多種多様な味わい・食感を生み出します。
学芸大学で思い出したのは、さいとう屋の薬味やっこ、Farm Studio #203のデトックスサラダ、シェフズマルシェのサラダ、ステラの前菜盛り。すべてに共通しているのは多くの素材を組み合わせることで生まれる多重的おいしさ。
これの何がやばいかって、まず手間・コストがかかるということ。素材を組み合わせるにはセンスがいるということ。このボブンは見事にそれをやってのけています。だからやばい。
途中で自家製のスイートチリ(真ん中)を加えてみたり。
まっじでうまいなこりゃ。
"生"米麺大山鶏カレーフォー(太麺に変更)。
スパイスの適度な刺激とココナッツミルクの甘味。これらを鶏スープがまとめ、深みのある味わいに仕上げています。太麺のモッチモチ、ブリンブリンな食感も楽しい。これもうまいなぁ。
ベトナム料理は中国やフランスから影響を受けていると言われています。ですから、ベトナム料理にはそもそも多様性があると言えるでしょう。そんなベトナム料理にスタンドバインミーが手を加え、さらにこれを昇華させようとしているわけですから、そりゃもうすごい"ベトナム料理"となっているわけですよ。
「おいしい」とか「おしゃれ」とか、そんな言葉では表せないすごみ、いや、恐ろしさすらスタンドバインミーに感じてしまうのでした。えげつないな、スタンドバインミー。
旧店舗時代のスタンドバインミー
以下は旧店舗のオープン直後に書いたものです。
店内はスタンディング。最大で6名ほど入れるかな? ケース前はかなりカウンター幅が狭いけど。
※追記:オープン後2週間ほどして、スツールが置かれるようになったみたいです。追記以上
店頭にはベンチがあるので、天気のいい日は外も気持ちいいでしょうね(その後、店頭には置かれなくなった?)。テイクアウトもできます。
お店の外観・内観は、ザ・ベトナム! アジア!という感じではありません。淡いグリーンはベトナムの飲食店によくある色らしいのですが、ランプやタイル、店内に飾られたオブジェなどはアンティークなニュアンスがありつつフランス風。ベトナムはフランス領でしたからね。実際のベトナムもフレンチコロニアルの建築物がいっぱいあって、その雰囲気を再現しているのだとか。オシャレ。
バインミーの他にはコムガー(ベトナムの鶏飯)、フォーガー(鶏肉のフォー)、フォーボーコー(ベトナム風ビーフシチューのフォー)、生米麺のカオラウ(混ぜそばのようなもの。ホイアン名物のひとつ)、自家製チェー(スイーツ)などがあります。ドリンクはコーヒー、紅茶、チャイ、オレンジジュース、ベトナムビール。
バインミーには2種類あります。普通のバインミーとプレミアムバインミーです。一日限定15本のプレミアムバインミー(780円+200円)は国産無農薬小麦粉を使用。小麦のふすま(小麦の皮)も20%含まれています。詳しくは後述しますが、このパンは「スタンドバインミー」と「Meat&Bakery TAVERN (タバーン)」(中目黒)が協力して開発しています。
今回は初めてなので、プレーンなバインミー(780円)をお願いしました(上記参照)。
オープン日にうかがったのですが、スタッフらしき人が大勢いました。話を聞いてみたら、店のオーナー(社長と言ってたかな?)はバインミーを作ってる女性だそう。あとはお店のスタッフが数名(おそらく)と、お手伝い。お手伝いの方々は開業支援・飲食コンサルみたいな感じですかね。有機野菜、オーガニック野菜などが仕入れられるのも、彼らの人脈というか、仲間がいるからなんだとか。
店を出ると、バインミーのパンを作っているMeat&Bakery TAVERN (タバーン)(中目黒)の方がいらっしゃいました。その方にも話を聞きました。
一般的なパンとスタンドバインミーのバインミー用パンの大きな違いは米粉。ベトナムということで、独自に米粉を混ぜているのだそう。米粉を使ったパンは初めてなので、開発が大変だったようです。プレミアムバインミーに使われている無農薬小麦粉ですが、日本全国でこれを使ってるのは数軒だけ。それくらい希少なんだとか。
しっかし、なぜゆえタバーンなんだろうな。タバーンを運営してるCLASSIC INC.(恵比寿のALMA、夜木などの運営会社)、あるいは関連会社で飲食コンサルやってるCLASSIC & SESSIONS INC.が絡んでるのか!? あと、藤巻一臣氏も近しい関係なの? 何気にすごいな。
※後日、店主はメリメロ(Meli-Melo)(飯田橋)で働いていて独立し、スタンドバインミーをオープンさせたということがわかりました
※藤巻一臣氏は2つ前の記事・L’ottocento(ロットチェント)でご紹介したサローネグループのゼネラルマネージャーで、現在は山形県南陽市でワイナリーもやってる飲食界の大御所
街灯や店内のランプはフランスのVOX POPULI(ヴォックスポプリ)。ガラスに描かれたウィンドウサインはPelt Sign作。あえて「104」と部屋番号を表記するあたりもうまいしオシャレ。淡いグリーンも落ち着いてていい雰囲気。
ショップカードもオシャレな厚手の紙に金の箔押し。細かいところまでこだわってますなぁ。
営業時間は今のところ11:00~20:00ですが、様子見とのこと。変わる可能性もあります(その可能性が高いと思うw2017年11月3日から変わりました。下記参照)。スタンディングというのもその内変わるかもしれません(※その後、スツールが置かれるようになったみたいです)。
バインミー自体がキャッチーですし、お店はかわいらしくてオシャレ、もちろんおいしい。学芸大学の新たな名物店になるといいですね。
※追記:余裕で名物店となりましたw
※追記:移転に伴い、記事構成を大幅に修正しました(2019年10月)
SHOP DATA
- スタンドバインミー(Stand Bánh Mì)
- 東京都目黒区鷹番2-16-23
- 03-6451-0827