世界を旅して作り上げたカレー
目黒駅から徒歩13分。目黒通り沿い、目黒寄生虫館のはす向かいに店名考え中というカレー店があります。2023年7月1日にオープンしました。
もともとはエリックカレー(ERIC CURRY)という店名でオープンしましたが、商標の関係で店名を変えることに。いろいろ考えた結果、「店名考え中」となりましたw
店名考え中は向三軒両隣という洋風居酒屋を間借りして営業しています。水~土の営業時間は11:00~15:00、日は11:00~22:00。
店主・英作君は20才でインドに行ってカレーの魅力にハマり、以来、カレーの自作を始めます。その後もインドやアフリカを旅して回り、各国の料理からインスパイアを受け、独自のカレーを考案。これまでイベントなどでカレーを提供してきました。
そして2023年1月から約半年間、学芸大学のバー・プレミアワンで週一の間借り営業をし、今回、間借り先を向三軒両隣に変えて営業を始めました。
ある深夜、バー営業のプレミアワンでエリックカレー(現・店名考え中)のエリちゃんと出会い、そんな縁があって新しいエリックカレー(現・店名考え中)に行ってみたという次第です。
※これ以降も登場するエリちゃんは2024年7月28日に同店を卒業しました
ゆったりとしていて気持ちのいい店内
向三軒両隣が入っているビルは地下1階・地上4階建なのですが、このビル一棟を使用しているのは空間デザインを手掛けるまだまだー株式会社(代表:芳賀拓真氏)。同社はB1F・2FでパーソナルジムのPlug GYM(プラグジム)を、3F・4Fで設計事務所を、1Fで向三軒両隣を運営しています。
店内はカウンター席がメイン。右端にいらっしゃるのが「社長さんです」(エリちゃん)と言っていたので、芳賀拓真さんなのかな?
奥にはテーブル席もあります。
なぜかゆったりと感じられる店内。天井を高くしているのか、厨房スペースをコンパクトにしているのか、なんでだろう。スッキリとしていて気持ちがいいです。
カレーはチキンマサラとモイリーの2種
カレーは2種。エリック風チキンカレーとケララ風シーフードモイリー。後者は仕入れや季節により具材が異なるそう。
※その後、日によってカレーが変わるようになりました
こちらがドリンクメニューなのですが、ドリンクの価格は変わるそうなので、どんなものがあるかという参考に留めておいてください。
せっかくですから2種盛り(ご飯大盛り)をお願いしました。
オシャレな店内で輝くかわいい男女コンビ
「あの日(プレミアワンで会った日)はベロベロで」(私)
「そのあとにもう一軒行くって言ってましたよ(笑)」(エリちゃん)
「駅からは遠いけど、ここなら平日でも人通りが多そうだしいいね」(私)
「保育園・幼稚園が多いためか、お母さん方が多いです」(エリちゃん)
「おしゃれショップも多いし、おしゃれな人たちも多いだろうねぇ」(私)
プレミアワンは裏路地の怪しげな雑居ビルの3階でした。一方、向三軒両隣はオシャレエリアのオシャレな路面店。また、駅から遠いとはいえ、一日中、往来が途絶えません。少なくともランチ営業をするなら、ここに移って正解でしょう。
「お待たせしました」(英作君)
「それ、ご飯大盛り?」(エリちゃん)
「あ」(英作君)
「いやいや、それでいいよ(笑)」(私)
英作君は間借り先を変える間にもインドへカレーを勉強しに行っていました。一方、エリちゃんはフィットネストレーナーでもあるので、元気ハツラツ。
行動力はあるけれど、どこか天然なところがありそうな愛嬌のある英作君と、その尻を叩くキリッと美人のしっかり者・エリちゃん。いいコンビです。
二人とも20代(記事執筆時)。私からすると息子・娘と言えるくらいの年頃です。かわいくてキラキラしていてまぶしい。
スパイス・具・塩・油が大胆にまとめられたパワフルなカレー
まずはケララ風シーフードモイリーから。モイリーはケララ州の郷土料理で、シーフードを使ったココナッツカレーのことです。
あああ。この温度よ。熱々じゃない。だからすべての味・香りがしっかりと感じ取れます。この温度だけで100点あげちゃう。
全体を支配しているのはココナッツの甘みです。そこにエビのうまみが乗っています。まったりとしていてコクがあるのですが、時折、爽やかなクローブがカウンター。
クローブは牛や羊に合うと勝手に思い込んでいたのですが、シーフードやココナッツにも合うんですね。なるほど。おいしいし勉強になります。
