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香氣 四川麺条 学芸大学店の担担麺は花椒のための担担麺。辛くて痺れる麻辣(マーラー)風味がしっかり堪能できます~麻辣の意味、山椒と花椒の違い、麺条・香氣とは

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学芸大学駅から徒歩5分。東口商店街を抜けた先の交差点に香氣(こうき) 四川麺条 学芸大学店という担担麺のお店があります。メニューはいろいろあるのですが、ラーメン屋と言っても差支えないでしょう。

運営しているのは(株)オレンジタイム。2005年に 香氣 四川麺条 学芸大学店を出店したのち、沼袋、祖師谷大蔵、経堂、千歳烏山にも店舗を構えています。学芸大学店、祖師谷大蔵店は直営、その他はフランチャイズかもしれません。

今回は相当久しぶり。2年は経ってるはず。3回目かな。

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角地に建っていて、二面どちらにも入口があるのですが、食券機は店内の右端にあるので、右手から入るといいでしょう。

※2021年12月に改装をして入口は一か所になりました

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基本的には担担麺、紅担担麺(辛)、烈炎担担麺(激辛)があって、それぞれに黒胡麻バージョンがあり、さらに、つけ麺もあります。

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店内はL字のカウンター席のみ。狭めで座っている人の背後を通り抜けるのがちょっと大変。

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ランチタイムはライス無料。中細ちぢれ麺かストレートの細麺が選べます。食券を渡したら、どちらがいいか聞かれます。

さて、香氣の担担麺を紹介する前に、前提となるいくつかのことを書いてみます。

麻辣の意味

まず、「麻辣(マーラー)」について。

麻は舌が痺れること、辣は舌がヒリヒリすることを意味します。料理においては麻は花椒(かしょう/ホアジャオ)による痺れ、辣は唐辛子による辛さがその典型です。

「辣という漢字はなんとなく辛そうに見える。けど、なぜ麻がしびれ?」

と思うかもしれませんが、麻酔、麻痺という言葉がありますよね。麻はしびれるという意味があるのです。

中国料理で重要な味付けである麻辣味。特に四川省の料理でよく使われます。その代表格が麻婆豆腐、麻辣火鍋です。

山椒と花椒の違い

次に山椒と花椒について。

山椒と花椒(華北山椒)はいずれもミカン科サンショウ属の落葉低木です。両者は同属別種。前者は日本原産、後者は中国原産です。

食材としての山椒と花椒を見ると、日本では山椒の芽、花、実、果皮を使いますが、中国では基本的に果皮のみを花椒として使います。ちなみに、花山椒は山椒の花のことで、花椒のことではありません。

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調味料としては山椒も花椒も、ホール(そのまま)でも粉末状でも売られています。

山椒と花椒は味も異なります。言葉にして表現するのが難しいのですが、山椒はスッとする穏やかな清涼感があります。花椒はこれがより強く、多いと舌にピリピリ来るほどの刺激を伴います。山椒より花椒のほうが風味が強いです。

五味と香味、香氣の意味

日本語の「香り」が中国語では「香氣」。中国語には「香氣四溢」という言い方があります。香りが周囲に漂う、いい香りで充満しているといった意味です。

公式サイトによると、香氣の担担麺の特徴は、

複数の香辛料(花椒・唐辛子・陳皮・桂皮・八角・生姜・その他、・・・)を使用。①麻味(痺れる山椒の味)②辣味(辛味)③甜味(甘味)④咸味(塩味)⑤酸味⑥苦味⑦香味を中心とした七つの味を持つ四川料理は独自の世界を築いております。

出典/担々麺 香氣|こだわり

とのことです。

一般的に五味と呼ばれるものがあり、その指すものは場合によってさまざまなのですが、中国料理では酸味、苦味、甘味、辛味、鹹味(咸味/塩味)が五味とされることが多いようです。これは五行思想における土・木・水・金・火に対応したもの。

香氣が7番目に挙げている、味としての香味がどのようなものなのかはわかりませんが、おそらくは香りを重要視しているという意味合いもあるのでしょう。だからこそ店名が香氣なんだと思います。

ちなみに麺条は小麦粉を練って細く延ばしたものを指します。日本で言うところのうどん、素麺、ラーメンをあえて中国語で表すなら、すべて麺条となります。ただ、そもそも中国の"ラーメン"(カッコ付き)自体がどちらかというと日本のうどんや素麺に近いもので……とこのあたりの話をしだすと長くなるので、詳細はウィキペディアさんに聞いて下さい。

