一度食べてみたかった大門素麺(おおかどそうめん)。富山県砺波市大門(となみしおおかど)の素麺です。
日本各地の名産を扱う店やこだわり系の食材店などで、たまーに白(後述)を見かけます。
ただ、なかなかありませんし、青(後述)も食べたかったのでネット通販で購入してみました。
大門素麺の歴史
大門地区で素麺作りが始まったのは江戸後期、1848年からと言われています。そのルーツは能登。
石川県の能登半島にある輪島市。今はもう失われてしまったのですが、かつて輪島市周辺は素麺の一大産地でした。
輪島市の隣は珠洲市といって、2005年に廃線となった「のと鉄道能登線」の終着駅・蛸島駅があった地域です。蛸島もまた素麺の生産地で、加賀藩の御用素麺を作っていたそうです。
そんな蛸島で大門出身の人物が素麺の製法を習い、大門に戻ってその製法を広め、大門地区でも素麺作りが始まりました。
最盛期(昭和初期)には60軒以上の農家で作られていましたが、記事執筆時の生産者は13軒。そのほとんどは夫婦によって営まれていて、夫婦のあうんの呼吸による作業が大門素麺の要とも言われています。
大門素麺の特徴、青と白の違い
大門素麺のブランドはふたつ。末永次八氏が作る大門素麺と、複数の生産者が製造し、となみ野農業協同組合が販売する大門素麺です。
包み紙の色から、前者は「青袋/青」、後者は「白袋/白」と呼ばれています。いずれも丁寧に紙で包まれ、細縄で縛られています。
それにしても、なぜ末永次八氏だけが独自に作って販売しているんだろう……。
となみ野農業協同組合が販売する大門素麺 白も包み紙には生産者名が記されています。この白は山田国雄氏が生産者。冒頭の画像には中嶋正男とあります。大門素麺好きは生産者を指定して注文したり、購入したりするそうです。
大門素麺の最大の特徴は長さと形状です。長い素麺が丸まげ状に巻かれています。
原料である小麦も大門で栽培されています。長らく途絶えていたのですが、2013年から栽培が再開され、大門産小麦はすべて大門素麺に使用され、大門素麺に使われている小麦の8割が大門産小麦だそうです。
ちなみに、長い手延べそうめんは他にもいくつかあります。砺波市大門の南、20kmほどの山中にある富山県南砺市利賀村の素麺・清流素麺もそう。熊本県玉名郡南関町の南関そうめん、愛知県安城市和泉町の和泉そうめんも長いことで有名です。
青も白も原材料は同じですが、食用植物油と澱粉の順序が逆です。さほど気にせずこうなっているのか(法的には割合の高いものから表記しなければいけない)、本当に割合が異なっているのか。もし後者なら、これが風味や食感にどう影響しているのかが気になるところです。
ただ、実際どうなっているのかは不明瞭なので、ここを深堀するのはやめておきましょうw
余談をふたつ。
たまたまなんでしょうけど、末永次八氏と山田国雄氏は道を挟んだお向かいさんw
この地区には末永姓がとても多く、大門素麺の生産者13軒の中にも複数の末永さんがいます。末永は"まつえ"と読むそう。末永次八(まつえじはち)さん。
大門素麺の食べ方
とても長い素麺です。そのまま茹でると食べるのが大変。ですから、乾麺状態でふたつに割り、それから茹でます。
大門素麺 青には「透明感が出るまでゆでます」、大門素麺 白には「3分くらいゆでます」と書かれています。
風味豊かな大門素麺
大門素麺 青
最初に食べたのは青。2分半ほどで上げました。シンクにざるを置き、そうめんと熱湯を流した瞬間。湯気とともに甘い香りがフワッ。すごい。ここまで小麦の香りがする素麺は初めて。しっかりと水で締めます。
揖保乃糸(上級品)よりも、ほんのわずかに太いかもしれません。まずはそのままひと口。やはり小麦の香りがすごいです。柔らかくて甘みのある小麦の風味。
歯切れ、コシはムチッ、プリッ。決して強くはありません。手延べそうめんでこの感じは久しぶり。喉越しはつるりと滑らかで気持ちがいいです。
おいしいなぁ。ひと口で「うわっ!うまっ!」となるようなおいしさではなく、食べ進めるほどにジワリと心に沁み入るおいしさ。こういうタイプは初めてかも。
大門素麺 青は375g。一般的な素麺は300gなので、少し多めです。普段、一人であれば150g~200g、二人なら300gを食べています。二人でも375gはさすがに多かったw もちろん食べきれますが、6束中4~5束でよかったかなとも。
私は強い歯切れ、コシのあるそうめんが好みです。そこだけを見るなら、大門素麺 青は物足りない。けど、豊かな風味はこれを十分補います。純粋に味覚的な意味での"味"では、これまで食べた素麺の中でもトップ3に入るかもしれません。
大門素麺 白
まあ、似たようなものだろう。と思ったら! 青と白は何気に違います。
青は6束(375g)でした。一方、白は4束(350g)。そして巻き方が微妙に違うような気がします。
白は2分強茹でました。ふくよかな小麦感は同じなんですが、白には香ばしさのようなものも感じます。何に由来するものだろう。
コシは白の方が強いです。茹で時間の差もあるとは思いますが、茹で時間が同じであっても白の方が強めだと思います。
そして、白のほうが短いです。もともとは同じくらいの長さでも、巻き方に差があるから割った時に青と白では長さが違ってくるのかな?
食べやすさでは青が上、コシ、歯切れのよさは白が上でした。けど。
大門素麺は職人がひとつずつ手作業で作り巻いています。青、白の差もあるでしょうけど、白同士であっても、生産者によって、あるいはその時の気候やちょっとした手の加減によって、相当に個体差があるんじゃないかと想像します。ただ、これは決して悪いことではありません。これこそが手作りのよさ、手作りであることの証。
いずれにせよ、青・白ともに心をこめて丁寧に作られていることは食べればよくわかります。この職人魂に敬意を込めるという意味でも星5つ。
近所のスーパーに売っている素麺はだいたい食べた。三輪も島原も播州も小豆島も食べたことがある。ここらで少し珍しいそうめんを食べてみたい。そんな方はぜひ一度試してみて下さい。
名称 | 大門素麺(おおかどそうめん) |
原材料名 | 小麦粉、食塩、食用植物油、澱粉 |
製造者 | 青:末永次八/白:となみ野農業協同組合(山田国雄) |
評価 | ★★★★★ |