syncの歴史
学大生まれの人気カレー店・sync(シンク)が学芸大学に戻ってきました!
2018年11月20日、学大横丁を抜けた先の一軒屋に"間借りカレー"としてsyncが復活。学芸大学駅から徒歩3分ほどなんですが、場所がちょっとわかりづらいので、sync 学芸大学店への行き方はのちほど詳しくご紹介します。まずはsyncの遍歴から。
2004年05月??日 sync開店
2011年05月04日 スターベーグルズ開店(中央町)
2013年12月??日 スターベーグルズ閉店
2014年01月15日 sync閉店
2014年02月08日 sync 恵比寿店開店
2014年07月??日 sync 学芸大学店開店(スターベーグルズ跡)
2016年02月26日 sync 学芸大学店閉店
2018年11月20日 sync 学芸大学店開店
2020年07月22日 sync curry sapporo開店
2021年12月00日 sync 恵比寿店閉店
そもそもは都立大学で創業したそうです(これが2004年5月?)。時期は不明ですが、おそらくすぐに学芸大学に移転してきました。レインカラーの場所です。学芸大学に移転してから人気となったので、"学大生まれのカレー"と言って差し支えないでしょう。実際、同店もそう言っています。これが第一期。
2014年、この建物が建て直されるに伴い、恵比寿へ移転(恵比寿神社近く)。また、先だって閉店していた姉妹店・スターベーグルズの跡地に学芸大学店もオープンさせます。中央中通り方面で、現在はHONEY MOON VILLAGEというケーキ屋になっている場所です。これが第二期。
第二期のsync学芸大学店は2016年に閉店。そして2018年11月20日、再び学芸大学へと戻ってきたという流れです。ですから、現在のsync 学芸大学店は第三期syncとも言えるでしょう。なお、戻って来たsync 学芸大学店は「森カレーsync」とも自称しています。「森」は店主(創業者)の名前です(後述)。
先述の通り、sync 学芸大学店はいわゆる間借りカレーです。基本的にはC/NE(シーネ)というスペースで、平日の昼のみsync 学芸大学店がカレーを出しています(※夜営業も始まりました)。このあたりのこともまた後ほど。
スパイスとうまみの絶妙なバランス
直近はパクチーバーラムチョッパーというお店でした。一軒屋物件で、靴を脱いで上がります。ウッディな広々とした空間。ゆったりとしていて、おしゃれでとても気持ちいい。
sync 学芸大学店の営業はカウンター席がメインです。
この日はオープン日=復活日w メニューはこんな感じでした。Lはカレーの量が約2倍になるそう。ご飯のデフォルトは250gということなので、チキンカレーになすをトッピング、ご飯を100g増量しました。料金は先払い。
ちなみに、「spice you up」はsyncのキャッチコピー。spiceは動詞で~にスパイス/香辛料を加える、~に趣を添えるという意味。ですから、spice you upはあなたにスパイスを加える、趣を添える。意訳すれば、syncのカレーであなたを元気に!といったニュアンスでしょうか。
ひとつずつ小さな鍋で作っていくタイプ。それなりに時間がかかるので、ゆっくり店内を観察します。おっ、ジンがずらり。いいなぁ。ジン大好き。いつか夜も来てみたいね。
カウンター端には、大変申し訳ないのですが、このおしゃれスペースにらしからぬお父さん方の集団w
「このカレーは面白いねぇ」
「戦後のカレーはよぉ」
はははw この空間とお父さん方のミスマッチが逆にとてもいい。なんかかわいいw しっかし、こんな場所になぜやって来たんだろう。しかもオープン日に。と思ったら、どうやら近所の方々で、syncがご招待していたそうです。
「いくら?」
「ご挨拶ということで、お代は結構です」
「そういうわけにはいかねぇよ。じゃあ気持ちだけ。○○円ね」
「ありがとうございます」
お父さん、ここはね、恵比寿でも学大でも大人気のカレー屋なんだぜ。戦後のカレーとはまったく違うけど、これはこれでいいでしょ?w
「お待たせしました」
カレーがやって来ました。
シンプル。余計なものがすべて取り払われ、カレーの本質だけがむき出しになっているかのよう。
ちなみに、一度、恵比寿で食べたことがあるのですが、味の記憶は曖昧です。ただ、おいしかったことは覚えています。
まずはカレーだけをひと口。もうひと口。ほぉ。これはこれは。以前の記憶がほとんど残ってないので、私の中ではゼロから始まるsyncカレー。
すりおろした玉ねぎとスープがメインです。辛くはありません。スパイスが優しく溶け込んでいるといった感じ。クローブが印象的ですが、それがきついというわけでもない。かすかな酸味は何由来だろう。トマト? カレーを普通にすくって口にすると、全体的に穏やかです。
