バーンラック(学芸大学)はイサーン出身のタイ人料理研究家が作る家庭的タイ料理のお店。マッサマンカレー、グリーンカレー、ガパオはオリジナリティがありつつ現地仕様の本格派

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学芸大学駅から徒歩3分。学大横丁の北端にバーンラックというタイ料理店があります。2019年8月3日にオープンしました。

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ここは元祖紙やき ホルモサ 学芸大学店なんですが、昼の11:00~15:00だけバーンラックが"間借り"で営業しています。

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4人掛けテーブルが3つにカウンター。厨房に立っているのはタイ料理研究家でもあるキラトラ(Kiratra)さん。フロアには男性とお嬢ちゃん。ご夫婦でお子さんだろうな。オープン日で土曜日ということもあって、お嬢ちゃんもお手伝いか。このお嬢ちゃんがとにかくまあかわいい。

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メニューは

  • マッサマンカレーセット
  • グリーンカレーセット
  • ガパオセット
  • ガパオ&グリーンカレー
  • ガパオ&マッサマンカレー

マッサマンカレーは"世界一おいしい料理"とも言われています。

参考サイト/CNN:The world's 50 best foods

このメニューボードは提供数を把握するためのものでもあるのでしょう。けど、着席後にわざわざ見に行かなきゃいけないので、テーブルへこのボードを持って行くか、別途、メニューをテーブルに置いておいたほうがいいでしょうね。

立ち上がり、ボードに近づき注文。

「これは取って渡した方がいいんですか?」

「あ、いえ」

「じゃあマッサマンカレーとグリーンカレー・ガパオのセットをお願いします」

「マッサマンカレーはカレーだけで大丈夫ですか?」

「え? ライスは別ということですか?」

「いえ、ライスはついています」

「?? じゃあ、マッサマンカレーを」

あとで想像してみたのですが、マッサマンカレーとガパオのセットではなく、マッサマンカレーだけ?という意味だったんですね。これはメニュー名が悪いw

単品であってもライス・サラダがついてくるから"セット"。けど、カレー&ガパオも"セット"と言えなくはない。だからややこしい。これでは口頭での注文にすると取り違える危険性があるし、二度手間になることも多くなるはず。

間違いをなくしたいなら、

  • マッサマンカレー
  • グリーンカレー
  • ガパオ
  • Gセット(グリーンカレー&ガパオ)
  • Mセット(マッサマンカレー&ガパオ)

※すべてにライスとサラダがついてきます

が正解だろうな。あるいは極力、口頭注文をさせず、注文札を取らせるか。

男性(旦那さん)はこういう仕事をしたことがないのでしょう。初日ということも相まって、なんだかモタモタ。ただ、決して嫌な感じはしません。なんだろうなぁ。純朴な人柄が見えてほっこりします。飲食店とか対面接客って難しいよね。私もまーったくできないもんw

隣で心配そうに見つめてるお嬢ちゃん。このお嬢ちゃんはしっかり者って感じ。お父さんよりキビキビ働くんじゃね?w

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グリーンカレー&ガパオ。

ガパオは甘味とバジルがふわり、かすかに酸味。優しい味付けなのですが奥深い。幾度となくガパオを作って来ましたが、私のガパオはきつい、濃すぎるということに気付かされました。私はパンチを出しすぎていた。なるほどなぁ。

次にグリーンカレーをひと口。

あ……衝撃。

しっかり辛くて、しっかり甘い。けど、日本でよくある一般的なグリーンカレーとは風味が少し異なります。スパイス・ハーブがしっかり立っているんです。単に甘い、辛いだけじゃなく、スパイス・ハーブの風味がちゃんと感じられます。爽やかさもあります。

