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痛風蒸しが激やば!寿司屋・空海(都立大学)のコースはとてつもない量で、クオリティは高く、お手頃価格。潔さとパンチを感じさせる料理の数々には職人の思いが乗っていました。

誕生日に私をどこへ連れていくかというのは、私の連れにとっては難儀だそう。できれば学芸大学界隈で私が行ったことのない店。これが私の条件です。「んなの知らねーよ」と言いたくもなるでしょう。

で、実際に連れて行ってくれたのが都立大学の寿司屋・空海でした。

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都立大学駅から徒歩1分。線路沿いのビルの2階にある空海。連れの都合で実際の誕生日の数日後に行ったわけですが、誕生日当日は私が勝手に一人で突然、和可奈寿司(わかな)に行っていました。

「誕生日の日にお寿司屋さん行ったとか言うから……」

すまんすまんw 寿司屋を予約していたというのは知らなかったもんで。

連れが扉を開け「予約の○○です」と告げます。店主が少し慌てます。

「あれ? 7時では……」

「いえ、5時半と……」

おおうw おそらく7と17の取り違え。ま、ありがちですわな。

「すみません、ではどうぞ」

「大丈夫ですか?」

「はい」

少々恐縮気味にカウンターへつきました。ただ、こういう経緯があったというのが、後々、この店のすごさをさらに浮き彫りにすることになります。こんなことを言うのもなんなんですが、店としては厄介だったでしょうけど、私にとってはとてもよかったw

瓶ビールを飲みつつ日本酒を頼みました。なんてお行儀の悪いw

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澤屋まつもと 守破離 五百万石。京都・伏見の酒蔵。グラスはもちろんマスまで表面張力。口に含むと一瞬ピリっとします。いま調べたところ、火入れ由来の炭酸ガスが混ざっているのだとか。なるほどそのせいか。味わいはとてもまろやか。けど後味は切れます。うまい。

さて、料理です。おまかせコースでお願いしていました。まずは数品の小料理が出てきて、そのあとに握りが出てくるというスタイルなんだとか。で、その料理がすごい。

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ばい貝(お通し)、あん肝とふぐ皮、桜エビ。まあ、どう考えたってうまい。

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ぶり、生ダコ、刺身盛り合わせ、三陸のカキ。ぶりは塩ダレ、生ダコはゴマ油と塩をうっすらとスプレーで吹きかけています。刺身のぶりは脂の乗った部分を遣っています。カキはプリップリ。いやぁ。うまいなぁ。酒も進みます。

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二杯目は天吹 純米 雄町ひやおろし(佐賀)。まったりふくよか。うまっ。

つまみがまだ続きます。

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痛風蒸し。ウニ、イクラ、白子が入った茶碗蒸しです。甘い天吹は茶碗蒸しをドリンクにします。やばいです。

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アナゴの白焼き。ふっくらパリッ。つーかさ。

「ねぇ、本当に握り出てくるの?」

「うん、たぶん……」

目の前に笹の葉が敷かれました。本当に握りも出てくるんだねw そりゃそうか。でも、そう疑問に思わせるほどの料理数。すごい。

そしてもうひとつ。

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17:30の口開けで私たち二人が入り、追って二人×二組、一人客が入り、痛風茶碗蒸しを食べる頃合いに三人組がやって来ました。カウンターは10席ほどで、4人、10人が入れる座敷席もあります。この規模を一人で回してらっしゃいます。それがすごい。

料理は滞りなく出てきます。手が早い。酒の注文にも素早く対応。それでいて、目の前の一人客の常連さんとはしっかり会話をします。しかも私たちのこの時間での来店は想定外。少々計算が違っていたはず。にもかかわらず、スムーズに料理ができあがっていきます。

「すごいね」

「うん。構成の妙だね。一人でできるように、メニューがちゃんと考えられてる。あと、この動きは経験と慣れ。考えなくても体が動いてる」

「あの包丁をトンってするのは何?」

刺身などを切る際、包丁の先を水につけ、包丁を縦にして柄の部分をトンと叩きつけています。

「先につけた水を刃の下の方まで垂らすというのと、余分な水を切るってことじゃないかな。水をつけると包丁がスッと抜けるんだよね。切りやすくなる」

知らんけどw 今度、味心の野中さんに聞いてみよ。

ネタを出す、包丁を濡らす、トンと叩く、切る、ネタをしまう、まな板を拭く、包丁を拭く。単に決まり事を繰り返しているというだけじゃない。一連の流れが身にしみついています。職人にはリズムがある。

※追記:後日、聞いてみました。基本的には私の想像通りでした。そして、普通は濡れた布巾にサッと包丁をなでつけるだけ、相当に古い店(職人)じゃないと水は使わないとも。空海のご主人は昔ながらのやり方をそのまま今でも続けてるってことなのかもしれませんね。追記以上

さて、ようやく寿司です。

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スミイカ・ホタテ・タイ、マグロのづけ、車海老・寒ブリ、イクラ・ウニ、サンマ、アナゴ、巻き。

ほとんどはそのままで食べられるよう、塩が振られていたり、醤油が塗られていたりします。どれもネタはよく、シャリはキツイというほどでもなくしっかり目に握られていました。パンチがあります。味付けがしっかりしている。だから食べごたえを感じます。

イクラ・ウニで「おや?」と思ったので、巻きものでもう一度確認して聞いてみました。

「この海苔って普通の海苔というか、海苔は海苔なんですが、なんだろう」

「青のりが混ざってるんです」

「あー、なるほどぉ」

青混り海苔、混ざり海苔、混のりなどと言うそうです。普通の海苔より磯の香りが強く、香ばしさというよりも生っぽさを感じさせます。これがまたいいパンチ。

最後はギョクかな?

「ギョクはないらしいよ」

「そうなんだ」

椀で〆。

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店を出て、連れがこう言います。

「ギョクが出ることはまずないんだって。どっかに書いてあったけど、10年くらい通ってる人でもギョクが出たのは数えるほどって」

「なるほどねぇ。わかる気がする。あの値段であの量でしょ。しかも一人。前もって仕込みしておく量も相当多いから、手のかかるギョクまではやれないんだろうなぁ。結局、クオリティも量も、あの値段でできるギリギリなんだよ。最大限にコスパよく感じてもらうためにはどうすればいいかってのを第一に考えてるんじゃないかなぁ」

全体的にパンチのある味付けもそう。繊細さを押し出すと、どうしても満足度が低くなる可能性がある。食べごたえをいかに感じてもらえるか、「この値段でここまでおいしくて量も食べられるなら大満足」と多くの人に感じてもらいたい。

逆に、そのためなら"泣いて馬謖を切る"部分があっても、それを厭わない。それがこの店の、あの店主の信条なのでしょう。潔い。

とてもおいしかった。量もすごかった。私は払ってないけど値段もお手頃。気取らず気楽にくつろげる。店主の動きも雰囲気もいい。

でも。

しっかりと思いが伝わる料理でした。お客さんに満足してもらいたい、喜んでもらいたいという気持ちがひしひしと伝わってきます。それが素晴らしい。

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空海はオープンして少なくとも10年は優に経っています。大将の渡辺龍哉さんはもともと学芸大学の寿司の美登利(のちに「翠」と改名)にいて、独立して現在の店を開店させたそうです。余談ですが、寿司の美登利は麺や すするの場所にありました。有名なあの美登利(総本店:梅丘)とはまったく別です。

連れがどこまで知っていたのかわかりませんが、学芸大学と無関係ではない店をチョイスしてくれていました。それはさて置いても、とにかく素晴らしい料理屋でした。ありがとう。

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