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中華料理店・泰雅(学芸大学)のラーメンは日本ラーメンの元祖を継承する、本当の意味での昔ながらのラーメン。100年の歴史が紡ぐその味は、長江のごとき悠久の大河を彷彿とさせる奥深さでした。

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学芸大学駅から徒歩2分。東口商店街沿い、A-2ビルの3階に泰雅(Taiga/たいが)という中華料理店があります。100円ショップ・Can Do(キャンドゥ)の手前です。2017年5月15日にオープンしました。祐天寺の来々軒、慶興(両者は同じ経営)から"独立"したような形です。

※慶興は閉店

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オープン日のオープン時間に行ってきました。店内はカウンター6席ほどとテーブル席が5つほど。私は来々軒に行ったことがありません。【ですから】、最初はラーメンをお願いしました。

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スープは鶏がメインでしょうか。とてもふくよか。甘みがあるのですが、醤油の風味もしっかりあります。まろやかで深みがあり、それでいてピンと一本筋が通ってる。

わずかに縮れた細麺はコシが強烈。細いのにブリッブリ。口内で麺が弾けます。食感がとても楽しい。そしてスープがよく絡みます。

チャーシューはラーメン屋のそれではなく、本格中華料理のそれ。肉厚ですがしっとりしていて、うまみがギュッと詰まっています。表面にはしっかりと焼きが入っていて、肉にはきっちり下味が浸透し甘みがある。丁寧に手が加えられていることをうかがわせます(きっと時間もかかってる)。

見た目はシンプルなんですが、味わいはこの上なく広く、そして深い。スープをすくうスプーン、麺を持ち上げる箸が止まりません。これはえげつない。凶悪。超絶うまい。

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1910年、浅草に来々軒という料理店が開業します。東京ラーメンの草分け的存在で、日本のラーメン店の原点とされる店です。同店はすでに閉店しているのですが、同店の遺伝子を継ぐ店が3軒あります。千葉の進来軒、郡山のトクちゃん、祐天寺の来々軒です。そして、この来々軒から独立したのが学芸大学の泰雅。

つまり、泰雅は"日本ラーメン"の正統なる継承者ということです。【ですから】、私は最初にラーメンを注文しました。

つい、この味を「昔ながらの」と形容したくなります。それはそうなのかもしれませんが、「昔ながらの」はそう単純でも簡単でもありません。浅草の来々軒ができたのは100年前。時代が移り変わり、日本人の味の好みも変化してきたはずです。にもかかわらず、100年間ずっと、このラーメンは人々に愛されてきました。

「昔ながらの」は「昔のまま」ではないということですね。その時代の人たちが思う「昔ながらの」味を、時代に合わせて作り出してきたからこそ、いつの時代においても「昔ながらの」でありえたわけです。

目にははっきり見えない緩やかな変化を敏感に読み取り、変わったと気づかれないよう調整を加える。この作業はそうたやすくできることではありません。

逆に、泰雅のラーメンを食べると、やすやすと「昔ながらの」なんて言葉が使えなくなります。そして「昔ながらの」を名乗る重さを思い知りもします。

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開店の祝い花がたくさん届いていました。驚愕。その数にではありません。いったい誰から来ているか、です。芸能人の名前も散見されますが、そんなことじゃない。

写真に写っているのはごく一部ですが、よく見ると、学芸大学界隈の飲食店の名前がずらり。同業者からこれほど多くの花が贈られている店を私は目にしたことがありません。地元の人々のみならず、同業者からも愛される――この店の素晴らしさをこれ以上雄弁に語るものはないでしょう。

※追記:とんねるずの木梨憲武さんが「とんねるずのみなさんのおかげでした」で、帝京サッカー部の同級生が学芸大学に店を出したと発言したそうです。その店がこの泰雅です。追記以上

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「後藤さんですか」

ラーメンを食べ終え、会計を待っている私に、カウンター越しでこう話しかけてきたのは、のちほどわかったのですが、店主の娘さん、れーりちゃん。

「あ、はい」

「もしかしたらそうかなと。先日、レセプションがあったんですが、その時、倫子ちゃん(※プレミアワンで働いている地元の子)が来てて、後藤さんの話になったんです。今度、夜、一緒に行くねなんて言ってたので」

「そうですか(笑) 今度、夜も来ますね。開店おめでとうございます。めっちゃおいしかったです。ごちそうさまでした」

「ありがとうございます。またお待ちしてます」

この店が、この家族がなぜこれほどまでに愛されているのか。その理由の一端が垣間見える笑顔に送られて店をあとにしました。

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夜にも行って、まとめて書こうと思っていました。けど、それまで待てない。いち早く、このクソやばいラーメンを紹介しなければ。そんな勝手な使命感に駆られ、キーボードを叩いています。そして、食べて数日経つというのに、ラーメンの余韻がまだ私の体内に残っているのを感じています。

このラーメンが辿って来た100年という歴史は長江のごとき悠久の大河を思わせます。そして、本当の意味での昔ながらのこのラーメンもまた、その歴史と同じく雄大にして深遠。100年かけて日本のラーメンが辿りついた地点をぜひ一度、泰雅で眺めてみて下さい。

夜のメニュー

その後、夜にも行ってみました。頼んだ中から一部をご紹介します。

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上から、おつまみ(チャーシューの切り落とし的なものが乗ったポテサラ)、水餃子(400円)、麻婆豆腐(800円)、五目チャーハン(800円だったかな?)。どれもこれもおいしかったです。特に麻婆豆腐は甘みもあって、花椒の刺激もあって激ウマ。あと、自家絞り生サワー(レモン・グレープフルーツ)も超うまい!

以下は別日。

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エビチリはまろやかなんだけどピリッ。えげつない。

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辛さレベル5の麻婆豆腐。段階は20まであるそうなw

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花椒が苦手な子がいたので、取り分けた後、ミルで花椒をかけます。たっぷりと。

豆鼓(トーチ)が目立ちます。けど、このまろやかさはそれだけじゃない。なんだろう。そして、しっかり辣(唐辛子の辛さ)があるのに、それがまったく尖ってない。ふくよかでまろやかで辛い、奥深き麻婆豆腐。この味は私が理想とする味。こういう麻婆豆腐を作りたい……。

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シンプルなはずなのに、なんでこんなにうまいんだ上海焼きそば。味付けもいい、麺もいい、そしてたっぷりと使われているであろう油の具合もいい。

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「うまっ。めっちゃうまいね」

泰雅へ初めて来た、つまりはこのラーメンを初めて口にしたモモちゃんが絶句。

私も久しぶり。ああ、これこれ。この深み。この丸み。そして、このブリッブリな麺。チャーシューもやばい。当然、スープは一滴たりとも残しません。こんな時間なのにw

帰り際、店主に質問をしました。

「麻婆豆腐でひとつだけポイントを挙げるとするなら何ですか?」

私が人生でもっとも作っている料理・麻婆豆腐。その真髄、その核心に触れたい。

「……豆鼓を使うということと……豆腐の水分を抜くためにボイルすることですね」

私の聞き方が間違ってたな。何百回と麻婆豆腐を作って来て、それでも私は麻婆豆腐が何なのかがわからない。私は麻婆豆腐とは何なのかを知りたかったw

機会があれば、また今度、聞いてみよう。とはいえ、やっぱり豆鼓なんだなぁ。腕、経験はもちろん、素材も違うんだろうなぁ。

はぁ、今回もやられました。

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