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表面張力(学芸大学)はインド・ゴア料理をヒントにしたカレー店。優しく繊細なスパイス使いで、魚のカレーは爽やかでした。

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ゴア料理がベースのスパイスカレー店

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学芸大学駅から徒歩8分。東口商店街の出口を右折し、鷹番小学校を通り過ぎた先、鷹番も終わろうかというギリギリの所に表面張力というスパイスカレーのお店があります。2024年4月20日にオープンしました。

店主・加藤伊織さんは旅・登山・トレイルが趣味。ペルーを旅している時にスパイス料理にハマり、世界各国を旅してスパイス料理を勉強。整体師という本業の傍ら、2017年(?)から下高井戸の恋々風塵という立ち飲み屋で、プラマーナ・スパイスという間借りカレー店をやっていました(※1)。

2020年9月、東池袋のイケ・サンパーク(※2)という防災公園内で店舗を構えます(同店名)。そして2024年、現在地へと移転しました。

ここは直近までBOY FRIEND BREW SHOPというコーヒーとクラフトビールのお店でした。同店と加藤伊織さんにつながりがあるようなので、そんな縁もあって、ここで営業することになったのかもしれません。

※1 下高井戸の前は三軒茶屋でもやっていた模様。詳細不明

※2 イケ・サンパークにはヒグマドーナッツも出店(京都のフルーツサワー専門店・SOUR(サワー)とのコラボ)

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レコードBGMが流れる店内はカウンター8席ほど。

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私が訪れた際はカレーが4種ありました。

  • ポークシャクティカレー
  • 旬の魚のカレー
  • チキンビンダルー
  • ベジタブルターリー

基本的にはインドのゴア州の料理をヒントにしたカレーだそう。

「どれがお勧めかと聞いても、どれもお勧めですよねぇ」

「今日の魚は鯛なんですが、いい鯛なので、魚のカレーがお勧めです」

「じゃあ魚のカレーをお願いします」

帰って調べてわかったことなのですが、ゴアは海に面した地域で、魚介料理が有名なんだとか。ちょうどよかった。

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水は背後のサーバーからセルフで。

先客は店主の知り合いであろう家族4人連れ(若夫婦と赤ちゃんと旦那の母親?)。私のすぐ後に男性が一人、その後、これまた店主と親しい女性が一人やってきました(後ほど、プラマーナ・スパイス時代に店を一緒にやっていた女性だと判明)。

顔見知り客と店主の会話を聞いていると、店主の優しい穏やかな人柄が垣間見えました。

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コンロに火がつくと、魚の香りがフワリ。

慌ただしく動く店主。ふふふ。オープンして1ヶ月弱か。まだ体が厨房に馴染んでない。動きが大きく、おそらくは無駄も多い。

ディスってるわけじゃありません。最初は誰もがこう。時が経つと厨房と体は一体と化し、ゆったりとしたスムーズな動きになっていきます。そして、さらに慣れていくと動き・所作に型ができあがる。ちゃんとした料理人・職人はすべからくそう。

初々しさが感じ取れる店主の動きは微笑ましく、そんな動きを見ているだけで楽しく時間が過ぎていきます。

優しく繊細なカレー

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まず出てきたのは副菜3種。じゃがいものサブジ、竹の子のパコラ(ひよこ豆粉)、ナスとエリンギのアチャール。サブジ、アチャールはほのかなスパイス。どれも優しい風味です。

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こちらが旬の魚のカレー(1760円)の全容です。

以前はワンプレートに盛っていたようですが、表面張力になり、副菜・カレー・バスマティを別皿に分けるようになりました。ワンプレートの方がいわゆる"映え"になりそうなのですが、分けるのには何か理由があるのでしょうね。

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バスマティライスに添えられているのはニンニクの芽のアチャールとパパド。パパドはパリッとしているのかなと思ったのですが、しっとりしていました。こういうものなのか、あるいはこうなってしまったのか。

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カレーはまったく辛くありません。穏やかなスパイス感と酸味で、どちらかというと爽やか。

おそらくは魚のダシも使われているのでしょうけど、ダシがガッツリ前面に出ているわけでもありません。繊細に重ねられたスパイスによって、鯛そのもののおいしさが引き立っています。

