火鍋って何?
火鍋は中国の辛い鍋のことではありません。中国の鍋料理全般を指します。日本の鍋が地域によって違っていたり、あるいはすき焼き、しゃぶしゃぶ、寄せ鍋、水炊きなどのバリエーションがあるように、火鍋にもいろいろあります。
ただ、私たち日本人が「火鍋」と聞いて思い浮かべるのはこちらでしょう。
白湯(パイタン)スープと麻辣(マーラー)スープがふたつに仕切られた鍋。つまり、あの辛い鍋は「麻辣火鍋」です。
麻辣火鍋は中国でもっともポピュラーな鍋と言われています。地方によってレシピがまったく異なるのですが、今回は家でやりやすいようにアレンジを加えた麻辣スープの火鍋を作ってみたいと思います。基本的には中国のレシピサイトを参考にしています。
麻辣火鍋の材料
スープ
- 五香粉(ごこうふん、ウーシャンフェン)
- 鷹の爪
- 花椒
- 八角(*)
- ナツメ(*)
- 鶏ガラスープ
- オイスターソース
- 豆板醤
- 砂糖(お酒でもOK)
- ナンプラー(普通の醤油もしくは塩でもOK)
- ごま油
- ショウガ
- ニンニク
※(*)はなくてもまったく問題なし。ただ、あると雰囲気が出ますw
五目チャーハンは五種の具材が入っているということではありません。「五」には多いという意味があるので、いろいろ入っているチャーハンが五目チャーハン。
五香粉も同様です。桂皮(シナモン)、丁香(クローブ)、花椒(カホクザンショウ/ホアジャオ)、大茴(八角、スターアニス)、陳皮(チンピ)などが混ざった香辛料が五香粉。中国版スパイスミックスです。メーカーによって何が混ざっているかは異なります。
本来は(ちゃんとした店では)すべて粉末ではなく固形で入れます。もし、より雰囲気を出すなら、
少量ずつが詰め合わせになっているこのような薬膳セットを買ってもいいのですが、それなりに値が張ります。家庭で火鍋をするのなら五香粉でいいと思います。
今回の火鍋は麻辣スープ。「麻」は花椒のしびれる辛さ、「辣」は唐辛子の辛さを意味します。ですから、豆板醤(or唐辛子)、花椒は必須です。風味、見栄えからすると、豆板醤と唐辛子は両方用意したほうがいいでしょう。
また、五香粉に花椒が混ざっていたとしても、別途、花椒だけを用意して下さい。花椒を強く効かせると、中国っぽさが格段に上がります。粉末でもいいのですが、できればホールで。なぜホールの方がいいかは後述。
具
- 白菜
- チンゲン菜
- 長ネギ
- マイタケ
- シメジ
- エノキ
- マッシュルーム
- キクラゲ
- 香菜(パクチー)
- マロニー
- 豆腐
- 水餃子
- ラム
- 鶏もも肉
- 豚バラ
- 中国乾麺
具材は好きなものを入れて下さい。キノコ類、香菜(パクチー)、水餃子があるとそれらしさを増します。特にキクラゲ(木耳)がお勧めです。おいしいし、食感がいいし、薬膳の一種でもあります。そして何より見た目の火鍋らしさを引き上げてくれます。見た目も重要なのです。
肉類でぜひお勧めしたいのが羊肉です。牛、豚、鶏を入れてもいいのですが、麻辣火鍋には断然、ラムが合います。あと、ハチノスやハツ、レバー、ハラミなどの牛モツもお勧めです。
私は今回入れませんでしたが、魚介類を入れてもおいしいです。えび、貝、魚介の団子などなど。
〆は雑炊でも麺でもいいのですが、ぜひお勧めしたいのが中国や台湾の乾麺です。日本のラーメンではなんか雰囲気が出ません。もし中国の乾麺が入手できないなら素麺(ひやむぎ)、極細うどんでもいいでしょう。白いストレートな麺にすると中国料理ぽくなります。
上の写真は「台南 関廟細麺(Guan Miao Thin Noodles)」。こういう類は中華食材店で売っています。最近これが好きで。
麻辣火鍋の作り方
鍋にごま油を敷き、ショウガの千切り、潰したニンニクを炒めます。いずれも食べられるようにこのような切り方をしています。
ショウガやニンニクから香りが立ったら、豆板醤、五香粉、花椒を入れ、さっと火を通し、鶏ガラスープを注ぎ入れます。私はナツメ、八角、鷹の爪も別途入れました。こういうのが浮いてると火鍋っぽいでしょ? すべてを固形で揃える必要はありませんが、もし可能なら、1、2種を固形で用意しておくといいかもしれません。見栄えとして。
スープを入れたら、オイスターソース、ナンプラー(or醤油or塩)などで塩味(えんみ)とコクを調整。隠し味程度に砂糖も少々(お酒でもOK)。甘みを加えると、辛み、塩味の角が取れ、まろやかになっておいしくなります。このあたりの調味料の量は味を見ながら適当に。
ひと煮立ちしたら、麻辣スープは完成です。
あとは普段、鍋をしているように、好きな具材を入れて下さい。なお、羊肉(生)は煮込んではいけません。サッとスープにくぐらす程度で。そのほうが柔らかいし、風味もちゃんと残ります。牛肉、豚肉も同様です。
スープにしっかり味がついていれば、このままで十分おいしいです。香菜(パクチー)を薬味として乗せつつ食べました。
ザ・中国鍋! お店で時折食べるあの味! 赤いですが、衝撃的に辛いわけじゃありません。唐辛子と花椒のほどよい辛さ。いかにも中国っぽい香りがして、まあうまい。やばい。五香粉はすごいな。
実際に食べてみると、花椒をホールで入れた意味がよくわかると思います。時折、具と一緒に花椒が口に入るのですが、そうするとスッ、ピリッとして、味わいにアクセントが出るんです。これがまたいい。煮込まれたナツメも栗のような甘み・食感でおいしいです。
〆の細麺。細麺はスープをよく吸います。こいつはあえて長く煮込んでクタクタにしちゃうのがポイント。うますぎっ!
