今回ご紹介するのは株式会社寛文五年堂のいなにわそうめん。寛文五年(1665年)は稲庭地方に手延べうどんの製法が伝わった年とされています。それにあやかった社名でしょう。
秋田県湯沢市稲庭町を中心とした地域の名産・稲庭うどんはみなさんご存じだと思いますが、稲庭にはうどんだけではなく、稲庭そうめんもあります。
と言いますか、稲庭うどん自体が実はそうめんに近いのです。細さの話ではなく製法の話として。
うどんやそばは「手打ち」ですよね。生地を薄く延ばして細く断裁するのが、一般的な手打ちうどん、手打ちそばです。一方、稲庭うどんはヨリをかけながら、細く延ばしていきます(手綯い)。つまりは手延べうどんということなのですが、まさに手延べそうめんと同じ製法なのです。
じゃあ、このいなにわそうめんは手延べそうめんなのかというと、品質表示には「そうめん」とあります。ですから、手延べそうめんではありません。どういうこと? 理由はいくつか想像できるのですが、ここを語りだすと長くなり過ぎるのでやめておきますw
ただ、寛文五年堂の稲庭うどんでも用いられている手綯い(てない)という製法によって作られていて、手綯いはヨリをかけながら延ばすことなので、大雑把に言えば手延べのようなものです。
なお、寛文五年堂のいなにわそうめんには手綯いの他、油を使わないという特徴もあります(寛文五年堂に限らず、稲庭のうどん・そうめんは油を使わない)。
さて、いなにわそうめんを見ていきましょう。
80g×5袋。とても豪華な包装です。
開封して、その細さに驚きました。とても細い。
普通の手延べそうめんと並べてみたのですが、写真では違いがわかりませんね。けど、つまんでみるとハッキリわかります。体感で、一般的なそうめんの0.8倍くらいの細さ。これだけ細いそうめんを作るには、相当な技術を要するはずです。
もうひとつ特徴的なのは香りです。小麦の甘い香りが心地いい。なるほど確かに油を使用していない分、フレッシュな小麦の香りがするのかもしれません。
ゆで時間は1分半~2分と表示されています。1分45秒ほどゆでました。
ゆで上がりも細いです。細いそうめんにありがちなのですが、そのままだと少しごわつきます。ひと口分ごとにキレイにまとめて盛るか、水にさらして盛るとほぐれやすくなると思います。素麺マニアとしては、水にさらすのはお勧めしませんが。
ひと口目で驚きました。これまで100種以上のそうめんを食べてきましたが、そのどれもに似ていない独特な食感です。
うどんぽいムニッとした歯切れを予想していたのですが、うどんぽさはありません。ムニッとプリッの中間というか何というか。
稲庭うどんもそうですよね。普通のうどんとはまるで違うコシじゃないですか。ツルシコとした独特なコシ。あれに似ているのかなぁ。どうだろう。麺つゆにしっかりつけてすすると、ツルツルっと気持ちいい。
いずれにせよ、穏やかな弾力です。決して強くはありませんが、小麦の風味もしっかりとあります。全体を通して、透明感のあるそうめんだと感じました。
私はブチブチッという強い歯切れが好みなので、星は4つ。ただ、足りない星1つは単なる好みの問題です。とてもおいしいそうめんでした。柔らかな優しいそうめんが好きな方には断然おすすめです。
包装もきれいですし、贈り物にもいいですね。あるいは、そうめんをいろいろ食べてきて、たまにはちょっと変わったそうめんを食べてみたいという方にも楽しんでもらえるんじゃないでしょうか。
名称 | いなにわそうめん |
原材料名 | 小麦粉(国内製造)、食塩、澱粉 |
製造者 | 株式会社寛文五年堂 |
評価 | ★★★★☆ |