学芸大学駅から徒歩7分。東口商店街の輸入食料品店「カルディ」の角を右折。真っ直ぐ行くとイオンスタイル碑文谷に着くわけですが、その手前に「プティコレット(Petite Colette)」というパン屋があります。「飯塚精米店」のずっと先。
火・金・土しかやっていません。
内外観がパン屋っぽくありません。また、半地下のようになっているので、ちょっと入りづらいと感じるかもしれませんが、
こういう優しいお母さんがやってるので、ご安心をw
パンはひとつずつラップに包まれています。丁寧に作ったパンを大事に陳列。愛なんだろうなぁ。
どのパンも少し小さめに感じます。その分、お値段もお手頃な感じ。シルバー&コンクリートのスタイリッシュな内装と、かわいいパンがどうもミスマッチw けど、それは決して悪いわけじゃなく、妙な違和感が逆に面白い。
いろいろあって迷うのですが、油で揚げていないと書かれているカレーパン、キノコとチーズのパン(正式名失念)、レトロバゲットをチョイス。計550円ほど。会計時、少し話をさせて頂きました。
「こちら、週末だけですよね」
「いえ、火・金・土です」
「ああ、そうだそうだ。その他の日はどうしてらっしゃるんですか?」
「休んでるって思われるんですけど、パンを作ってるんです」
「それだけパン作りには時間がかかるってことなんですね」
「○○(※ピューレみたいな用語。失念)を作るのに時間がかかるんです。生クリームとか」
「カレーとかあんとか、パンの中に詰めるものを○○って言うんですね。なるほど。お一人で作ってらっしゃるんですか?」
「ほとんど一人です。もうこれで30年やってます」
「というと、198……」
「1986年からです。まだお生まれになってないんじゃないかしら」
「いえいえ。70年代生まれですよ(笑)」
「そうですか(笑)」
笑顔がチャーミング。とても優しい方でした。パン職人というよりもパン研究家って感じだったなぁw
さっそく頂いてみましょうかね。
今回はいつもの碑文谷公園ではなく、東口商店街沿いにある鷹番児童遊園。買ってきたパンがこちら。
まずはカレーパンから。
おおう! カレーパンじゃない! ピロシキだ!w いや、こうなることをほんの少し予見してはいました。というのも、
見た目が似てるカレーパンとピロシキが隣合わせ。混ざってる可能性もあるなぁ。一応、聞いておこうかなぁと買う時に思っていたんです。結局、聞かずにそのまま買ったのですが、まあでも、これはこれで。ピロシキをみずから選ぶことはまずないから、たまにはね。
もっちり、ふっくらした生地。具は少なめです。ネット上にある他のパンの写真を見ても、具は少なめでした。あくまでもパンが主役ということでしょうか。優しい味わいです。お母さんの人柄がそのまま出ているようなパン。もうひとつのキノコとチーズも同様でした。エノキかな? かすかにロースト香が漂っていて、穏やかな味わい。
両者とも大きく主張することのない素朴なパンでした。ほっこり。バゲットはどうやって食べようかな。おそらくバゲットも優しめでしょう。ガッツリしたものと合わせてみるか。
こちらがバゲット。一般的なバゲットの半分くらいの長さです。
だーん! こんな感じにしてみました。豚ハラミのステーキ、マディラソース・粒マスタードを添えて、バゲットともに。……うそ。見栄を張りました。マディラじゃなくて赤玉スイートワインw 作り方は後ほど。
まずはバゲットをそのままひと口。
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もうひと口。
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わわっ。こ、これは……バゲットだ。ちゃんとしたバゲットだ。クープのエッジはバリッ。クラストはパリッ。とても香ばしい。少し黄色みがかった中はしっとり、少しモチッ。小麦の甘みがしっかり出ています。うめぇ。
風味がしっかりしてるから、そのままでもおいしい。濃厚なハラミと一緒に食べても負けない。溢れ出た肉汁、赤玉ソースにつけてもいい。いやぁ、ほんとおいしいな。
惣菜系のパンはとにかく素朴でした。なのにバゲットはかなりの本格派。このギャップにも面喰いました。
※このサイズだとバゲットとは言えないかもしれないし、このモッチリ感はバタールに近い。けど、話の本筋はそういうこっちゃないので、とりあえずバゲットとしておきます
「プティコレット」がオープンした1980年代には、いわゆる"フランスパン"しかなかったはず。本格的なフランス的バゲットが世に普及し始めたのは2000年以降。2001年に「PAUL(ポール)」「メゾンカイザー」、2003年に「VIRON」がオープンして、"フランスパン"にもバゲットやバタール、パリジャン、カンパーニュなどいろいろあるということを日本は知りました。
