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福州手拉線面は日本の手延べそうめんの先祖。超極細な麺をすすると気持ちがいい。スープと一緒に食べると現地感たっぷりで最高においしいです。

手延べそうめんの先祖

fuzhou-flour-vermicelliの画像

今回ご紹介するのは中国・福州合利食品有限公司の福州手拉線面。

わかりやすく書くと中国版そうめんなのですが、正確に記すならまったくの逆で、これこそが元祖(※)。日本の手延べそうめんは中国の麺を倣っています(詳細後述)。

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中国の調味料や食品がたくさんある吉津屋青果 武蔵小山駅前2号店で購入しました。387円/454g。一応、一般的なそうめんの量・300gに換算すると256円です。

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福州市は中華人民共和国福建省の省都。台湾の西あたりに位置します。「手拉」は手で引くという意味。「線面(线面)」は麺。日本風に言えば福州手延べ麺といった感じでしょうか。

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裏面には「名称:そうめん 福州手延べ線麺」とあるので、そうめんとしてレビューしてみることにしました。

※この福州手拉線面が日本に伝わって……ということではありません

中国から伝わった手延べそうめん

諸説あり、正確なことはわかりません。以下は筆者の推察も混ざったざっくりとした説明です。

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奈良時代以降(遣唐使以降)、瀬戸内を通った中国からの船が当時の都、奈良・京都などへ向かい、中国の最先端の知識・技術等が日本にもたらされました。そのひとつが手延べ製法です。奈良県の三輪がそうめん発祥地と言われているのですが、それはまさに古くから三輪に手延べ麺(の原型)や手延べ製法が伝えられ、手延べそうめんが作られてきたからです。

もちろん、中国からの船がすべからく一直線に奈良や京都へ向かったわけでもありません。途中、玄関口である五島列島や九州(長崎)にも寄り、手延べ製法が伝えられたとも言われています。

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画像参照元/石毛直道『麺の文化史』(講談社)

正直、手延べそうめんの歴史はよくわからないことも多いです。ただ、確実にひとつ言えることは、手延べ製法は中国から伝わり、これが日本全国(特に西日本方面)へ伝播していったということです。

こちらは福州での线面=線麺≒そうめん作りの光景です(※)。細かな差はあれど、製法も道具も日本とほぼ同じ。機械を一切使っていませんから、特に南関素麺を彷彿とさせます。異なる国が異なる道を歩んできたというのに、ここまで同じとは……驚きと感動を禁じえません。

※福州で线面が作られるようになったのは10~12世紀ごろと言われています

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なお、両者に差があるとするなら、日本の手延べそうめんは食用植物油を使うことがほとんどなのですが、福州手拉線面は油を使っていません(※)。また、福州の面はおそらくそれほど強くはより(ねじれ)をかけていません。

※中国・福州の麺は油を使わないということではなく、この福州手拉線面が油を使っていないということです(油を使わない手延べ麺は中国では珍しくはない)

超極細な麺線

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開封。8束入っています。

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少々のバラつきはあるでしょうけど、1束は約55g(一般的なそうめんは1束50g)。

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長い麺が折りたたむように曲げられ、赤い糸でまとめられています。

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とてつもなく細いです。この画像は左から、一般的なそうめん、細くて有名な白龍(三輪山本)、福州手拉線面(短く折れ湾曲している麺)。福州手拉線面は白龍よりも細いです。

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茹で時間は30秒となっていますが、沸騰したお湯に入れ、箸でハラリとほぐせたらもういいでしょう。つまり、15秒~30秒で十分です。

なお、裏面に記されている通り、本来は茹でて温かいスープに入れて食べるものです。以下、日本のそうめんマニアが無茶なことをしているという点は、あらかじめお知り置きください。

中国の細い線麺は煮ると最高

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最初はそのまま。日本のそうめんと同じようにして食べてみます。中国ではこんなことしません。いや、日本においても、これほど細いそうめんはこうして食べてはいけません。

極細そうめんは表面積が狭く、まとう水分が少ないためか、一瞬で乾燥します。ですから、こうして盛り付けるとごわつきます。そのままではツルツルっとすすれません。そうめんマニアとして、まずはそのままの状態で食べてみたかったので、あえてこうしています。マネしないでくださいw

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コシは穏やかです。柔らかめ。これは小麦の品質や、より(ねじり)をさほど加えず製麺しているからでしょうか。そもそもコシを重要視していないということもあると思います。

ただ、細い麺を複数本すすると、舌にトゥルトゥルっと麺が細かく触れて、これがとても気持ちいい。また、"手延べ"ですから、コシが弱いとはいえ、麺自体はしっかりとしています。もちろん、日本の機械麺そうめんのようなムニュっとした気持ちの悪さはありません。

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次に麺つゆに浸してみました。日本の極細そうめんはこうして食べるのが正解でしょう。繰り返しになりますが、中国ではこうはしないと思います(温かいスープに浸すのが一般的)。

ツルツルっとすすりやすく食べやすくなりました。風味は穏やか。コシも穏やかなのですが、やはり舌触り・のど越しがいい。優しさを感じる麺です。

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次は炒めました。絡めたソースの材料はオイスターソース・醤油・砂糖・鶏ガラスープの素・紹興酒。ごわついているのですが(極細そうめんを炒めるとごわつきがち)、これ結構好きです。ビーフンのような感じと言ったらいいでしょうか。

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最後は麻辣面線と言いますか、重慶小面風と言いますか。現地でこの麺を麻辣にすることは少ないと思いますが。

最高です。最高にうまい。ベースにしたタレ(吉津屋で買った周君記 麻辣香鍋 調料)がおいしいということもあるのですが、温かいスープで煮ると(5分~10分ほど煮た)、ちょうどいい柔らかさになって、これがとてもいい。本領発揮。

なお、炒めまでは半分に、最後のにゅうめんは4等分くらいに割っています。そのままでは長すぎて食べづらいです(日本人にとっては)。

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とても優しい麺です。気持ちのいい麺でもありました。いろいろな料理(特に中国料理)に使ってみたいとも思わせます。

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めちゃくちゃとわかりつつ、日本のそうめんという基準に当てはめて見た場合は星3となります。ただ、家で中国の火鍋(※)をよくするという方には積極的にお勧めしたい。日本のラーメンの麺は絶対にダメ。できればこうした現地の麺(なければ冷麦やそうめん)を使ってみてください。本場感が出ていいですよ。

※火鍋は辛い鍋という意味ではありません。どんな味であろうと、中国の鍋料理=火鍋です

DATA
名称福州手拉線面
原材料名小麦粉、食塩、でん粉
製造者福州合利食品有限公司
メモ【検索用】福州手拉线面
評価★★★☆☆