後藤ひろし（ひろぽん）目黒郵便局と東急バス目黒営業所（大きな東急バスの車庫）の間から南、西小山・洗足方面へと伸びる道を円融寺通りと言います。目黒車庫前交差点から円融寺通りを南下すると、都道420号（補助46号線）をまたぎ、例の五叉路、立会川緑道へと続くわけですが、今回訪れたのは、立会川緑道を越えたあたりにあるお店です。
西小山駅から徒歩10分、武蔵小山駅から徒歩15分、学芸大学駅からだと徒歩20分強。円融寺通り沿いにある食堂 大門（だいもん）。ずっと行きたかったお店です。
食品サンプルのショーケースが好きです。サンプル自体もいいのですが、サンプル以外に置かれた物に店の性格が表れます。食堂 大門にあるのは番傘や招き猫のミニチュア類。「おいしさイロイロ」と書かれた札もとてもかわいい。
食堂 大門のケースをここまでマジマジと見たのは初めて。ずっと普通の食堂かと思っていたのですが、街場の中華屋のようなメニューです。そういや外観もそんな感じ。カツライス、オムライスも気になりますが、チャーハン・餃子で行くべきか？
「いらっしゃいませ～」
優しそうな白髪のお母さんが出迎えてくれました。店内にはいろいろなものがあって楽しげ。とりあえず立って右上のメニューを眺めます。これはちょっと……。
ラーメン、チャーハン、オムライス、カツ丼、餃子、にらレバ炒め……。魅惑メニューのオンパレード。私にどうしろと？ ここから選べと？ なんて酷な店なんだ。しかも値段がお手頃です。禁断の2品やっちゃうか？
いつもより少し時間をかけ、ええいままよと声を出してみます。その時に出たメニュー、それでいいじゃないか。さて、口から突いて出る料理はなんだ？
「オムライス、お、お願いします」
結局、オムライスという単語が出てきました。ここに私の意識は介在しません。無意識に、勢いに判断を任せました。ただ、「おおもり」と言いかけたのだけは制御します。
ガンガンガン、ジャッジャッジャ。威勢のいいフライパンと油の音。こりゃ完全に中華鍋だな。やはりそもそもの出自は中華系なのか？
タイガースグッズや猫グッズにも目を奪われますが、なんといっても床にドンと据えられた火鉢。鉄瓶が乗せられてますから現役なのでしょう。壁際には炭もありますし。なんかいいな。
卵を焼く音、皿に盛られスプーンが置かれる音を耳がキャッチしました。
「お待たせしました」
「うわっ。きれい」
「ありがとうございます（笑）」
調理をしていたであろう、息子さんと思しき方が運んできました。この方も白髪。ですが、おそらく意外と若いんだと思います。50歳に行っているかどうかくらい？
パンパンに包まれたオムライスです。しっかり焼かれた卵と真ん中に垂らされたケチャップは"食堂オムライス百科"に載っているそれ。このフォルム、この雰囲気、何かにたとえたい。王蟲（オーム）？ いや、違う。おくるみ？
まずはひと口。お。おおお。こいつ、優しい顔をして何気にパンチを持ってるな。玉ねぎとわずかな豚肉が一緒に炒められたケチャップライスは、ケチャップ以外の下味がしっかりしています。
中華スープも同様です。ベースは優しい中華食堂的醤油スープ。ですが塩を感じさせます。出す前に最後のひと振りをしているような感じ。いずれも濃すぎるとかしょっぱ過ぎるとか、そういうわけではありません。料理の見た目、お店の方やお店の雰囲気から感じ取れるイメージと味とのギャップが面白い。
端からね、キレイに一直線に割って食べていくのです。性格ですｗ でも、断面もいいじゃないですか。優しく、かつきっちりと包まれている様子がとても愛らしい。
おいしいです。でも、おいしいという以上に安定感を抱かせるオムライスでした。あ、ここまでやってくれるんだ。だったら他のメニューもきっといいはず、そう予感させてくれるのです。
会計時に少し話をうかがってみました。
「こちらはどれくらいになるんですか？」
「えーっと、53年……53年間ですね」
「そんなにですか。2代目でらっしゃるんですか？」
「はい」
「おいしかったです。ごちそうさまでした」
「ありがとうございます」
万遍の笑みでお答えになる店主。優しそうな笑顔がとても素敵です。すっごくいい人なんだろうなぁ。
チャーハン・餃子をいってみたい。けど、オムライスとは別にオムレツライスというメニューがあるのも非常に気になります。いや、カツ丼も好きなんだよなぁ。次回、また大いに迷いそうです。
SHOP DATA
- 食堂 大門（だいもん）
- 東京都目黒区原町2-1-5
- 03-3712-7657
- 公式