学芸大学駅から徒歩5分。西口商店街を出て駒沢通りを渡ると、中華銘菜 慶(Qing/チン)というお店があります。
オーナーシェフ・梁慶彰さんは横浜の萬珍樓などで経験を積み、世田谷・赤堤の火龍園(ファンロンエン)で料理長を務めたのち独立。2017年7月14日に中華銘菜 慶(Qing/チン)をオープンさせました。
ずっと気になってて、いつか来ようと思ってて、このランチの看板もしょっちゅう見てて、「慶(Qing/チン)おいしかったよ」という話も幾度か聞いてて、3年という月日が経ってしまいました。
入口は駒沢通り沿いと水車橋通り沿いの2ヶ所。私が滞在していた間に来店した方は全員、水車橋通り沿いの入口から入ってきました。これがなかなか興味深い。
おじいちゃん、おばあちゃん、常連さんが目立ちます。近隣に住んでいる方が多いのでしょう。水車橋通り沿いからの客ばかりだったというのも、同じことによるのかもしれません。料理やコンセプトは違えど、環七沿いの中国海鮮料理 華空間を思い出しました。客の空気感が似ています。
地元の人たちに愛されてる、ちょっといい中国料理店ってなーんか好きなんだよなぁ。ほっとする。
基本的にランチは3種なんですが、ランチコース(2種)もあります。
厨房は一人。混みあっていると、それなりに時間がかかります。けど、これは注文が入ってから調理するものを出したいということでしょう。それがうかがい知れるので、イライラはしません。
それに店内をゆっくり観察しているだけでも、なんだか楽しいです。
隣の常連さんは話している感じからするとご夫婦ではないのかな? おじいちゃんがほんとおいしそうにビーフンを食べてるなぁ。向こうの女性は素人か? 妙に雰囲気のある美人だ。フロア担当の女性の落ち着いた対応がいいなぁ。黒板の夜メニューからすると、素材にこだわってるんだろうなぁ。基本的な方向性は広東料理ということだから、コッテリではなくサッパリ系なんだろうなぁ。厨房から聞こえてくる中華鍋とオタマがぶつかる音が心地いいなぁ……。
これならいくらでも待てる。
先に連れの五目焼きビーフンがやって来ました。一、二口もらいます。
はぅ……。そうかぁ。参ったなこりゃ。
パンチで押す料理ではありません。繊細かつ深い。奥深くもあるのですが、どちらかというと奥ゆかしいと評したくなる料理です。ふくよかなこの風味はなんだっけ。うーん、思い出せない。
ビーフンのこのファサッとした感じがいい。おいしいなぁ。
15分差でやって来た私の大葉香る とり肉と豆腐のピリ辛煮込み。
わずかなとろみが熱を逃がさず、上品なうまみを全体に行き渡らせています。複数の食材の食感バリアントがなんとも気持ちいい。そして大葉の香り具合が絶妙です。あくまでもほんのり。
塩味は控えめですし、もちろん"変なもの"を使っている様子もありません。パンチはないのですが、深みがある。料理全体を覆う優しいうまみ……。すごい。
素人にはマネできない味の出し方です。店だとしても、これはなかなかできないかもしれません。わかりやすくパンチを出したくなるものなので。けど、そうしないのは技術、経験、センス、そして自信があるからでしょう。オシャレな調理だ。
ご飯はお代わり自由です。けど、お代わりは不要でした。量的に多いというわけではないのですが、満足度が高いので、お腹いっぱいになったのです。
食後はデザートかコーヒーを選べます。私たちは二人だったので、両方お願いしました。
タピオカは小さなタピオカ。我々世代にとってのタピオカはこれw 甘いココナッツミルクも大好き。
コーヒーはね、
こうするわけですよ。へへ。
店を出て、連れがこう言いました。
「おいしかったけど、そこまでの感動はなかった」
なるほどね。わかりやすい押し出しがないから、何気なく食べていると、すんなり通り過ぎてしまうような味わいなのでしょう。そういう人がいても、それはそれでわかる気がします。そして、気を張って食べる義務も必要もありませんから、そう感じることが悪いことでもありません。
けど、私の感想は真逆。これこそがすごい。これこそがプロ。パンチではなく品で食べさせる料理はそうできるものじゃない。私は感動しましたし、羨望もしました。こういう料理を作れるようになりたい、と。もちろん、土台無理なことなんですが。
ランチで2品食べただけですが、間違いなく夜もおいしいと断言できます。界隈の方たちにこれだけ支持されリピートされているというのがその証左。
若い方からご年配まで、幅広い層がおいしく頂ける、品のある奥ゆかしい本格中国料理。ぜひ一度。もしかしたら特選ランチコースがめっちゃいいんじゃね? そんな予感。
SHOP DATA
- 中華銘菜 慶 Qing(チン)
- 東京都目黒区五本木3-33-2 ベルマーレ学芸大102
- 03-6884-6501