とんかつ屋・御代鶴(みよづる)へ行った際、らーめん山田のご主人を思い出した、という記事を書いたのが8月20日。あの時に感じた胸騒ぎはもしかしたら、これだったのか……。
らーめん山田のご主人がお亡くなりになりました。
正確にはわかりませんが、お亡くなりになったのは9月中旬ごろでしょうか。9月28日には店頭に「閉店のお知らせ」が貼り出され、10/9~10/11に焼香の場が設けられたそうです。タイミングが合わず焼香には行けませんでしたが、昨日、お店へ行き手を合わせてきました。
らーめん山田のダシのきいた味噌スープは、日によって、季節によって若干、味わいが変わります。あえてそうしていたそうです。西山製麺の麺はブルッブル。口内で弾け飛びます。甘いチャーシューは肉の存在感を多いに主張します。シャクっとしたもやしは麺と最高のハーモニーを奏でます。
らーめん山田のチャーハンも激やばでした。ただでさえ多いのに、いつも大盛りをお願いしていました。時々、大盛りにするにはご飯がちょっと足りないから、大盛り分のお代はいいですよなんてこともあったなぁ。
らーめん山田から徒歩2分ほどのところに約10年住んでいました。住み始めた当初、左腕を骨折しました。食事を摂るのもままなりません。そんな時、初めてらーめん山田に行ったのです。
普通はカウンター越しにラーメンを渡してくれるのですが、骨折している姿を見て、お姉さんがわざわざラーメンを運んで来てくれました。以来、らーめん山田に通うことになるのですが、普段もしょっちゅう道で顔を合わせていたので、ご挨拶させて頂くほどの関係になっていました。
らーめん山田で味噌ラーメンを食べ終えると、レジへお金を渡しに行きます。会計が済んだら、まずは女性陣すべての顔を見て、軽く会釈し「ごちそうさまでした」と言います。そして、扉の手前、カウンターの端まで来たところで、ご主人の顔を見て、会釈しながら「ごちそうさまでした」と言います。ご主人は必ず振り返り「どうもっ」「ありっした」とおっしゃいます。これがらーめん山田でのルーティン。
昨日は手を合わせながら「ごちそうさまでした」と心の中でつぶやきました。そして、いつもなら目の前の信号を渡って帰っていたのですが、恵比寿駅方面へと歩き出します。奇しくも昨日(&今日)は恵比寿神社のべったら市でした。来月はお酉様、か。
そういえば一度、「取材を受けたりしないんですか?」なんてバカなことを聞いたこともありました。「いえ、そういうわけではないんですけど、忙しいので」とお姉さん。取材拒否ということをやんわりと告げるあたりにも、お店の優しさがにじみ出ています。
営業時間は11:30~14:00の2時間半。商売を拡大させるわけでもなく、宣伝するわけでもなく、淡々と中華鍋を振ってらっしゃいました。
商売繁盛なんてみじんも考えてらっしゃらなかっただろうなぁ。淡々と。淡々と。ただただ、おいしいラーメンを作りたい、おいしく食べてもらいたい、その一心で。
少なく見積もって、2週間に1度はらーめん山田で食べていました。それが約10年間。200杯以上は食べていると思います。人生でもっとも多く食べたのがらーめん山田の味噌ラーメンです。世界でもっとも好きなラーメンはらーめん山田の味噌ラーメンです。チャーハンもしかり。そして、これはこの先もずっと変わらないでしょう。
ありがとうございました。ごちそうさまでした。
あまりにも日常すぎて、あまりにも食べすぎていて、あまりにも普通のことだったので、最近はラーメンの写真を撮っていませんでした。古い、動かなくなった携帯には写真が入っているだろうなぁ。でも、まあいいや。あの味はしっかりと記憶に、舌に刻みこまれていて、忘れようがないから。
SHOP DATA
- らーめん山田
- 東京都渋谷区恵比寿西1-32-12
- 03-3464-1105
- 公式