家の中で一番古い物はなんだろう。目の前にあるAQUOSの液晶テレビは2003年製と書かれています。家電だとこれが一番古いかな。
アディダスのスニーカーも、ハリウッドランチマーケットのジャケットも古いけど、ALPHAのミリタリーコートは97とあるから18年前。学生かそこらか。そうそう、確か横浜のBEAMSで買ったんだ。クイーンズスクエアが開業したのが1997年とあるから、ちょうどその頃だったのか。
なーんていう感慨にふけさせられたのも、こんな自転車を見たからです。
学芸大学駅から徒歩10分強ほど。東京学芸大附属高等学校近く、世田谷観音通り(旧明薬通り)沿いにある下馬の広瀬屋豆腐店。その店頭にありました。
「すみませーん」
鍋のようなものをたわしでガシガシ洗っているお父さんが、作業を中断し腰を伸ばしました。
「はい」
「もめんをひとつ下さい」
「はーい。170円です。ありがとうございます」
「この自転車すごいですね。どれくらい前のものですか?」
「30年くらい使ってますかね。もともとは父親が乗っていて」
「二代目でらっしゃるんですか?」
「そうです」
「こちらは何年くらいですか?」
「ここに来て40年くらいですかねぇ」
「すごいですねー。すみません、お忙しいところ。ありがとうございます。またきまーす」
「ありがとうございます」
家に帰り調べてみたところ、この自転車はブリヂストンのCOUNTRYというモデル。おそらくですが、1985年前後に販売されていました。お父さんがおっしゃる通り、ぴったり30年前。
30年前というと、私はちょうど小学生から中学生にかけてくらい。当時のことを思い出せはしますが、どれくらい昔かがピンときません。ですから、家の中にある古い物を探してみたのです。物があれば、それにまつわる記憶がよみがえり、時の流れが実感できると思いまして。
ですが、比較的物持ちのいい方だと自覚していながら、見渡してあったのは、しょせん15年、20年前の物。それでも相当昔に感じますが、この自転車は30年前。お店は40年前。到底かないません。
うーん、歴史ってすごいな。これほど長く商売を続けているというのもすごい。そして、こういう敬意の念が古いお店へと私を導きます。ここ広瀬屋豆腐店に限らず。
家に戻り、さっそく豆腐を頂きます。今回は翔び翔インスパイアで攻めてみました。
豆腐半丁にカリカリ梅のみじん切りとネギを乗せ、オリーブオイルを垂らします。最初は何もかかっていないところから。箸を入れると抵抗を感じます。比較的しっかり目。食べると大豆の甘みがフワッ。苦味は一切ありません。
梅、ネギ、オリーブオイルとよく合います。なかなかおいしいです。半丁では物足りず、もう半丁も食べることにしました。今度はごま油にしてみました。
ああん。翔び翔すごい。なぜオリーブオイルなんだろうと思ってたんです。翔び翔で。だけど、ごま油をかけてみて納得。ごま油ではキツすぎました。完全にごま油が勝ってます。ちゃんと豆腐を味わうなら、オリーブオイルが正解だ。さすが翔び翔。
豆腐屋は年々減って来ています。広瀬屋豆腐店ができた40年前は全国に約5万軒ありましたが、2012年には1万軒を割りました。
参考資料/東京商工リサーチ:豆腐業者411社 売上高1億円未満の零細規模が半数を占める
原料費の高騰、事業主の高齢化、後継者不足など、いろいろな要因があるのでしょう。寂しいことではありますが、致し方のないことだとも思います。そして、私にはどうすることもできませんから、せめて記憶に、舌に、その味を刻んでおこうと思うのです。失われてしまう前に。
SHOP DATA
- 広瀬屋豆腐店
- 東京都世田谷区下馬5-7-12
- 03-3411-1659
- 公式