学芸大学駅から徒歩3分。学大横丁の先の高架下付近、都道420号沿いにある焼き鳥屋・トリケン。
学大の大人気店・鳥おきが2014年に2号店・トリオキをオープンさせます。このトリオキを任せられたのが松田健太君、愛称・マツケン。2016年、マツケンは店ごと独立して、店名がトリケンとなりました。
余談ですが、鳥おきの店主・森さんは鳥よし 西麻布店(本店・中目黒)、床島(とこしま)(三軒茶屋)にいた方。
店内はカウンターのみ。鳥おきはシックな感じですが、こちらは比較的明るい雰囲気。この日、私以外はすべてが男女のカップル(6組)でした。
「こっちのほうがゆったりできるから好きなんだよね」
と隣の男性が言っているのが耳に入ってきました。確かに、こっちのほうがリラックスできるかもw
とりあえずビールを飲み、お通しをつまみながら、おまかせで5、6本お願いしました。何も言わず「おまかせで」と言ったら、どんどん出てくるので、適度なところでストップをかけます(最初に説明してくれます)。最初に本数を言っておけば、うまいことその本数で構成してくれます。もちろん一本ずつ頼むこともできますが、おまかせにするのがおすすめです。
一本目、サビ焼き。その場でワサビをすり、ピッとつけます。中心部はレアなんですが、しっかり熱が通っていて、プリプリ、アツアツ。炭火じゃないと、なかなかこうは焼けません。もちろん腕もあるのですが。
二本目、ハツ。開いて串打ちしているのですが、切り分けず、くっつけたまま開いています。仕込みにしっかり手をかけていることがよくわかるひと串です。味わいは濃厚。
三本目、血肝。甘いタレ。香ばしい炭の香り。トロトロのレバー。一人だったのですが、思わず「うめっ」と声が漏れます。
四本目、かしわ。皮目を上にして撮るべきだったかな。まあいいや。皮を少し下げて、皮ごと串を通すのか。なるほど。こうすると皮が外れたりしないしね。パリっとした皮、ジュワっと汁があふれる肉。たまりません。
五本目、手羽先。皮がサクッとしています。肉はプリプリでジュワッ。しっかり育った素性のいい鳥なんだろうなと思わせる大きさで、食べごたえもあります。はぁ、うまい。
「とりあえず5本お出ししましたが、どうしましょうか」
「あと、せせり、つくね! いやぁ、おいしいねぇ」
「ありがとうございます(笑)」
こちらは最初に頼んでいた胸肉のタタキ。表面を炙って、切り分け、塩をさっと振って、一度、冷蔵庫に入れます。ふむ、熱を取りつつ、塩をなじませるためかな。うーん、まじうまい。醤油系のタレをかけていますが、そのタレもまあよくなじんでる。ついでに唐辛子もうまい。芋焼酎が進みます。
追加の六本目、つくね。適度に肉感を残した挽き具合。包丁で叩いてるのかな。部位はどこだろう。普通はいろいろ混ぜるんだけど。しっとりしていてうまいなぁ。今度、松田君に会ったら聞いてみよう。どうしてるのか。
追加の七本目、せせり。この弾力、この味……。よく動くから締まる。味も濃くなる。だからうまい。〆にふさわしい一本です。
チリっという炭の音、キンという炭を割る音、立ち上る煙、甘くて香ばしいタレの香り。焼いている様子を見ているだけで楽しい。こちらは焼き上がった串を一度ギュッと見つめて、その仕事ぶりを確認して、できるだけ素早く一本を食べきります。真剣。
床島さんに取材させて頂いたことがあるのですが、その時の言葉が印象的でした。
「焼き鳥は一期一会」
一本一本が異なります。炭の具合だっていつも同じというわけじゃない。気温、湿度も違う、空気の流れも違う。だから炭台に置くそのひと串とは一期一会。
けど、これは食す側も同じなんですよね。人間が切り分け、串打ちして、焼いているんですから、一本一本が違っています。仕込みが不安定という意味ではなく。
この人に出会い、この店に来て、この串と対峙する、これもまた一期一会。そんなことに想いを馳せつつ食べる、ちょっと贅沢な焼き鳥。ざっくり豪快に焼かれる1本100円の焼き鳥も大好きですが、こういうのもいいよなぁ。
最後に鳥のスープが出てきました。濃っ。うまっ。
ふぅ、お腹いっぱい。見事に鳥しか食ってないw けど、鳥食った~!という気分に浸れて大満足。
一人でゆったりと職人技を堪能するもよし。デートで行くもよし。洗練された極上の焼き鳥をぜひ一度。