なぜこうなるのか。ポイントはきっと温度。バーンラックのカレーはぬるいんです。おそらくタイでもそうなのでしょう。そして、1000%確実にこう言えます。あえてこの温度にしています。考えられる理由はいくつもあります。第一にタイは暑いから。第二にタイ人の多くが猫舌だから(本当にそう)。第三に熱すぎるとスパイス・ハーブの香りが飛んで味がわからなくなるから。第四に昔、タイでは手を使って料理を食べていたその名残。

すべてとは言わないけど、タイ料理は熱々にしないことがポイントなんだろうなぁ。なるほど、タイ料理はこうするのか。感動的。この歳になってようやくタイ料理の何たるかが少しわかったから。それを教えてくれる料理に出会えたから。

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マッサマンカレーも同様です。風味豊かなんですが、同時にとても優しい。このタイプは初めて。そして、マッサマンカレーもぬるいのですが、だからこそマッサマンカレーの味がよくわかります。

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私は濃厚でパンチのあるマッサマンカレーにしか出会ってきませんでした。バーンメイのマッサマンカレーがまさにそう。バーンメイのマッサマンカレーもそりゃもうクソうまい。バーンラックのマッサマンカレーは方向性が異なりますが、これはこれでとてもおいしい。おいしい? いや……。

おいしい料理なんてどこにでもあります。けど、バーンラックの料理はおいしいというだけじゃない。料理に思想がある。ポリシーがある。"この人の味"というものをしっかりと感じさせてくれます。いい料理だ。

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隣の先客が帰り際にこんなことを言いました。

「教えてもらったレシピで作ってます。タマリンドがまだいっぱい残ってるので」

ほー。先客が店を出たのち、食べながら聞いてみました。

「今の話しぶりからすると、料理教室をやってらっしゃるんですか?」

「はい」(男性)

「お店をやっていたわけではない、と」

「はい。今日がオープン日なんです」(男性)

「お二人はご夫婦で?」

「そうです」(男性)

「ホルモサのマスターとお知り合いなんですか?」

「ちょっとした縁がありまして、こちらをご紹介頂きました」(男性)

「バンコクにバーンラックっていう地域がありますよね。店名はそこから?」

「はい。バーンラックが好きで」(キラトラさん)

とびっきりの笑顔でそう答えるキラトラさん。緊張の面持ちの旦那さんに対し、キラトラさんは朗らかで明るい。教室で生徒さんたちに教えてきたという経験があるからだろうな。

「タイへ行かれたことは?」(キラトラさん)

「ありますよ」

「タイの東北出身なんです」(キラトラさん)

「東北? イサーンということですか?」

「はい! イサーンです」(キラトラさん)

「イサーンといえば、代々木のソムタムダートウキョウもイサーン出身の方ですね」

「ソムタムダー、よく行きます。タイ人はみんな行きます」(キラトラさん)

「やっぱおいしいんだ」

バーンラック(บางรัก)はタイ王国バンコク都の行政区のひとつ。バーンは水辺、ラックはカロトロピスという木(花)の名前。昔、この一帯を流れていた運河にラックが浮かんでいたことが街の名前の由来(諸説あり)。

また、バーンには家・国家・村、ラックには愛という意味もあります。ですから、バーンラックは"愛の街"とも捉えられていて(ある種のダジャレ)、バレンタインデーに多くのカップルが集まったり、結婚式をバーンラックで挙げたり、婚姻届けをバーンラックの役所に出すのだそう。

イサーンは方角の東北という意味。そして多くの場合、イサーンという言葉だけでタイ東北部と理解されます。

ソムタムダーはニューヨーク店がミシュランを獲得しているタイ料理店。その東京店がソムタムダートウキョウ。

「今も料理教室をやってるんですか?」

「ここを始めたので、今後は日曜日だけになります」(男性)

「教室のパンフレットみたいなものはありますか?」

「外国人が教える料理教室を紹介しているtadakuというサイトがありまして、そちらに詳しいことが載っています」(男性)

「tadaku……あ、これだ」

「クックパッドでもレシピを紹介しています」(男性)

