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昭和9年創業・やぶそば(学芸大学)のたぬきせいろは一度で二度おいしいそばでした~そばは食の旅の道標(みちしるべ)

学芸大学駅界隈のそば屋でどこが一番好きか。これもまた議論が紛糾するネタの内のひとつです。単なる主観のぶつかり合いですから、着地点はありません。互いに声高に主張するのみ。不毛と言えば不毛ですが、酒席の話なんざぁ、だいたいそんなものw

「私はやぶそばが一番好き。絶対あそこが一番おいしい」

そう息を巻くのはBar BULLBULLのエリィ。いや、まあわからなくはないけど、そこまでだったかなぁ。あまり強く印象に残っていなかったので、翌日、久しぶりに行ってみることにしました。

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学芸大学駅から徒歩30秒。西口を右に折れるとすぐそこにあるやぶそば。

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表から見ただけではわかりづらいですが、店内は広々としています。とてもきれいで落ちついた雰囲気。

正面に座っているご婦人がた、あとでやって来たお父さん二人組、ゲートボール仲間と思しき団体さん、みなさんご常連。

「天ぷらをいつもの感じで」

そんな風に頼める店があるってのは素敵なことです。

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メニューを見ました。お、カツ丼がない。帰って調べてみてわかったのですが、以前はカツ丼もあったようです。ちょいと手間がかかりますからね。

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これは店頭に置かれている看板。曜日によってランチサービスの内容が異なります。その日は水曜日でした。たぬきせいろ&山菜ごはんを注文しました。たぬきせいろ?

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ああ、なるほど。こういうことか。天かすが浸っている、温かい濃いめのつけ汁です。

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まずはそのままひと口。むむむ。細めでエッジの立ったそば。そこそこそばが香ります。プチっとした歯ごたえがいい。喉越しも滑らか。とてもおいしいです。

半分ほどはそのまま食べ、残りは汁につけてみました。これは面白い。温かい汁につけると、途端にそばのコシがなくなり柔らかくなります。せいろが一瞬でかけに。ふむ、そばのコシは温度にも依存してるのか。確かにそば、うどん、素麺、ラーメンと、麺類は冷水で締めるよなぁ。改めてそば、麺類の奥深さを感じさせられました。

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山菜ごはんは優しい味わい。遅れてやって来たそば湯でつけ汁を薄め、スープのように飲み干します。ああ、おいしいなぁ。

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レジ横にこんな写真がありました。会計時、店主の娘さんと思しきお姉さんに話をうかがいました。

「この写真は以前のやぶそばさんですか?」

「はい、そうなんです」

「いつ頃、改築されたんですか?」

「21年前(1995年)です。でも、これ以前にも建て替えはありました」

「創業してどれくらいなんでしょう」

「昭和9年創業です」

「すごい! この写真、撮影してもいいですか?」

「どうぞ。ありがとうございます」

「とてもおいしかったです。ごちそうさまでした」

「またぜひお寄り下さい」

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蕎麦(そば)の原型(蕎麦がき、蕎麦焼きなど)が初めて文献に登場したのは奈良時代ごろ。麺状の蕎麦切りが食されるようになったのは16世紀ごろ。

江戸蕎麦御三家は砂場、更科、藪。藪の原点とされるかんだやぶそばが創業したのは明治13年(1880年)。かんだやぶそば・並木藪蕎麦・池之端藪蕎麦(すべて血縁者が創業者)が藪蕎麦御三家と呼ばれています。

学大のやぶそばがどのような経緯で創業されたかはよくわかりません。けど、やぶそばのそばは、80年以上の歴史の積み重ねをしっかりと感じさせるおいしさでした。こんなにおいしいのに、印象に残っていなかったのはなぜだろう……。やぶそばに来た2年前はまだまだそば経験が少なく、わかってなかったのかな。じゃあ今は相当のそばレベルに達しているのかというと、そんなこともないのですが。

経験を礎に、常によりよいものを目指し、だけど芯は曲げず。藪・学大やぶそばの歩んできた道、そしてやぶそばのおいしいそばは、私のこれからの食の旅の道標(みちしるべ)。

2018年11月6日追記:創業当時、界隈には竹やぶが点在していて、これが店名の由来となった、との情報もありました。追記以上

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