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今田製麺所のそうめんは穏やかな弾力が心地のいいそうめん。機械麺そうめんのひとつの正解をここに見ました。

少し太めの珍しいそうめん

今田製麺所のそうめん

今回ご紹介するのは今田製麺所(山形県西村山郡河北町)のそうめんです。今田製麺所の読み方は「いまだ」ではなく「こんた」。

2022年夏シーズン最後のそうめんレビューになるかもしれません。少し長くなりますが、後半に重要なことを書いたつもりです。ぜひ最後までお読み頂けると嬉しいです。

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三軒茶屋にある河北町(かほくちょう)のアンテナショップ・かほくらしで購入しました。486円/560g。一般的なそうめんの量・300gに換算すると260円。今田製麺所公式サイトで買っても185円/280g、300g換算で198円ですから、機械麺そうめんとしては少しお高めです。

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話が少し逸れますが、県のアンテナショップはよくありますが、町のアンテナショップは珍しいですね。逆に町でアンテナショップを持てるということは、同町が経済的・商業的に活発なこと、町全体が一体となって町を盛り上げようとしているということを想像させます。

山形県の麺文化を調べてみたのですが、そば、うどん、ラーメンはかなり作られていて消費もされています。ただ、手延べ麺となると、私が調べた限り、山形県山形市の小川製麺所くらいしかありませんでした。ですから、そうめんが名物というわけではありません。

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ちなみに東北には稲庭(秋田県)、白石(宮城県)という手延べ麺の有名産地があります。河北町は両者の中間に位置していて、大きな街道も通っているので、手延べ麺が作られていてもよさそうなんですけどね。このあたりを深堀りすると大変なことになりそうなので、とりあえずはサラッと次へ行きましょう。

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280gのそうめんが円柱状に太くまとめられ、紙で包まれています。小川製麺所にもこのような包み方をした商品があるので、このあたりではよくある束ね方なのでしょうか。雰囲気があっていいですね。

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「山」の印に「丸」でヤママル? ヤマサ醤油と同じ、昔の屋号によくあるパターン。ですが、今田製麺所における「丸」は何だろう。

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開封。小麦の甘い香りがとても強い。

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ほんの少し太めです。ただ、太さよりも平べったい形状が印象的です。

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紙を取ったらこのように結束されていました。

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茹で時間は約5分~6分とあります。太めとはいえ長い気もしたのですが、機械麺ですから表示に従うのが吉。そして実際、5分がちょうどよかったです。

極細うどんと言いたくなる食感

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舌触りはトゥルン。プルンとした穏やかな弾力が気持ちいい。極細うどんと言いたくなるような食感です。

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風味はさっぱり。清涼感があります。ただ、太めなので食べ応えはあります。

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今回は自家製ピーナッツだれ、自家製ラー油と合わせてみました。担々麺風。濃厚なタレに太めの麺がよく合います。

おいしいですねぇ。いい麺です。ただ、そうめんぽさは希薄です。

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約1週間後、残りを食べました。茹で時間は3分半。前回は4分でも短いと感じたのですが、今回は3分半で十分でした。開封して約1週間。この間に湿気を吸って、その分、短い時間で茹で上がったということでしょうか。どうなんでしょう。

とにかく、前回よりもムチッとした弾力が強くなりました。やっぱりおいしい。

ただし。

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この感じが好きなら、あえてこれを選ぶこともないというアンビバレント。

そうめんをここまでおいしく作れるメーカーですから、他の麺もきっとおいしいでしょう。もし今田製麺所の商品を食べるのであれば、私ならそうめんではなく、うどんや冷むぎ、ひも川(きしめん)、むぎきり、まるめんを選びます。

とはいえ、矛盾したことを言うようですが、この今田製麺所のそうめんは機械麺そうめんのひとつの正解を提示してくれているようにも思いました(詳細後述)。おいしいことは確かです。機械麺そうめんとしては2種類目の星4を進呈します。

機械麺そうめんは無理がある

手打ちうどんは生地を捏ね、薄く広げて切ります。乾麺の機械麺うどんも同様です。手打ちうどんでやっていることをそのまま機械化しているだけ。ですから、手打ちうどんと機械麺うどんは製法的には同じです。手打ちだろうが機械製だろうが切り麺であることには変わりません。

一方、そうめんはまったく状況が異なります。

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もともと、そうめんは手延べです。生地を捏ね、どんどん細く延べていき(伸ばしていき)、一本の麺にします。いわゆる手延べそうめんですね。よりをかけながら(ねじりながら)細く延べていくからこそ、手延べそうめんのあのコシが生まれます。

ところが明治時代になり、製麺機が登場します。うどんや中華麺はこれでいいんですよ。けど、そうめんも機械で作るようになると話がおかしくなってきます。というのも、延べて作っていたそうめんを切って作るわけですから。

さらに、うどんや中華麺のように太ければ、機械で作っても相応のコシ・弾力を出せます。ところが、そうめんは細いです。あんなに細く切ってコシを出そうとしても無理なんです。

現在の機械麺そうめんメーカーはそれぞれに工夫を凝らし、なんとかうまく機械麺そうめんを作ろうとはしています。けど、おいしいものはほとんどありません。それもそのはず。延べて作るはずのものを、無理やり切って作っているのですから。

実際、数十、もしかしたら100種以上の機械麺そうめんを食べてきましたが、おいしいと思えたのは片手で数えられるほどしかありませんでした。

機械麺そうめんの採るべき道

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では、機械麺そうめんをおいしく作ることは不可能なのでしょうか。私はそうとも限らないんじゃないかと思ってます。そして、そのひとつのやり方として、今田製麺所のそうめんがあるような気がします。どういうことかと言うと、細さを捨てるということです。

規格内(1.3mm未満)ギリギリの太さでそうめんを製麺すれば、それこそまさに今回のそうめんのように、ある程度の弾力を持たせたおいしい麺に仕上がりやすいんじゃないでしょうか。想像ですが。

ただ、こうするとやはりうどんぽくなってしまいます。それはそうでしょう。機械麺そうめんはうどんと同じ作り方をしているのですから。

それでも企業として、ビジネスとして、機械麺そうめんを作らなければいけないとするなら、そうめんらしさを捨ててでも、麺としてのおいしさを追求した方がいい。そうめんらしく細く切ってまずくなるのなら、そうめんぽさを犠牲にしてでもおいしいほうがいいに決まってます。

今田製麺所だって、もっと細いそうめんを作ろうとしたことがあるはず。けど、きっとうまくいかなかった。おいしいと思えるそうめんを機械で作るその限界点が、この太さだったんじゃないでしょうか。

細かろうが太かろうが、機械麺そうめんでは手延べそうめんのあのコシは出せません。だったら無理して細くして、体裁だけは"そうめん"と呼べそうなクソまずいものを作るよりも、細さにこだわらず、おいしい麺を作ってもらいたい。そして、これを体現しているのが今田製麺所なんじゃないかと思いました。

余談。

細めでおいしい機械麺そうめんといえば、はたけなか製麺の北海道そうめん。同社独自という「もみ延べ」がおいしさの秘訣なのかな? 相当に工夫をすれば、細くてもおいしい機械麺そうめんはできるのかもしれませんね。

今田製麺所もはたけなか製麺も東北。偶然とはいえ、おいしい機械麺そうめんを作っているのがどちらも東北というのが面白い。

DATA
名称そうめん
原材料名小麦粉(国内製造)、食塩
製造者今田製麺所
評価★★★★☆