では、香氣 四川麺条 学芸大学店の話に戻りましょう。

花椒のための担々麺

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カウンター上には花椒、青山椒、自家製香味酢があります。青山椒は「四川省金陽産の金陽青山椒を使用。金陽は青山椒発祥の地で最も上質とされてます。花椒よりさらに香り・しびれ味・カラ味が強く担担麺には欠かせない香辛料です。」という説明があります。金陽青山椒という種(しゅ)があるのでしょうかね。

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これは以前食べた紅担担麺。

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これは今回食べた烈炎担担麺。辛さも違いますが、乗っている唐辛子の本数も違う。これは今回気付きましたw

いずれにせよ、さほど"辛い"というわけではありません。辣の辛さより麻の清涼感が勝っています。辛い物がそれほど得意ではない連れでも、烈炎担担麺は普通に食べられていました。

もし物足りなければ、卓上の麻辣調味料を加えて下さい。青山椒を入れると、一気に麻感が高まります。陳皮(みかんの皮)と朝天辣椒(四川唐辛子)を漬け込んでいるという自家製香味酢もおいしいです。スープにまろやかさが出ます。

担担麺って店によってまったく違うじゃないですか。胡麻がきいていたり、汁があったりなかったり、がっつりパンチのあるものもあれば、さっぱりなものもある。このあたりは好みですよね。

参考/wikipedia:担担麺

香氣のスープは鶏と豚の清湯スープがベースだそうで、スープ自体はさっぱりです。

実は、香氣の担担麺はイマイチだと思っていました。確かに花椒の香りはいい。胡麻のコク、香ばしさもいい。けど、スープに厚みがない。もう少しうまみがしっかり出てるといいなぁと。けど、今回、改めて食べてみて、これが正解だと思い直しました。

もし、がっつりパンチのきいたスープだとどうなっていたでしょう。おそらく麻は死にます。あるいは、それでも麻がきくように花椒を増やす必要があるかもしれません。そうしてできあがった担担麺はきっと風味のインフレーションを引き起こし、単に濃いだけの担担麺になっていたはず。

料理によっては見るべき基準を変えたほうがいい。その最たる例が香氣です。香氣の担担麺は麻と辣。特に麻を重要視し、そのおいしさを表現しようとしている料理です。麻=花椒の風味を最大限においしく感じてもらうためには、スープ(のうまみ)はこれくらいの濃さじゃないといけなかったのです。私はそこを見誤っていました。

なんでもかんでも、うまみうまみ。それじゃあいかん。スパイスを活かしたいなら、それに応じたうまみの質・量がある――料理の本質のようなものをまたひとつ、香氣に教わったような気がしました。

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こちらは麻婆飯(マーボーハン)。確か大盛りだったような。

比較的甘みが強く出ている、まったり系の麻婆豆腐です。麻婆豆腐単体なら、正直、私の好みではありません。けど、こうしてご飯に乗せるなら、これが正解。やっぱりバランスなんだなぁ。

で、こいつをこうするのです。

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いいね。担担麺+ライスより、担担麺+麻婆飯のほうが断然いい。ランチだとライスが無料なので難しいところですが、もしどちらか迷ったなら、ぜひ一度、担担麺+麻婆飯を試して頂きたい。そして、麻婆飯を担担麺にぶっ込んで頂きたい。ちなみに、麻婆飯(小)はランチだと290円→190円です。

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期間限定の麻辣麺。麻辣がストレートにガツン!

中国食材店や中国(中華)料理店、あるいは中華街などへ行くと、いかにも"中国"って香りがフワッと漂ってるじゃないですか。そして、なんだか異国情緒みたいなものが感じられます。あれは中国料理/中華料理で使われる食材や調味料の香りなんですが、その主な元はおそらく八角と花椒だと思います。

あるいは、そば屋や寿司屋に入ると、ダシ・醤油の香りが出迎え、「ああ、和食屋に来たなぁ」と思わせてくれますよね。嗅覚によって得られる香りは、味覚、視覚など他の感覚を介して得られる刺激より、強く記憶に残るということが知られています。

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改装前の香氣

「どっかラーメンやってたっけ?」

「この時間だと、もう香氣しかやってないよ」

深夜、飲み屋でよく交わされる会話です。確かに翌4:00までやっているラーメン屋は学大では香氣だけ(※その後、まぜそばラーメン withという朝までやってるイカれたラーメン屋ができましたw)。けど、飲み終えた深夜に香氣へ行きたがる人が多いというのは、単に遅くまでやっているからというだけではないでしょう。記憶として脳内に強く残る花椒の刺激的な香り、中国料理/中華料理のあの独特な香りが香氣へと誘います。

深夜まで飲み、小腹が減った。帰る前にちょっと……。そんな時は香氣で花椒の香りに包まれながら、一日を締めくくってみてはいかがでしょうか。いや、昼11:00からずっとやっているから、いつ行ってもいいんですけどw

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