次にうわずみのスープだけを飲んでみます。おおう。コクと甘味が前面に出てきます。なるほど。
スパイスを馴染ませるためには、相応の濃さが必要で、普通は材料で味の濃度を出します。具体的に言うと、玉ねぎやにんじんといった野菜、フルーツなどを大量に炒めてうまみ、甘さを出す。こうすることでスパイスが馴染むのです。
けど、syncのようなカレーだと、それだけではきっとうまくいきません。水分量が多いからです。じゃあどうするかというと、おそらくスープの濃度を高めるんです。スープをしっかりさせないと、いくら玉ねぎなどのうまみがあってもスパイスが尖る。逆に、ここまでスパイスが丸め込まれているということは、それだけスープが濃いということ。
スパイス感と玉ねぎやスープによるうまみのバランスがよく取れてるなぁ。パッと見はシンプルですが、手間暇がかかっていることを感じさせます。
ああ、激辛で有名なカーナ・ピーナ(祐天寺)と比較してみるとわかりやすいかもしれません。カーナ・ピーナはスパイスを前面に出しています。私に言わせれば奥行がない。スパイスが尖ってます。これはこれでいいのですが。
具は手羽元がひとつ。肉がほろり。デフォルトでは具はこれだけです。カレー自体をしっかり味わってほしいという意図でしょう。
ご覧のとおり、カレーの量は少なめです。まあ、このカレーをこの値段で出すには、この量にするしかないんでしょうね。特に男性だとちょっと足りないかなと思うかもしれません。カレーとライスを上手に配分して食べ進める自信のない方はLを頼んで下さい。私は普通サイズ&ライス多めでよかったですが。
いや、もちろんこんなにおいしいカレーならバケツで行きたいくらいですけどねw
syncの意味/濃厚な大山鶏のスープ
お父さん方が帰り、客は私一人となりました。ラッキー。気兼ねなく話せる。
「いわゆる間借りカレーというやつですか?」
「そうですね。間借りカレーです(笑)」
最近多い間借りカレー。夜はバーなどを営業していて、空いている昼を他の人間に貸す。この際、カレー店が入ることが多いんです。店舗での調理や配膳が楽というのがその理由でしょう。以前の印度料理 翠(現すぱいす暮らし)も間借りカレー的でした。
「今後、自前の店舗を構える布石とか?」
「いえ、基本的にはここでやって行きたいと思ってます。学芸大学の家賃が高くなってしまって」
「恵比寿店はうかがったことあるんです」
「そうですか、ありがとうございます。学芸大学は立ち退きがあったりで離れることになって。中央町でもやったんですが、実家の家業のことがいろいろありまして……」
「学大の店舗はうかがってなかったんですよねぇ」
「学大にお住まいですか?」
「ええ」
「どれくらいですか?」
「5年になります」
「ああ、だったらもう学大にも慣れてますよね」
「そうですね(笑)」
学大に慣れた、か。10年以上住んだ恵比寿/中目黒/代官山に思い入れはもう一切ない。恵比寿の方がまだ長いけど、深さが違う。恵比寿にもいい店はいっぱいあったけど、最後の方は辟易してたな。
とはいえ、学大でまだ5年。学大に生まれ育って60年、70年という先輩方と飲んでると、いつまで経っても新参者って感じがするんだけど、でも、ここを故郷と呼びたい、それくらい好きになりました。慣れたというよりもハマったと言ったほうが正確かw
それはいいとして。
うーん。ちょっと想像が違ってました。これは私の偏見ですが、カレー屋の店主は個性が強烈というイメージなのですが、syncの店主・森さんはまったく違います。めっちゃいい人。人がいい。なんだろ。朗らかで明るく、よくしゃべる。すっごく親しみやすい方です。いや、じっくり話したらまた違うかもですがw
「syncはどういう意味なんですか?」
「シンクロニシティ(synchronicity)の略で」
すみません、シンクロニシティとおっしゃったと記憶してます。けど、帰って調べてみたところ、以前の公式サイトにはシンクロナイゼイション(synchronization)と書かれていました。単なる言い間違いか、聞き間違いか、記憶違いか、意味が変わったか、あるいは店主が熱烈な乃木坂46のファンで、思わず口をついて「シンクロニシティ」と出てしまったかwww
なお、シンクロナイゼイションは同調・協調といった意味。シンクロニシティはユングが提唱した概念で、意味のある偶然の一致、共時性、同時性、同時発生といった意味です。
引き続き森さんの話を聞きましょう。
「このカレーはスープカレーでもインドカレーでもなく、いろいろなものが混ざり合ったカレーで、そういう意味を込めてsyncとつけました」
だとしたら、やっぱシンクロナイゼイションっぽいねw ま、どっちでもいいやw なお、森さんは北海道出身。小さい頃に食べたインド料理の名店・ミルチのチキンパニールが忘れらず、カレー屋を始めたのだとか。