このぬるめの温度がまたいいな。無暗やたらとスパイスを使うわけではなく、最適な温度で効果的にスパイスを香らせているような気がします。

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「こちら食後にどうぞ」

サービスでフルーツをいただきました。

ギリギリのカレー

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さて、前の店名にもなっていたプラマーナとはサンスクリット語で、証明・知識の手段といった意味があります。インド哲学用語です。とても難しい言葉なので、詳細はwikipediaに譲るとしまして……。

「どうして表面張力なんですか?」

「特に深い意味はなくて……。もともとプラマーナという店名だったんですけど、ある時、東京学芸大学の先生が『プラマーナとは』みたいに語り出して、いや、響きがよかったからつけただけで、そんなに深く考えているわけじゃないのに、と(笑) ですから、今回は単なる現象名を店名にしようと思ったんです。"表面張力"という言葉の響きもいいですし。

『カレーが表面張力みたいに盛り上がってる?』と想像されるお客様もいらっしゃるんですが、まったくそんなことはなくて、表面張力のように溢れそうなギリギリの所でとどまっていたいなぁと。あとづけなんですけどね」

いまいちよくわからないのですが(笑)、"ギリギリ"か。

スパイス感やうまみを強く押し出せばいいってものじゃない。かといって物足りなさは感じさせたくない。素材のおいしさを引き立たせるためのギリギリのラインを狙ったスパイス使い。

賑やかな駅近に出せば、もっと客が来るかもしれない。けど、一挙に来られても対応できないし、テンヤワンヤでカレーを作るのも本意じゃない。喧騒から離れた鷹番ギリギリのこの場所で、自分のペースでカレー作りに没頭したい……。

これはあくまでも筆者の想像ではあるのですが、いずれにせよ、いろいろな思いが込められた店名なんでしょうね。

表面張力の偶然

ところで。

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暑い日でした。けど、少し開けられた窓から時折、かすかに風が吹き込みます。ある思い出に浸る私の頬を、風がサラリと撫でて通り過ぎていく……もう10年近く前になるのか。

以前、ここにはPONTE(ポンテ)というダッチコーヒーのカフェがあり、カレーをウリにしていました。詳しくはリンク先の記事をご参照いただくとして、ponteはイタリア語で橋。店名のPONTEは川にかかる橋ではなく、物理用語の液架橋力に由来していて、これには表面張力が大きく関係しています。

ここにあったカレーが名物のカフェの店名が表面張力に関係していただなんて、知っているのはPONTE店主とおそらくは私だけでしょう。そして今回、同じ場所に表面張力というカレー店。

もしかしたら自分一人しか気づいていないかもしれない密かな偶然――こういう瑣末なことで悦に浸る自分に気色の悪さを感じつつも、初夏の風に撫でられた頬は緩むのでした。

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少し高くも感じるのですが、こういうカレーはこれくらいが普通? どうですか?

帰り際にも女性二人組がやって来ました。もともとが人気店でしたし、移転しても、店名が変わっても、すでに多くの方に認知されているのでしょうね。

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私のようにカレーに疎ければ、「ああ、こんなスパイス料理もあるのか」と驚かされることでしょう。カレー通ならば、「これぞゴアのカレー」と膝を打つかもしれません。

店主の人柄を表しているかのような優しく爽やかで繊細な本格的スパイスカレー。一度試してみてはいかがでしょうか。

偶然が重なる通り

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最後にこれまたどうでもいい余談。

この通りのずっと北には美かわ家という老舗そば屋があって、通りの南、目黒通りを越えたところには入船という老舗のそば屋がありました(いずれも閉店)。遠く離れてはいますが、同じ通りの一直線上に老舗そば屋が2軒。

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しかも外観がどことなく似ています。

そんな偶然に思わずニヤリとしてしまったなんてことを美かわ家の記事に書いた数年後、記事を読んでいた美かわ家の娘さんに飲み屋で偶然出会い、美かわ家と入船が親戚筋だと教わりました。なんという……。

誰も気に留めないような密かな偶然が、かくもたくさん詰まった通り――先の頬の緩みには、そんなことも含まれていたり。

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