学芸大学駅の西口を出て線路沿いをすぐ左へ。三井住友銀行を越えた先の路地を右へ。この筋に暇を売る店という喫茶店があります。学芸大学でもっとも変わった名前の飲食店w
「お店が開きだすまで、どこかでお茶しようよ」
「へい。どこがいいかなぁ。新しくできたところで、行ってみたいところはあるんだけどなぁ」
「最近のオシャレなところは全部、禁煙でしょう」
私も連れも喫煙者。禁煙の店にも行きますが、時間を潰す場合はやっぱりね。けど、タバコが吸える喫茶店となると、最近はちょっと限られてきます。
「そうだなぁ。タバコが吸えて、少し暇を潰せ……あっ」
こうしてお店の存在を思い出し、行ってみることにしましたw
カウンターが8~10席ほど、二人掛けテーブルが2つ。通りに面した側が全面窓ということもあるのでしょうか、開放感のある店内です。
前を通るといつも賑わっているイメージ。この日も先客がお一人、私たちが入った直後にもう一人、その内さらに二人ほど。みなさんご常連。
土曜日の夕方16:00ごろでした。奥の先輩は焼酎を飲んでます。手前のショートカットのお姐さんはアイスコーヒーとビールという、すごい組み合わせw 後ほどやってきたお父さんは赤ワインを飲んでました。これくらいの時間になると、しかも土曜日ですし、お酒を飲む人も多い店なのでしょう。
私はいつも通りアイスカフェオレ、連れはブレンドを注文。
「いいね。この雰囲気」
「あ、そう。へぇ」
「私、純喫茶好きなんだよ」
俺たち以外、全員、酒飲んでるじゃん。純喫茶ではないんだけどな。まあいいや。ツッコんだところで、「定義の話じゃなく雰囲気の話」と言われるに決まってるしw
でも、確かにいいね。なんか落ち着いた雰囲気でなごみます。
カウンター内にいらっしゃるのはベリーショートのお姐さん。手元は見えませんが、ドリップしているようです。
じっくり時間をかけ淹れられたアイスコーヒーとホットコーヒー。
シロップがたっぷり供されました。いいねぇ。もちろんたっぷり入れます。まずは上部をひと吸い。香ばしさはそこそこ。サッパリ目です。けど濃さもある。コーヒーに無知な人間が書くと、なんてひどい説明になるんだw
続いて、底のほうをひと吸い。あまーいシロップがやって来ます。いいねぇ。これこれ。コーヒーは甘いのが一番。
連れのブレンドもひと口飲みました。
「爽やかだね」
「うん、さっぱりしてる。この酸味は南米かな」
「え? 産地で酸味が違うの?」
「そうだよ。南米のコーヒー豆は酸味が強い」
「いやいや。南米ってもいろいろあるだろうし、そんなざっくりと特徴まとめられるもんなんか?」
「ほんとそうだって。調べてみ」
スマホで軽く見てみます。
「どれも『ほどよい酸味』とか『適度な酸味』とかだねw ぜんぜんわかんねーし、説明どれも一緒じゃん。なんだよこれw」
「別に私はコーヒー自体に詳しいわけじゃないし。雰囲気が好きってだけだし」
なんとまあ低レベルな会話をしてんだろ、俺たちw
ミルでコーヒー豆を挽き終わったお姐さんが、ちょうど私の前にやって来ました。
「こちらはどれくらいになるんですか?」
「さんじゅう……33年」
「33年! へぇ。すごい。この界隈じゃ相当長いほうじゃないですか?」
「いえいえ」
「どこだろう。あんぐいゆとか平均律とか」
「あんぐいゆさんは長いですね。平均律さんはそこまでは」
「あと、雑伽屋?」
「そうですね。あと、珈琲美学さんですね」
「あー。結構ありますねぇ」
サバサバした感じのお姐さんは、お父さんから一杯ごちそうになった模様。焼酎のお湯割りか何かで乾杯していました。
「そろそろ行こうかね」
「へい」
お会計をしてもらい、店を出ました。すぐ隣には中華料理店・Cinema Cafe(シネマカフェ)があります。
「ここ、前にランチで来たじゃん?」
「うん」
「オーナーさんが同じなんだよ。で、確かそのオーナーさんが映画関係か何かで、だからCinema Cafe(シネマカフェ)って言うんだよね」
「そうなんだ」
確か、ねw
そういえば、暇を売る店の由来を聞かなかったな。まあいいや。十分、暇は買わせてもらったし。
※シネマカフェは2022年7月17日に閉店しました
帰って調べてみたところ、暇を売る店は1985年創業。もともとここでは近所の方々が趣味で作ったものなどを販売していて、だから「暇を売る店」という店名になったのだとか。
喫茶店のコミュニティってのも面白いよなぁ。昔からある、こじんまりとしたカジュアルな喫茶店は、どこも常連さんが集っていて、その会話を聞いているだけで楽しい。繁、目黒パウリスタ、シグマ、どこもそうでした。
今度は一人でちょいと飲みにでも行ってみるかな。