「それにしても、このカレーおいしいですね。玉ねぎはすってるんですか?」
「はい。玉ねぎ、にんにく、しょうがをいっぱい使ってます。胃にもたれないカレーを目指してます」
「スープがとてもいいですね」
「大山鶏を使ってます。ちょっと飲んでみますか?」
「えー、いいんですか?」
「どうぞ」
うわっ。やっぱり。すごっ
鶏のうまみ、甘味ががっつり出ている清湯。脂もまったり。これだけの濃さを出すには相当量の鶏が必要だろうな。そして、これがあのカレーになるんだよなぁ。面白い。
「すごいですね。これにご飯を入れて雑炊にしたいです(笑)」
「以前は食べ終わったカレーの器にこのスープを注ぐということもやっていたんですが、それをやるとスープがすぐなくなっちゃって(笑)」
「このスープにもしょうがが入ってますね。あと塩も」
「はい。あとで混ぜ合わせるんですが、鶏のスープ自体にも味をつけてます」
鶏スープと玉ねぎやスパイスを合わせたカレーベースがあって、これらを混ぜ合わせるのでしょう。なぜ鶏スープにもしょうがや塩を入れているかというと、こうしてスープだけを別で使うことがあるからということもあるのでしょうけど、おそらくその方がカレーベースと馴染みがよくなるから。あくまでも想像ですが。
「今後は違うカレーも出そうと思ってます。もし可能なら、月に一度くらい、夜もやろうかと」
料理は人柄が出ると言います。syncのカレーがまさにそう。森さんそのものだ。ひたすらに優しい。角がない。けど、奥深くて濃厚。そして、あえてこう言いたい。いいカレーじゃない。いい料理だ、と。
todo、C/NE、syncの関係~間借りカレーの経緯
ところで、気になるのがこの物件です。基本的にはtodoという集団のオフィスのようなものだと思います。その日もメンバーの一人がいらっしゃいました。
todoは店舗/住宅/オフィス/展示場の設計施工を軸に、グラフィックデザインからコンテンツ企画まで、空間がいざなう価値ある体験を創作していく集団です。
で、この空間はC/NE(シーネ)という"まちの名画座"と銘打たれたカフェバーでもあります(執筆時はプレオープン中)。アートの展示会をしたり、今後は映画の上映があったりもするのかな? この日も絵(正確にはシルクスクリーン)がいっぱい展示されていました。
それはいいとして、なぜゆえsyncはここに?
「そこにいらっしゃる上田さん(todoのメンバー)と共通の知人がいまして、この雰囲気はsyncのカレーに絶対合うと。それで紹介してもらったんです」
「いや、ほんとそうですね。この感じ、このカレーにぴったりです」
ここで上田さんが壁際のパソコン前からやって来ました。
「こういう風に展示会なんかやってまして」
「夜はバーなんですか?」
「展示会に合わせて週末にバーを開くこともあります」
「これシルクスクリーンなんです。こちらでは体験して頂くこともできます」
シルクスクリーンとポエムのようなものが合わさったアート。アーティスト・舞木和哉さんの作品だそうです。ゆっくりひとつずつ眺めて回りました。背後では森さんと上田さんが話をしてます。
「お客さんゼロだったらどうしようと思ったんですが」
「結構、来てくれましたね」
「告知がこんなに遅くなってしまって……」
いやあ、どれだけの人がsyncの"復活"を喜んでいることか。客が来ないはずがないw 学大を愛する者としては、学大に戻ることを決意してくれただけでも嬉しいな。
「ありがとうございました。ごちそうさまです」
「ありがとうございました」
気のせいか、少し体がポカポカします。カレーも人も空間も温かかったから。
「ああ、syncね。もともとは学大にあったんだよ。今は恵比寿だけど」
学大住人のみなさん、もうこんなほぞを噛むような思いはしなくていいんですよ。胸を張ってまた「学大のsync」と言えますw
営業は平日昼がメインなので、なかなか行けないという方も多いかもしれません。なんとか機会を見つけてぜひ。特にまだ一度もsyncに行ったことがない方。とりあえず、がんばって行ってみて下さいw 学大が生んだ名店、"学大のカレー"なんですから。
sync 学芸大学店への行き方
学芸大学駅の改札を背に左手・西口を出て、線路に沿って右手・五本木/祐天寺方面へ。ファミリーマートの先の信号を渡ると高架下に学大横丁が続きます。
この道を真っすぐ行き、学大横丁が終わる地点、高架と都道420号線が交わる交差点で右を向くと。
こんな風景。画面中央、青いカゴを乗せた自転車が路地を入ろうとしてますよね。ここを目指します。
焼き鳥屋・トリケンの脇道を入ると……
はい、到着~。もう少し早く着くルートもあるのですが、学大に慣れてないなら、この道順が一番わかりやすいと思います。