今となっては本格的なバゲットも珍しくはありません。学芸大学に比較的近いところなら、「Bread Plant OZ(ブレッドプラントオズ)」や「シニフィアン シニフィエ(Signifiant Signifie)」などで、それはそれはうまいバゲットが食べられます。
一方、こういう流れとは別に、地域密着型の古くからある街場のパン屋というものもありまして、そういうパン屋で売られているのは、だいたいが昔ながらの"フランスパン"。仮に「バゲット」と表示して売られていても、「うーん、これをバゲットとは言わないよなぁ」というパンだったりします。
「プティコレット」はちょっと独特なお店で、街場のパン屋って感じもしないのですが、まあどちらかというとその類。なのに、ここには本格的なバゲットがある。それがなんとも不思議な感じ。
「プティコレット」も以前は"フランスパン"だったはず。けど、いつの頃からかバゲットを作り始めました。ということはつまり、それだけパンのことを勉強、探求、追求しているということです。30年間、ただ単に黙々とパンを作って来たわけじゃない。時代を見つめ、時代に合わせ、最先端の技法などを学びながら、進化し続けて来たのでしょう。このバゲットはそんなことを感じさせます。
パンが好きで好きでたまらないんだろうな。パン愛だ。いや、愛どころじゃない。そもそも、3日しか営業してないんですよ? 下準備に時間がかかり過ぎて。そこまでやりますかね。これはもう、パンに取り憑かれていると言っても過言じゃない。
「プティコレット」はパンのラボ。おいしいパン、最先端のパンを秘密裏に研究するのが本業で、週に3日だけその成果を商品として販売している。その証拠に、お母さんは研究者のようだし、お店もパン屋というより研究室のよう。優しそうに見えて、実はお母さんは日本のパン業界を裏から牛耳る……と妄想して笑っちゃいましたw
それはさて置き。
一般的なバゲットよりも少し割高で、「プティコレット」内でも少々お高めではありますが(とは言っても230円)、ぜひ一度「プティコレット」のバゲットを食べてみて下さい。これはほんとおいしいです。
というわけで、学芸大学タグ400件目の記事でした。
SHOP DATA
- プティコレット(Petite Colette)
- 東京都目黒区碑文谷5-3-13
- 03-3760-0777
- 公式
豚ハラミステーキの作り方
豚のハラミは牛のハラミと味が似ています。ジューシーで柔らかく、肉々しくて超うまい。しかも。
西小山の「業務スーパー」では88円/100g! こんなにうまいのに、この値付けおかしくね?w
この写真ではわかりづらいですが、ハラミは長細い帯状になっています。このパックには6本ほど入っていたかな。これにまずはしっかりと塩を振り、手で揉み込み、コショウをかけて、オリーブオイルを敷いたフライパンで焼きます。クミンを振るのもおすすめ。
焼き始めたら肉は動かさない。しっかり焼きつけて下さい。そうすると焦げ目ができます。これが香ばしさ、うまみとなります。メイラード反応というやつですな。
焼けたらカットして盛り付けます。カットしてから焼くんじゃなく、焼いてからカットね。肉汁をできるだけ逃さないためです。
ソースは赤玉を煮詰めるだけ。粘度がほしければ、砂糖やハチミツを少々加えてもいいでしょう。
あとはバジル、パセリなどを振りかけてみたりご自由に。
写真の緑はチャービルです。パセリも振ってます。
安いし激ウマ。豚ハラミを見つけたらぜひお試しを。
レトロバゲットってなんだ?
「プティコレット」で売られているバゲットはレトロバゲットという商品名です。「ル・ビリーヌ(Le blé et l’eau)」もレトロバケット。ググってみると、レトロバゲットという商品名でバゲットを販売しているお店がいっぱいありました。けど、レトロバゲットなるものの明確な定義は見あたりません。各店の商品にも共通点はありません(低温長時間発酵で作ったバゲットをレトロバゲットと呼ぶ例は多いようですが)。そもそもフランスにレトロバゲットというものはなさそうです。
以下はあくまでも想像です。
- VIRONはRETRODOR(レトロドール)社の小麦粉を使っていて、バゲット・レトロドール(baguette RETRODOR)などの商品を販売している
- VIRONもメゾンカイザーも、いや、フランスでは基本的に生地を低温長時間発酵させる
これらの状況が相まって、「フランスの伝統的な製法=低温長時間発酵でバゲットを作ったぞ! あのVIRONではバゲット・レトロドールって言うんだ。じゃあウチは「レトロバゲット」として売ろう! なんてったって本場フランスのレトロな製法に則って作った本格的なバゲットなんだから」て感じ?
まあ、そこまではっきりと思ってはいないかもしれませんが、「フランスの伝統的な製法によって作ったバゲット。よくある日本の"フランスパン"とは違います」ということをアピールしたい商品名なのかもしれませんね。あくまでも想像ですが。