別日に作った麻辣火鍋。冷蔵庫の残り物を適当にぶち込んでます。
ある日は普通に鶏もも肉で麻辣火鍋。しょせん鍋。何を入れてもOK! 何を入れてもうまい!
つけダレで麻辣火鍋の味に変化を
上記のように作った麻辣火鍋はそのまま食べてもいいのですが、つけダレにつけてもおいしいです。味に変化が出ます。
つけダレも好きなように作ればOK。私は次のようなものを作りました。
- ごま油
- ラー油
- 唐辛子(粗めの粉末状に)
- 花椒(粗めの粉末状に)
- ナンプラー
- ネギ
- 香菜(パクチー)
これに直接つけて食べてもいいですし、麻辣スープで少し溶くのもあり。麻辣火鍋と同じ方向性の味のタレなので、よく合います。さらに。
途中で中国の黒酢を加えます。これがいいんですよ。独特のコク、風味が出て、酸味がさっぱりさせてくれます。
この黒酢は江苏恒顺醋业股份有限公司の鎮江香酢。
この記事を書いているのは、とてつもなく寒い冬。冬はもちろん温まります。けど、夏にあえて辛くて熱いものってのもいいですよねぇ。
ちょっと特別な材料が必要ですが、大きめのスーパーや輸入食材店(カルディや中国専門の食材店など)に行けば揃うはず。簡単にできますので、ぜひ自宅で火鍋をやってみて下さい。おいしいですよ~。
附録その1:五香粉、花椒の活用法
「普段使わないのに、これだけのために買うのはなんだかなぁ」
と思うものってありますよね。もしかしたら、五香粉や花椒もそう思うかもしれません。けど、実はいろいろと使えて、しかも、使うことで一気に本格ぽくなる便利な調味料です。たとえば……。
麻婆豆腐。このふたつを使うと、グッとお店の味に近づきます。
豚の角煮に使うのもいいですよ。また、豚バラブロックを大きめのサイコロ状にカットして、五香粉、醤油、砂糖で煮込めば魯肉飯(ルーローファン)という台湾名物の料理になります。
五香粉、醤油、砂糖でハチノスを煮込み、最後に花椒をひと振り。えげつないほどおいしくなります。
豆腐干絲とパクチーの花椒和え 餃子や獅丸オマージュ(左)。豆腐干絲、パクチー、細く千切りしたニンジン、ピーマンを鶏ガラダシ、花椒、ごま油で和えます。超うまい。
このように、五香粉、花椒はいろいろな料理に使えます。持っておくと便利ですよ。
附録その2:二つに仕切る鸳鸯火锅(鴛鴦火鍋/オシドリヒナベ)
「鴛鴦」はオシドリという鳥のこと。「おしどり夫婦」のおしどりです。ただ、「おしどり夫婦」は仲睦まじい夫婦という意味ですが、鳥のオシドリは毎年パートナーを変えますw
それはさて置き、この二つに分かれた鍋が誕生したのは比較的最近、1983年です(最近?w)。
1983年に開催された中国の料理コンクールで重慶のシェフが二つに分かれた鍋を発表します。その時は雙味火锅(双味火鍋)という名前でした。そして1985年、中国料理界の重鎮・熊四智(四川烹饪高等专科学校/四川料理大学教授、中国料理協会理事など)が鸳鸯火锅と改名しました。
鴛鴦火鍋が日本にいつやって来たかは不明ですが、2003年オープンの「天香回味(テンシャンフェイウェイ)」、2006年オープンの「小肥羊(シャオフェイヤン)」あたりが日本に赤白の鴛鴦火鍋を根付かせる一助となったんじゃないかなぁと思います。
参考/百度百科:鸳鸯火锅