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平和軒(西小山)のラーメンは完璧なバランスで、理想的な街中華ラーメン。日本ラーメンの元祖を彷彿とさせる味わいでした。

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西小山駅から徒歩3分。にこま通り商店街沿いにある街場の中華料理店・平和軒。ラーメン評論家・大崎裕史さんのブログによれば、2000年ごろに武蔵小山で創業しました。2017年3月ごろ、再開発に伴い一時閉店、その3ヶ月後には西小山で営業が再開されました。

平和軒は大崎、西五反田、西小山、川崎大師、学大/祐天寺にあり、すべてが親戚筋です。西小山の店主は大もと(上大崎。現存せず)の創業者兄弟の弟(=西五反田の創業者)の息子(=西五反田の二代目)の弟にあたります。詳細は学大/祐天寺の平和軒の記事をどうぞ。

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カウンター10席。移転してまだ浅いですからとてもきれい。

大将は職人風情。けど、そこはかとない優しさを感じさせます。女将さんは大宅映子風インテリ美人。女性客の多さが印象的です。たまたまなんでしょうけど。

それにしても先客たちに出している定食のライスがすごいな。丼だ。女の子二人、あれ食べ切れるのか?w

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餃子がおいしいと聞いていたのですが、初訪の今回は炒飯・半ラーメンセット(ランチタイムサービス900円)をお願いしました。

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店主がチャーハン用のチャーシューを切り始めました。すると女性が来店、チャーハンを注文します。さらに続けて、飲みつつつまんでいた奥の方も炒飯・半ラーメンセットを注文。都合、チャーハンが3人分となりました。

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これは面白い。どうするんだろう。3つまとめてできるのか? あ、卵を3つ割ったぞ。一気にやるんだ。

まずは卵をしっかりと炒めます。普通は半熟状態でご飯を入れるはず。いつもこうなのか、3人前同時だから混ぜやすいようにあえてそうしているのか。

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鍋肌に叩きつけるようにしてご飯を炒(チャー)。コショウを振ったあと、豪快に2種の白い粉末を投入。チャーハンはスマホのシャタースピードを上回る速度で中華鍋を滑り踊ります。

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炒飯はどちらかというとしっとり。街中華にしては優し目なのですが、シンプルなおいしさです。いいねぇ。

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次に半ラーメンのスープをひと口。

あっ……。

多くの老舗街中華は醤油の角が立ちすぎているか、"魔法"で甘くしすぎる(うまみを出しすぎる)。あるいは、ちょいと今風を意識して、醤油の角を全部取り、まろやかなおしゃれラーメンにしがち。一方、平和軒のスープはまろやかで甘味がありつつも、醤油の角をほんのわずかに残しています。

これだけなら、もしかしたら昔ながらの懐かしい街中華ラーメンで終わっていたかもしれません。けど、ここで終わらないのが平和軒。最大のポイントは鶏油(チーユ)か何かの油。一般的な街中華ラーメンにしては油が少し多めで、スープの表面をしっかりと覆っています。この油がスープにコクを与え、そして最後までスープの熱を逃しません。

麺はプリッとコシのある縮れ麺。プルルンと口内で弾けます。細切りにされたメンマもいい、スープを吸ってしっとりとなったチャーシューもいい。

あっという間に半ラーメンはなくなりました。いつもの通り、飲み干した器を見ます。"魔法"は最小限でした。ということは、清湯自体が深いんだ。

やばい。清湯、醤油のかえし、油のバランスが完璧。乏しい経験しかありませんが、これまで食べてきた街中華のラーメンで一番おいしかったかもしれません。理想的な街中華ラーメン。

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皿をすべて重ねてカウンター上へ。コップが作った水滴を活用しつつ、ティッシュでカウンターを拭きます。

「ありがとうございます」

「おいしかったです。お勘定をお願いします」

「お水のおかわりは?」

「いえ、大丈夫です。ごちそうさまでした」

お二人の顔を見て挨拶をし、扉を開けます。その手が感動に震えているのを悟られないよう、努めて冷静に、ゆっくりと。

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店を出て思い返します。学大/祐天寺の平和軒はまろやか系でした。学大なら二葉に似たタイプです。じゃあ西小山の平和軒はどこに似てるだろう……。ひとつ思い当たるラーメンがありました。街中華ではありませんが、泰雅です。日本ラーメンの元祖とも言える泰雅のラーメンを彷彿とさせます。

そう簡単に「ああ、昔ながらの懐かし系ね」とは言わせないこのバランス、この深さ。すごい。ぜひ一度。

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