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えさけ/Et-Ça-Qu'est(学芸大学)はハンバーグが売りの本格ビストロ。シンプルながらも奥深い、素材を活かした料理に言葉を失いました。

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学芸大学駅から徒歩4分。バス通り沿いの駒沢通り方面に、えさけ(Et-Ça-Qu'est)というビストロがあります。2019年7月10日にオープンしました。駒沢大学のビストロコンフル(bistro-confl.)の2号店です。

木とのいずみんから「えさけがハンバーグ推しの店になった」という話を聞き、俄然、興味が湧いて行ってみることにしました。

※2020年10月7日追記:8月21日から休業していたのですが、9月28日に閉店しました。11月中旬、名前も装いも一新してリニューアルオープン予定とのこと(洋食ノスリ)。

※2021年2月18日追記:そろそろオープンしている模様。

※2021年12月21日追記:12月中旬、ノスリも閉店しました。追記以上

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カウンター約12席ほど(8+窓際4)。

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Et-Ça-Qu'estは一応、フランス語なのですが、文法的に微妙ですし、これ自体に意味はありません。あとで調べてわかったのですが、Et-Ça-Qu'estは秋田弁でしたw 意味は、えさけ=ぃえさけ=家さ来(け)=うちにおいでよ。店長・畠山一海(ひとみ)さんが秋田県男鹿市出身だそう(※名前に関しては後述)。

余談ですが、店名の下に書かれているフランス語「viens chez moi(ヴィアンシェモア)」が「うちにおいで」という意味です。

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メニューは日によって変わると思います。前菜、温菜、メインのハンバーグ。パスタを用意しているビストロも多いのですが、ここにはありません。オーセンティックなガチのビストロ。

白ワインを頼んだら、4、5本を説明してくれました。

が。

「一番安いのをお願いします」

説明を無駄にさせる、この頼み方……。

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「料理はお二人様分くらいあるので、おっしゃって頂ければ、お一人様分にすることもできます」

「真鯛のマリネをお願いします。普通の量でいいですよ」

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真鯛のマリネ しょっつるドレッシング(1000円)。厚みがあって、皮は引かずに湯引きしています。ひと切れ目はそのままパクっといったのですが、ふた切れ目からはナイフも使用。

塩味とうまみが鯛の身の中までしっかりと浸透。鯛自体は淡白な魚ですが、しょっつるのドレッシングによって濃厚に仕上がっていて、爽やかなセロリが全体をキュッと〆る。一種類、ほんのわずかにハーブ?セロリの葉?のようなものが使われているのですが、なんだろう。

食べ進める内に、なるほどなぁと思わされました。確かに薄く切るのが難しい魚ではありますが、このマリネはあえて分厚くしています。しょっつるのドレッシングとのバランスを考えているのでしょう。もし薄くしていたら、相対的に味が強くなりすぎていたはず。プリっ、ムチっとした食感を生み出す効果もあるか。

一見シンプルです。けど、よく考えられています。だから深い。そしてこれが難しい。

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「赤をお願いします。一番安いので」

先ほどの白もこの赤も、しっかりとした味わい。会計から逆算すると、それぞれ800円だと思います。

まーなんだ、一番安いワインを飲めば、その店がわかるんですよ。……ウソウソ。単にワインがわからないから、いいものを飲むに値しない人間というだけ。

「鹿のタタキとハンバーグをお願いします」

ハンバーグは20分ほどかかるので、早めに注文。よく見ると、「倉田家(くらたけ)の煮込みハンバーグ」ではなく「倉田家(くらたや)の煮込みハンバーグ」となっていました。

「"くらたけ"ではなく"くらたや"なんですね」

「オーナーが倉田という名前なので」

まあ、そうなんでしょうけどw ある種の屋号的なニュアンスということなのかな。

※のちに「会社が……」云々と言っていたことを思い出しました。運営会社の名前が株式会社倉田家(代表:倉田俊輔さん)。ちなみに店主の名前も現在は倉田一海さんかもしれません。ということは……

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夏鹿のタタキとサマートリュフ(1400円)。思っていた倍の量。鹿肉もサマートリュフも。

鹿はさっぱり。ムチっとジューシー。中心にひと切れだけ、脂に近い部位が混ざっていたと思います。それだけは濃厚。

サマートリュフは香りが控えめなので、この鹿肉にちょうどいいかもしれません。シャロットか何かのアッシェがいいアクセント。

食べ終えると鼻の奥にかすかなトリュフ香。そしてブラックペッパーがピリッ。ん? 何かもうひとつ……。塩? これは普通の塩だろうか。塩に何か秘密があるような。気のせいかな。

それにしても真鯛にせよ鹿肉にせよ、素材がいいというはもちろん、素材を活かそうとする調理が印象的です。ただ、それは技を見せつけるようなものではありません。相応に手をかけているだろうに、それとわからせない、さりげない仕事。職人だ。

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ハンバーグがメインとなったのは2020年6月頃から。無類の羊好きなので、羊のハンバーグにも惹かれましたが、初回はオーソドックスな倉田家の煮込みハンバーグ(1500円)。

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かわいいフリをして狂暴です。肉感がすごい。和牛、アンガス牛、豚ウデを使っているのですが、脂を極力抑えた肉のチョイスなのでしょう。ジュワッとジューシーというよりも、ザ・肉!という感じ。

途中で自家製ちぎりパン(100円)を頼みました。皿に一滴たりともソースを残したくない。

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温められたパンで皿をきれいにしながら、心の中でひとつため息。

はぁ……。やな客だ。

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黙々と食べ進め、ほとんど会話をしませんでした。本当はいろいろなことを聞きたかったのに。

なぜ厚めに? セロリ以外に何を使ってる? しょっつるドレッシングには漬け込んでる? どれくらい? どこの鹿? 普通の塩? なぜハンバーグを? 煮込みなのに崩れないのはオーブンを使ってるから? どうして学芸大学? えさけの由来は?

普段なら聞いていたかもしれません。それを取っ掛かりに、感じのいい一見客になることもできたでしょう。自分で言うのも何ですが、そういうのは得意なほうです。

けど、そうしませんでした。この料理に情報という余計な調味料はいらない。いい料理は語りかけてくる。料理との会話に集中するんだ――そんな思いが、店との会話を抑制させたのです。情報は時に舌を狂わせる。

結果、黙って食べているだけのむさくるしいおっさんが空気を悪くして、若い二人を完全に緊張させてしまっていたと思います。ワインの頼み方がああだし、嫌悪感すら覚えさせていたかもしれない。

ま、しゃーない。それだけ真剣だったんだ。あなたの料理に。

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会計は6160円(税込)。一人客としての頼み方を間違えたかもしれません。真鯛と鹿を一人用にしてもらって5000円台、もしくはそれにあと1品足して6000円くらい、とするのが正解だったかな?

二人なら、私が頼んだものにあと1品とワイン2杯を加えて9000円、ないしはワインをボトルにして1万円。それくらいが平均でしょう。

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驚きというスパイスが効いた、シンプルかつ奥深い料理の数々。

ええさけのみに、まぁんずめぇもんくに、ぃえさけ。

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