英作君が修行していたゼロワンカレーからも影響を受けているエリック風チキンカレー。たっぷり油(orギー)が使われていて、こちらもトロッとしていてまったり濃厚。
ジャークチキンから着想を得た鶏肉はゴロっと無造作にカットされていて、その形状・大きさのバラつきさえもがおいしさを演出しています。
この葉っぱのようなものは何だっけ。カレーリーフ? ベイリーフ? タイ料理でよく使われるコブミカンのような柑橘の香りがします。こってりとしたカレーにスッキリとした香りを与えていて、いいアクセント。
両者ともに言えることですが、印象的なのが塩です。塩がビシッときいていて、カレーをまとめ上げています。
カレーを作ったことのある人なら、スパイスもさることながら、塩がいかに重要かということをご存じでしょう。塩が足りないとスパイスが上滑りします。しっかりと塩をきかせることで、具材とスパイスがギュッと結びつく。このカレーは塩がいい仕事をしています。
付け合わせはビーツと何か。ヨーグルトのようなもので和えられています。さっぱり。
「インドではみなさん混ぜたりして食べてます」(英作君)
最後のふた口ほどは2種のカレーと付け合わせを混ぜて食べてみました。すると、また違う味わいに。
いやぁ。いいなぁ。おいしい。スパイス、具材、塩、油、これらが奔放に組み合わされていて、それぞれがしっかり主張します。繊細というより大胆。力強い。パワフル。まるで若い二人をそのままカレーにしたみたいです。
「お口に合いますか?」(エリちゃん)
「もちろん。めっちゃおいしいよ」(私)
「テイクアウト・デリバリーもすぐ始める予定です(※)。ここでお金を貯めて、将来は自分で物件を借りて店を持とうと思ってます」(英作君)
濃厚でパワフルなカレー。キラキラ輝くパワフルな二人。このカレーなら、そして少し話しただけでも人を虜にする魅力があるこの二人なら、すぐ人気となり、話題になり、そう遠くない将来、自分の店を構えることになるだろうなぁ。
そんなことを予感させる味・人でした。
※テイクアウトはすぐに始まりました。詳細はインスタグラムで。
このあたりは何気にランチをやっているお店が少ないのだとか。近隣の住んでる方、働いている方におすすめしたいのはもちろん、わざわざ目指して食べにくる価値のあるカレーだと思います。機会がありましたら、ぜひ一度。
インドから姿を変えて伝わった金毘羅とカレー
大鳥神社から南西、目黒寄生虫館方面への目黒通りは坂になっています。坂の名前は金毘羅坂。まさに店名考え中のあたりにあった高幢寺(明治時代に廃寺)の金毘羅大權現(こんぴらだいごんげん)にその名は由来します。
金毘羅の原語はサンスクリットのクンビーラ(Kumbhīra)と言われています。クンビーラは古代インドの精霊です(※)。
詳細は省きますし正確なことは不明なのですが、インドから中国、日本へとヒンドゥー教・仏教が伝わる中、神仏習合も相まって、クンビーラは金毘羅大権現/宮毘羅(クビラ)大将(薬師如来十二神将)となり、香川県の金刀比羅宮(こんぴらさん)をはじめ日本全国の寺・神社で祀られるようになりました。
さて、姿を変えつつインドから日本へ伝えられたものがもうひとつあります。言わずもがな、カレーです。タミル語でカリ(kari/スープの具)あるいはカリル(karil/スパイスで味付けされた野菜や肉の炒め物)と呼ばれるものがカレーとしてイギリスへ伝わり、これが日本へとやって来ました。
様変わりしつつ、世界各国へ伝播していくインドの神様とインドのカレー。
インドが起源の神様・金毘羅大権現。その名を戴く坂の途中、金毘羅社のあった場所にインド生まれの料理・カレーのお店。偶然とはいえ、いやはや面白い。
※「クンビーラはガンジスのワニを神格化した水神で、ガンジスの女神・ガンガーの乗り物でもある」と解説するものが多いのですが(wikipediaも)、これは日本でしか見受けられないおかしな解釈。マカラ(Makara)とクンビーラが混同されて……といった詳細は下記リンク先をご参照ください。私はこの考察を支持します
SHOP DATA
- 店名考え中
- 東京都目黒区目黒3-11-9 PLUGビル1F
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- 公式