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あーあ。もっと食べたいな。ヤムウンセンもソムタムもトートマンクンもガイヤーンもラープムーも食べたい。キラトラさんの料理をもっと食べたい。人が見える料理が大好き。人が感じられる料理が大好き。

「ごちそうさまでした」

「コップンカー」

「おいしかったです」

「お母さんの味なんです」

「そうなんですか。コップンカッ」

いきなり店を構えるのは大変です。こうした間借りはいい手段。けど、ランチへ一回行っただけですが、これだけでも十分わかる。独自に店を構えても絶対に大丈夫。

カウンター4席、4人掛けテーブル1、2人掛けテーブル1くらいのサイズ感でやれば、絶対にいいと思うなぁ。恵比寿のリトルバンコックくらいのさ。

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と、ここまで書いて調べてみました。やはり、タイ現地の料理はだいたいぬるいそう。そして、そのままのものを日本で提供すると「ぬるい」と文句を言う人も多いよう。

タイ現地の味をそのまま再現するのか、日本人に合わせるのかは店の考え方次第。どちらが正解ということではありません。少なくとも、この点に関して"べき論"を振りかざすのはおかしい。ただ、誰にも好みはあるでしょう。ですから、好きか嫌いかで選べばいい。

タイ料理をほとんど食べたことがない、もしくは日本人に合わせた味を求めるのなら、他をあたった方がいいかもしれません。たとえばプアン(puan)とかね。

もしローカライゼーションされていない、現地に近い味を求めるなら、そしてタイ料理に慣れ親しんでいるならバーンラックへ行ってみて下さい。きっと満足できると思います。あるいは「あ、こういうタイ料理もあったのか」と発見があるかもしれませんよ。

DATA
店名バーンラック
住所東京都目黒区鷹番2-21-19-101
電話番号090-9953-3122
営業時間11:00~15:00
定休日日曜日

タイ料理は知らないことがいっぱい

"タイカレー"はカレーではない

私たちがグリーンカレー、イエローカレー、レッドカレーなどと呼んでいるものは、タイではカレーとは呼ばれていません。ゲーン(แกง)です。汁物という意味。外国人(タイ人以外)が勝手にカレーと呼んでいるだけ。タイ人も外国人向けにわかりやすく便宜的に「カレー」と言うことはありますが。

というか、そもそも"カレー"なんてもの自体がありません。インドの料理をカレーと言い出したのはイギリス人。タミル語で食事を意味するKaRi(カリ)をイギリス人が間違えてスパイスを使った料理=カリと思い込み、スパイスミックスおよびこれを使った料理をcurry/カリー(カレー)と呼び始めたというだけ。

ガパオなんて料理はない

ガパオ(กะเพรา/ガプラーオ)はホーリーバジル(カミメボウキ)という意味です。タイにガパオライスといった料理はありませんし、タイで「ガパオ下さい」と言ったら、ホーリーバジルの葉が出てきます(大げさに言うとね)w

言い方はいろいろあるようですが、バジルと豚ひき肉を炒める料理はผัดกะเพราหมูสับ。

ผัด:炒める・混ぜる
กะเพรา:ガパオ=ホーリーバジル
หมู:豚
สับ:みじん切りにする・ミンチにする

読み方はパッ(ト)・ガプラーオ・ムー・サッ(プ)。

ちょいと気の利く店員ならホーリーバジルは持って来なくて、「豚、鶏、何と炒める?」みたいに聞くかも?w

かように、海外(食)文化がデタラメに認識されているということがよくあります。日本人の99%がジェノベーゼを誤解していたりさ。なお、wikipediaには「タイカレー」も「ガパオ」も「ジェノベーゼ」も載っていません(項目としてない)。

どこまで正確に知るべきかはわかりません。わかりませんが、無知(であるかもしれないこと)をできるだけ自覚して、できるだけ正しい知識を有していたいなと。その上で「ガパオお願いします」と注文したい。というのが私の性分w

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