祐天寺駅から徒歩約15分、学芸大学駅から約20分、地蔵通り商店街の北端、大塚湯の並びにそば処 柳屋という街場のそば屋があります。1976年(昭和51年)創業の老舗です。
約30年前に改装したという店内はそば屋というよりも洋食屋のようなモダンな雰囲気をまとっています。
メニューブックの最初の見開きはミニそばとミニ丼。客層を想像させます。
そば・うどんの部、御飯の部、季節物の部。街場のそば屋でよく見かけるこの「部」がなんだか好き。ただ、私は迷うことなくセットからかつ丼を選びます。いつものように。
「おそばはどうしましょう」
「ざるでお願いします」
「かつ丼セット、ざるです~」
快活な女将さんがかつを揚げ、ご主人はそばを茹でながら親子鍋を用意。さほど時間がかからず揚がったかつをザクザクと切って鍋に並べ、つゆを2杯注ぎ入れ火にかけます。お二人の連携を見ているだけで、あっという間に時間が過ぎていきました。
「お待たせしました」
おおお。画像では見たことがあるけど、実物を目の前にするのは初めて。そばと丼の一体型の器。
ふいに私は伝説巨神イデオンや機甲界ガリアン、ゴワッパー5 ゴーダムを思い出しました。あるいは多面式筆箱か? 懐かしい。
更科のごとき白いそばは少し長め。そのまますすります。かすかにエッジを感じるそばはムチっとした弾力。中心部までしっかりと冷えていて締まっています。
そばではこれまで経験したことのないような弾力です。けど、どこかでこれを……。あ、わかった。小豆島の太めのそうめんで感じる弾力に似てます。面白いなぁ。
そばの風味は穏やか。また、街場のそば屋でありがちなしょっぱめのツユではなく、こちらも比較的穏やか。たっぷりツユに浸しても大丈夫。
かつ丼も同様です。濃いめに仕上がりがちですが、柳屋のかつ丼は優しい塩味です。かつは薄めでとても食べやすい。
と、こう書くと物足りなそうに思えるかもしれませんが、そうではありません。街場のそば屋の平均よりも優しいというだけ。薄味というわけではありません。ご主人と女将さん、お二人の人柄が出ているような穏やかなかつ丼セットでした。おいしかったです。そば湯・お茶を飲み干すとお腹もいっぱい。
会計時に少し話をうかがいました。
「こちらはいつ頃からやってらっしゃるんですか?」
「よんじゅう何年だから……昭和にじゅう……」(女将さん)
「え? 昭和20年代ということはもう80年近くに……」
「あ、違った。それはお父さんの生まれた年だ(笑) 昭和51年。そして平成●年(失念)、30年くらい前に改装したの」
「長いですねぇ。創業は僕の生まれと同じくらいです」
「そうですか(笑) ありがとうございました」(ご主人)
「ごちそうさまでした。おいしかったです」
それはそれは人あたりのいいお二人の笑顔に送られ店を出ました。
私が食べている途中、ご近隣の方がいらっしゃいました。女将さんは「お久しぶりですね。ビールは出せないけど(笑)」とおっしゃっていました。(記事執筆時のようなコロナ禍でなければ)夕刻、仕事終わりや風呂上がりにちょっと飲みに来る人も多いのでしょうね。こういうお店、素敵だなぁ。
SHOP DATA
- そば処 柳屋
- 東京都目黒区目黒4-21-17
- 03-3711-4970
- 公式